神楽坂・カルボナーラ専門店「ハセガワ」につい通ってしまう!”やみつきのおいしさ”の秘密

”カルボナーラ専門店”という異彩を放つ、神楽坂「Hasegawa」。カルボナーラが好き過ぎるオーナーが吉祥寺でスタートし、2020年に神楽坂へ移転。そのやみつきのおいしさに魅了された根強いリピーターは多数!通いたくなる「王道ベーコンのカルボナーラ」にフォーカスします。

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「王道ベーコンのカルボナーラ」

カルボナーラ専門店 Hasegawa(ハセガワ)(東京・神楽坂)

「このメニューを食べるなら、この店で」と、誰しもが推しの店をいくつか持っているものですが、「カルボナーラならここ!」と、遠方からでも何度も来店する熱烈なリピーターが絶えない、超人気の専門店があるといいます。

今回は、"生きがいはおいしいランチとスイーツ"というフードライター 小田中 雅子さんが、グルメな街、神楽坂にある「カルボナーラ専門店 Hasegawa」の「王道ベーコンのカルボナーラ」を紹介。「パスタ」ではなく「カルボナーラ」で勝負し大ヒットさせた、メニュー開発の裏側に迫ります。

小田中 雅子
フードライター。新聞社系メディアのグルメ記事でライターとしてのキャリアをスタート。以後、ぐるなび媒体「dressing」など主に飲食関連のWebサイトで記事を書いている。ランチやスイーツ、パンなどのグルメ情報が得意。特にランチはその日の幸福度を決めると信じ、店選びに1時間以上かけるほど、おいしいランチ探しに余念がない。

グルメな街、神楽坂でもひときわ目立つ異色の存在
何度も食べたくなる王道カルボナーラ
ファン多数! アイデア豊富な創作カルボナーラ
カルボナーラが好き過ぎるシェフから生まれた、究極のレシピ
夢中になることが成功の秘けつ

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グルメな街、神楽坂でもひときわ目立つ異色の存在

神楽坂でその看板を最初に目にしたのは4年前。書かれているのは「カルボナーラ専門店」という文字。それが「Hasegawa」(以降、「ハセガワ」)との出合いです。

入り口・階段上にある「HASEGAWA」の看板。Hの横棒は、卵

さまざまなジャンルのグルメ店がそろう神楽坂ですが、カルボナーラの専門店とは珍しく、さっそく訪問。食べてみると、他にはないおいしさがあるカルボナーラに驚かされました。

あれから4年。当時はランチのみの営業が、現在は夜も営業し、各種メディアにも紹介されるなど、認知度もさらに拡大。その成功の秘けつと変わらず人気のカルボナーラの魅力を知りたいと、再び訪れてみました。

  • 階段口には、ランチメニューの看板(2024年9月取材時)
  • 地下1階の店舗へと降りる階段

店があるのは神楽坂通りから見番横丁に入ってすぐの場所。かつて「見番」という、芸者衆の手配などを行う場所があったことで名付けられた神楽坂らしい風情がある通りです。「ハセガワ」はビルの地下1階にあり、隠れ家に通じるような造りの階段を降りていきます。

  • 入って右手にはベンチタイプのカウンター席、左に4人掛けのテーブル席がある
  • 左手奥の、天井がガラス張りのテーブル席。昼時は地下でも明るく開放感のある造り

階段を下りていくと、地下なのに自然光が入るガラス張りのテーブル席があり、明るい雰囲気。アンティークの家具は使い込まれた味わいがあり、ヨーロッパにあるカジュアルなビストロを訪れたような気分になります。

ディナーメニュー。数種から選択する「HASEGAWAオススメ選べるコース」がお得。アルコールとともにアラカルトで楽しむ人もいる

ちょっぴり非日常感のある空間でいただけるのが、「ハセガワ」オリジナルレシピのカルボナーラ。卵、ベーコン、チーズの定番から山椒やワサビを使った変わり種まで多彩なカルボナーラがそろいます。中でも、何度食べても飽きないと筆者が一押しする定番「王道ベーコンのカルボナーラ」をご紹介しましょう。

何度も食べたくなる王道カルボナーラ

「王道ベーコンのカルボナーラ」。ランチ(1,330円)とディナー(1,680円)で価格設定を変えている。ランチには自家製ドレッシングのサラダが付き、このドレッシングがオープン時より好評。野菜のすりおろしとしょうゆをプラスし、卵とアンチョビを使っており、甘さと酸味を控えたお酒とも合う

