「佳照庵定食 竹」(選べる味噌汁+おばんざい+おかず)
昨今のおにぎりブームを見ていると、日本人のお米好きが改めて見直されていることを実感します。そんなご飯に欠かせない名脇役といえば、やはり味噌汁でしょう。具材の組み合わせによって栄養バランスは大きく変わり、味噌の種類を替えれば味わいも実に多彩。毎日食べても飽きることのない、日本の知恵が詰まった一椀です。
今回は、"生きがいはおいしいランチとスイーツ"をモットーに全国を食べ歩くフードライター・小田中 雅子さんが、専門店ならではのこだわりが詰まった味噌汁と手作りのおばんざいを選んで楽しめる「佳照庵定食 竹」を紹介します。
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佳照庵(かしょうあん)
拘りの味噌汁と羽釜ごはん 佳照庵 (東京・秋葉原)
業態:和食店・味噌汁専門店
席数:20席(テーブル14席、カウンター6席)
客層:平日はビジネス利用、20~70代と幅広い、20代が増加傾向、男女比3:7
客単価:昼2,000円、夜4,000円
アクセス:JR、東京メトロ秋葉原駅より徒歩10分
営業時間:11:30~14:30、17:00~22:00
定休日:日曜日、祝日(不定休あり)
https://r.gnavi.co.jp/skfr25xs0000/
https://www.chisakosyokudou.jp/kashoan/
目次
・職人の街で愛される味噌汁専門店
・選ぶ楽しさも味わえる、具だくさん味噌汁が主役の定食
・味噌汁、羽釜ご飯とともに味わうメニュー
・一椀から伝える、現代に必要な日本の食卓
職人の街で愛される味噌汁専門店
御徒町から秋葉原、浅草橋へと続く一帯は、昔ながらの職人文化が息づく街。大通りを一本入れば、知る人ぞ知る名店に出合えるグルメエリアでもあります。その一角で地元の人たちに親しまれているのが、「拘りの味噌汁と羽釜ごはん 佳照庵」(以下「佳照庵」)です。2024年3月のオープン以来、大々的な宣伝をすることなく口コミで評判が広がり、昼夜を問わず多くの人が訪れています。
店があるのは蔵前橋通りから一本入った路地沿い。有名な「おかず横丁」にもほど近く、周囲には老舗の寿司店や人気のランチスポットが点在する食の激戦区です。白いのれんが揺れる店先は、木枠のガラス戸と大きな窓が印象的。外からはスタッフが手際よく働く様子が見え、温かな雰囲気に思わず足を止めたくなります。
店をプロデュースしたのは、料亭「菊乃井」の常務取締役であり、管理栄養士・食生活アドバイザーとしても活動する堀 知佐子さん。健康的でおいしい食事をテーマに数々のレストランを手掛けてきた経験を生かし、「古き良き日本の食卓」をコンセプトにこの店を立ち上げました。
店内にはカウンター席とテーブル席がゆったりと配置され、ふんだんに木材が使われ、落ち着ける和の空間になっています。カウンター席もハイチェアではなく、肘掛け付きの椅子が用意され、女性一人でも家族連れでも、気兼ねなく食事を楽しめそうです。
看板メニューは、旬の食材をたっぷり使った具だくさんの味噌汁と昔ながらの羽釜で炊くご飯。昼は味噌汁と羽釜ご飯、おばんざいを組み合わせた定食を、夜はおばんざいをつまみに一杯楽しめる居酒屋として営業しています。
丁寧に引いただしに、今では貴重になった手仕込み味噌、そして旬の食材を惜しみなく使った味噌汁は、この店の主役です。一椀の中に野菜やたんぱく質などさまざまな食材が詰まり、食べ応えと栄養を兼ね備えた一杯は、忙しい現代人にこそ味わってほしいもの。そんな「佳照庵」の魅力が詰まった定食を、さっそく紹介していきます。
選ぶ楽しさも味わえる、具だくさん味噌汁が主役の定食
ランチで用意されているのは、ご飯と味噌汁に4種のおばんざいが付く「梅」(1,200円)、4種のおばんざいと選べるおかずを組み合わせた「竹」(1,600円)、8種のおばんざいを楽しめる「松」(1,900円)の3種類。いずれも味噌汁は、定番の「鮭とトマトの白味噌汁」「特製豚汁」、数量限定の「本日の味噌汁」から選ぶことができます。
一番人気は「竹」。選べるおかずには、「鯖の塩焼き」「鮭の塩焼き」「手包み焼き餃子」「鶏もも肉の唐揚げ」「豚のすき煮」「だし巻玉子」がラインナップ。おばんざいの内容も季節や仕入れによって変わるため、味噌汁やおかずとの組み合わせは実に多彩。何度訪れても新しい味に出合える楽しさがあります。
