繁盛の法則 3カ条
- 現地で食べたブータン料理をベースにした商品を開発
- 乾燥および粉トウガラシはブータン産を使用
- メニュー表にはわかりやすく写真と解説を掲載
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トウガラシとチーズを多用する、独特の料理を提供
東ヒマラヤ山脈に位置する内陸国ブータンは、九州とほぼ同じ面積を持ち、約80万人が暮らしている。近年は民主化、近代化が進んでいるが、国土や伝統文化を守ろうという意識も強く、秘境と呼ばれることも多い。そんなブータンの料理というと、トウガラシ(エマ)とチーズ(ダツィ)を多用した、“世界一辛い料理”と呼ばれることもある。
2021年12月1日にオープンした東京・市ヶ谷の「ラッソーラ」は、都内でも、日本国内でも数少ないブータン料理店である。店主の村上 光 氏は、計15年ほどブータン料理に携わってきた経験があり、現地も4回訪ねている。
「ブータンではトウガラシを野菜として食べるという言い方をするのですけれど、実際に現地で食べると、その意味がわかるのですよ。ブータンで食べたトウガラシは、辛いのですけれど、みずみずしさ、フレッシュ感があっておいしいなと思い、それまでのトウガラシの概念が変わったのです」と村上氏は語る。もちろん、品種の違いによるところが大きいため、村上氏は乾燥トウガラシと粉トウガラシはブータンから調達している。しかし、生のトウガラシのブータンからの輸入は難しいため、韓国産や、知り合いの農家に委託栽培してもらっているものを使用している。
その生トウガラシのチーズ煮込み「エマダツィ」(夜の単品1,250円)は、ブータンの国民食のような存在で、新鮮な生トウガラシのシャキシャキ感と、チーズのまろやかさがあいまって、辛いには辛いのだが、後を引くおいしさがあり、ブータンでも主食であるライスが進む。ほか、ジャガイモとトウガラシのチーズ煮込み「ケワダツィ」(同1,150円)、キノコとトウガラシのチーズ煮込み「シャモダツィ」(同1,150円)など、ブータンの家庭料理をそろえている。そのほか、夜はサラダ、チベット圏でポピュラーな「モモ」(餃子)、肉料理、酒肴、季節料理などを提供している。メニュー表にはそれぞれの料理の写真と、わかりやすい解説を入れているため、初めて来店しても選びやすくなっている。夜の客単価は4,500円で、1日平均20人を集客している。
ランチタイムは、周辺のビジネス街からの需要に合わせた定食類5品目を提供している。「エマダツィランチ」(1,300円)、「パクシャパランチ」(豚バラ肉とダイコンとトウガラシの煮炒め、1,300円)、「ジャシャパランチ」(鶏もも肉とキャベツの煮炒め、1,200円)などで、サラダ、スープと、お代わり無料のライスが付く。ランチの客単価は1,300円で、1日平均30人が来店している。
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日本とブータンの架け橋のような存在を目指す
村上氏は1974年2月、東京・新宿区生まれで、大学卒業後は業務用酒販店に就職し、営業担当として飲食店を回るようになった。そのうちに飲食業に興味を持ち、26歳で会社を辞め、六本木のダイニングレストランでホールサービスやバーテンダーとして働くようになった。30歳になったときに、自分で小ぢんまりしたバーをやりたいと考え、そのためには料理も勉強しなくてはと、知人のイタリア料理店の店主に相談した。すると、「30歳で料理経験のない人は雇えない」と一蹴されたが、同時に「調理師学校に行ってみたらどうか。調理師免許も取得できるし、学校から職場を紹介してもらえるかもしれない」とアドバイスしてくれた。
村上氏はその助言に従い、調理師学校に1年通って調理師免許を取得し、学校から紹介された本格的なイタリアンレストランで1年間働いた。その後、知人の紹介でフレンチレストランのバーテンダーとなったが、事情により辞めることになったタイミングで、以前から知り合いだったブータン料理店のオーナーから、「今の店長が来春辞めることになり、人材を探しているのだけれど、やらないか?」と声がかかった。当時の村上氏は、ブータンやブータン料理に関心があったわけではなかったが、時機としてちょうどよかったため、やってみることにした。
2011年1月までで前職を辞めると、翌2月にブータンを訪ねた。1週間ほどの滞在だったが、そのブータン料理店のオーナーに紹介してもらった旅行会社に希望を伝え、現地で人気のレストランを食べ歩いたり、料理に詳しい人から話を聞いたりするなど、有意義な経験ができた。
3月からそのブータン料理店で働き始めた村上氏だったが、直後の3月11日に東日本大震災が発生した。商店街の街灯も消え、料理に欠かせない牛乳やチーズの入荷が滞るなど、しばらくは混乱したが、それでも店の営業は続けていた。世の中が徐々に落ち着きを取り戻す中で、店の営業も正常化していき、その後も村上氏は2013年、2016年、2018年とブータンに足を運び、さらに理解を深めていった。
10年が経過した節目に、そろそろ独立しようと考えた村上氏は、2021年7月までで同店を辞し、開業に向けて物件探しを開始した。居抜きの店舗で、家賃や広さから検索していた中で、ふと出てきたのが市ヶ谷の現物件だった。
それまで市ヶ谷には土地勘はなかったが、見に来てみると、JRや地下鉄でのアクセスも良かったことから、居酒屋の跡地の16坪26席の現物件を契約した。元の構造はそのまま踏襲(とうしゅう)しつつも、壁や椅子はブータンの国旗にも使われている明るいオレンジ色に一新した。
またチベット仏教の経文が書かれた五色の旗「タルチョ」を天井に吊るし、独特の雰囲気の内装に仕上げた。とはいえ、まだまだコロナ禍が続いていたため、オープン後1年ほどは厳しい経営が続いた。2023年5月に、新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行し、さまざまな制約が解除された頃からようやく、リピーターも増えて軌道に乗っていった。
同店がブータン料理という、日本ではまだなじみの少ない料理を提供しながら、地道にリピーターを増やしている要因は以下のようになるだろう。
- 現地で食べたブータン料理をベースにした商品を提供している。
- 乾燥および粉トウガラシなど、調達できるものはブータン産を使用している。
- メニュー表には各商品の写真と解説を入れ、初めて来店するお客にもわかりやすいようにしている。
店ではブータン関連のイベントが行なわれることもあり、それを機に在日ブータン人も含めてのネットワークが広がりを見せている。
「この店を介して、日本とブータンの架け橋になっていけるといいですね。実際にはブータンは今、過渡期にあり、人材の海外流出など、難しい問題が出てきていることも確かです。また、ブータンは“世界一幸せな国”という言い方をされますが、これも実際に行って納得したのですけれど、幸せの価値観がそもそも違うのですよ。身近にあることに幸せを感じられる、それを大切にできる人たちなのですね。物質的な幸せよりも、心の幸せを大事にできる国でありましょう、という意味合いだと思っています」と、村上氏は料理を通じて深めてきたブータンへの思いを述べている。
(Text and shop photo by Food Biz, )
住所
東京都千代田区九段南4-2-3 九段木田ビル 2F
営業時間
11:30~14:30(LO.14:00)、17:30~22:00(LO.21:00)
定休日
日曜日(ほか、月に2~3回不定休あり)
https://r.gnavi.co.jp/nam2wv5n0000/map/
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