多種あるカルボナーラの中でも5割の人が頼むというのが「王道ベーコンのカルボナーラ」。実はカルボナーラはあまり得意ではない筆者。最初の一口、二口はおいしくても最後になると持て余してしまうことがたびたび。けれど「ハセガワ」のカルボナーラは、いつも最後までおいしく完食してしまいます。

カルボナーラはローマ発祥のパスタ料理。本場では卵、パンチェッタ(豚バラ肉を塩漬けした加工品)もしくはグァンチャーレ(豚ホホ肉を塩漬けした加工品)、チーズ、黒コショウというシンプルな構成で作られます。日本では入手が難しいパンチェッタやグァンチャーレの代わりにベーコンが使われ、生クリームを加えたレシピが一般的です。

「ハセガワ」では生クリームを使いません。そのため「ローマ風」と紹介されることがありますが、独自の工夫があり、「ハセガワ流」としか言えないパスタなのです。

ベーコンはしっかりと肉のうま味が感じられるものを使用。フライパンを傾けオイルを寄せて、中弱火でベーコンを焼く

ベーコンは肉々しい味わいを失わないように厚切りにカットしたものを使用。卵はたっぷり2個を使います。チーズにはパルミジャーノ・レッジャーノよりまろやかな味わいのグラナパダーノを使用。ソースに忍ばせているのは少量のニンニクと昆布とカツオの和だし。ほんのり分かる程度ですが、うま味の奥深さを支えています。

香りを大切にしている黒コショウは、供される直前に、まるで黒い点が皿の模様に見えるぐらいミルで挽きながらたっぷりとふりかけます。

卵液を入れてからの絶妙な火入れが重要

“重くならない”極意は卵を入れた後の絶妙な火入れにあると言います。オーナーシェフである長谷川 浩平さんにその極意を尋ねてみると「濃厚だけど、最後までおいしく食べられるように濃度にこだわりました。卵やチーズが入っているので、火を入れ過ぎてしまうと濃厚でベタベタした感じになります。逆に、少ないとシャバシャバなソースに仕上がる。この火入れが難しく、スタッフへの指導でも一番こだわっているところです」とのこと。重たくならないように絶妙な濃度に仕上げるところに、「ハセガワ」流カルボナーラの魅力の秘密があるようです。

食べ心地が軽く、終盤になってもくどさを感じさせない。実際、ほとんどの人がペロリと完食するのだそう

目の前に現われた一皿は、ふわっと立ち上がる黒コショウの刺激的な香りと、こんがりとしたベーコンの香ばしい匂いが食欲をそそります。たまらずフォークでパスタをすくってパクリ。

トロトロでクリーミーなソースは卵とチーズ、ベーコンのうま味が溶け込み、コクのある味わいに満ちています。後からほんのり追いかけるだしとパンチのあるニンニク。この味の深みがやみつきにさせるのです。

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ファン多数! アイデア豊富な創作カルボナーラ

創作カルボナーラの定番はいずれもファンの支持が高いものばかり

「ハセガワ」のカルボナーラの楽しみは、オリジナルの創作カルボナーラにもあります。

創作カルボナーラは、定番で山椒、ジェノベーゼ、レモン、トマトソース、生わさび、”新”韓国風(ランチのみ)の6種類。これに1~2カ月で変わる期間限定メニューが加わります。どんな味なの?と思わず考えてしまう意外な組み合わせは、長年にわたってカルボナーラを作り続けてきた長谷川さんならではのアイデアと試作の賜物。いずれもカルボナーラにこんな魅力があったのかと新しい発見があります。

「“新”韓国風カルボナーラ」(ランチ1,380円)

最近、復活した定番が「“新”韓国風カルボナーラ」。

「以前、キムチやネギをトッピングした韓国風カルボナーラを出していたのですが、一度メニューから外したら、『あのメニューはないの?』という声を多数いただいて、復活しました」と長谷川さん。単に復活しただけでなく、ゴマ油をプラスして風味をアップグレード。ピリ辛で少し酸味のあるキムチは、コクのある卵クリームと相性抜群。フワッと香るゴマ油の香りが食欲をそそります。

「~パクチーたっぷり~エスニック風カルボナーラ」(ランチ1,680円、ディナー1,880円)。パプリカパウダーで風味と彩りを添える

訪れたときの期間限定は「~パクチーたっぷり~エスニック風カルボナーラ」。

パクチーの独特な風味は卵やベーコンと好相性。ナンプラーとレモンを隠し味に使い、さらにエスニック風味を盛り上げます。レモンのほのかな酸味がカルボナーラのコクを和らげて、さっぱりした食べ心地。同じカルボナーラなのに王道とは違うおいしさが広がり、ハセガワの創作カルボナーラにファンが多いのも頷けます。

カルボナーラが好き過ぎるシェフから生まれた、究極のレシピ

「ハセガワ流」の味を支える調理スタッフは4名。取材時勤務の3名を紹介。写真中央がオーナーの長谷川 浩平さん、福士 和冴さん(同左)、八藤 叶さん(同右)

長谷川さんは、静岡のイタリアンで修業をした後、自身の店を持とうと上京。都内のいくつかの飲食店で働いたり、出張料理を頼まれて出張料理人を始めたりするなどして料理人としてのキャリアを積みます。

カルボナーラ好きだった母親の影響もあり、自身も子どものころからカルボナーラが大好きだったという長谷川さん。店のまかないや自宅で何年も何千回もカルボナーラの試作を繰り返していました。完成した“自分が今まで食べて来た中で一番おいしい配合のカルボナーラ”を食べてほしいという思いから、吉祥寺で日曜日限定・カルボナーラランチを始めます。

「カルボナーラに特化した店をやりたいなという気持ちと、でも、現実としてやっていけるのかなというせめぎ合いがありました。そこでまずは試しにと、日曜日のみのランチを始めたんです」(長谷川)。

店内に飾る店名ロゴの看板。店名を自身の苗字にしたのも、提供する料理が「ハセガワ流」だからこそ

ハセガワ流カルボナーラを出したところ、たちまちおいしいと大評判。そしてさらなる発展のため、食の街・神楽坂に進出。当初は、昼のみの営業で「カルボナーラ専門店 ハセガワ」をスタート。オープンから1年後に夜営業も始め、昼と夜、両方で営業するようになります。

カルボナーラを愛しすぎて、ついに専門店をオープンした長谷川さん。カルボナーラの魅力はどこにあるのでしょう。

「料理人になって働き始めたら、カルボナーラにはいろんな種類があることを知りました。生クリームが入っていたり、いなかったりと店によって味が違う。それが面白いと思ったんです。しかもチーズや卵の量を少し変えるだけで味わいが違ってくる。とにかく好きだったので、自分にとってのおいしいを追究し続けて、今の形になりました」と長谷川さんは語ります。

くどさがなく、深い味わいがあるハセガワオリジナルのカルボナーラは、何度でも食べたくなる魅力があります。昼なら近隣の会社員の定番ランチに、夜は落ち着いた大人がカジュアルなイタリアンとしてワインを楽しむ店として、それぞれにリピーターを掴み、売上比率も半々とバランスの良い経営になっているそう。

夢中になることが成功の秘けつ

今でも評判の店に出かけていってはカルボナーラを注文し、この形もおいしいなあと新たな発見をすることもあるという長谷川さん。「やっぱり好きなんだと思います」というカルボナーラ愛は本物です。

カルボナーラだけの専門店を作り、成功させること。それは好きだけではなく、吉祥寺でのチャレンジから始まり、一歩一歩進めて来た長谷川さんの慎重な歩みの上に築かれたように思えます。

1人で始めた「ハセガワ」も、料理人スタッフが2人増え、オリジナルレシピのカルボナーラの作り手も3人となりました。期間限定メニューも今は3人で考えながら決めているのだそう。現在、都内に2号店を出す計画も進行中。

「努力は夢中に勝てない」という言葉がありますが、“好き”から始まったハセガワ・カルボナーラの世界がどんな風に広がるのか。考えるとワクワクした気分になります。

「紅茶アールグレイのパンナコッタ」(580円)。アールグレイの茶葉を煮だし、香りを付けたパンナコッタ。店の一番人気で男性で頼む人も多いのだそう
「自家製濃厚バニラアイスのアフォガード」(580円)。本格的なイタリアンの店で学んできた長谷川さんが作るドルチェもおすすめ。卵をたっぷり使ったアイスクリームはどこか懐かしい味わい
ワインは卵に合う白ワインを中心にラインナップされている。白ワイン4種類と赤ワイン2種類を用意(グラス780円~)
カルボナーラ専門店 HASEGAWA(ハセガワ)
新宿区神楽坂3-6 金井ビルB1
https://r.gnavi.co.jp/dc143rfr0000/map/
東京メトロ神楽坂駅より徒歩8分、JR飯田橋駅より徒歩7分。専門店として、唯一無二のオリジナルレシピによるカルボナーラを提供。長年通うファン層も厚い。ランチは気軽にサクッと、夜はコースでお酒と一緒に楽しむスタイル。卵とチーズを使ったパスタは満足感が高く、男性のリピーターも多い。

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