お盆にのった定食が運ばれてくると、まず目を奪われるのが味噌汁です。大ぶりの椀には汁がなみなみと注がれ、色鮮やかな具材がたっぷり。ご飯やおばんざいも気になりますが、真っ先に椀に手が伸びます。
「鮭とトマトの白味噌汁」には、鮭とトマトのほか、赤と黄のパプリカ、カボチャ、小松菜などの野菜が惜しみなく入っています。白味噌のまろやかな甘みが、トマトのほのかな酸味やカボチャ、パプリカの自然な甘みを包み込み、口に運べば思わず「ああ、おいしい」と声がこぼれるほど、しみじみとした至福の味わいです。
数量限定の「本日の味噌汁」は、その日のお楽しみ。取材日に提供されていたのは「だし巻き卵とあおさ海苔」。だし巻き卵からだしがジュワッと広がり、味噌やあおさの風味と重なって、豊かなうま味を生み出していました。ほかには、「オクラの卵とじ」や「油揚げと豆苗」など、家庭的でありながらひと工夫ある組み合わせが登場します。
主役を務める味噌汁のおいしさを支えているのが、味噌とだしです。味噌は、徳島県で明治8年から続く老舗「井上味噌醤油」のものを3種類使い分けています。国産原料を伝統的な製法で仕込み、代々受け継がれてきた木樽と土壁の蔵でじっくり発酵させた味噌は、国内外の料理人からも高く評価されています。
「佳照庵」の開業にあたり、堀さんは全国の味噌を試し、この味にたどり着いたのだそう。実際に徳島の味噌蔵まで足を運び、味見をしながら味噌汁の具材を考えたといいます。
だしに使うのは、一夜干しした煮干し。頭と腹わたを丁寧に取り除き、一晩水に漬けてゆっくりうま味を引き出します。翌日、こして仕上げただしはすっきりとして上品。素材の味を穏やかに引き立てます。だしのやさしい風味に驚くお客も多いそうです。
味噌汁、羽釜ご飯とともに味わうメニュー
定食のおかずとおばんざいも、すべて店内で手作りされています。おばんざいの用意は常時10種類ほど。だしでじっくり煮含めたり、料理に応じてリンゴ酢や米酢を使い分けたりと、一品一品に細やかな工夫が行き届いています。化学調味料に頼らず、だしと素材のうま味を生かした味付けは穏やか。それぞれは少量でも、「きちんと料理を食べた」という満足感があります。
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おばんざい4種。左上から「冬瓜の含ませ」「小松菜とじゃこのおひたし」「切り干し大根とひじき」「もずくの出汁醤油和え」 -
おばんざいはほかにも。左上から「茄子の揚げびたし」「にんじんしりしり」「大根の旨煮 田楽味噌」「小町麩とわかめと胡瓜の酢のもの」。どれも上品な味付けで食べ飽きない
定食のおかずとおばんざいも、すべて店内で手作りされています。今回選んだおかずは「鯖の塩焼き」。魚料理の人気が高く、肉より魚を選ぶ人も多いのだとか。こんがり焼かれた脂ののった鯖に、期間限定で提供されていたにごり酢を合わせると、酢の旨みが鯖のコクを引き立て、後味はさっぱり。最後まで軽やかに味わえました。
定食のもう一つの主役が、ご飯です。使うのは、山形県産の「雪若丸」。粒立ちがよく、かむほどにやさしい甘みが広がる米を、昔ながらの羽釜でふっくらと炊き上げています。
ご飯はお代わり自由。中には4~5杯お代わりする人や、おかずを食べ終えた後、ご飯だけをもう一杯楽しむ人もいるというから、そのおいしさがうかがえます。
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ごはんは、昔ながらの羽釜でふっくらと炊き上げる -
「蘭王(生卵)」(200円)、「自家製麻辣油」(100円)。そのほか堀さんの母が作った「自家製梅干し」「山椒塩こんぶ」などご飯と一緒に食べたい“お供”がそろっている
“ご褒美ご飯”としておすすめしたいのが、追加できる「蘭王(生卵)」と「自家製麻辣油」を合わせた卵かけご飯です。「蘭王」は自然飼料で育てられた鶏の卵で、鮮やかなオレンジ色の黄身と濃厚なコクが特徴。辛さを控えながらも香りとパンチのある麻辣油を加えると、まろやかな卵の味がきりりと引き締まります。熱々のご飯と頬張れば、箸が止まらなくなるおいしさです。
食後に少し甘いものが欲しくなったら、「ゴルゴンゾーラチーズケーキ」を。もともとは堀さんが運営するフレンチレストランで提供されていたデザートで、ゴルゴンゾーラの豊かな風味と控えめな甘さに、はちみつがよく合います。小ぶりなサイズなので、定食を食べ終えた後にも無理なく楽しめます。
一椀から伝える、現代に必要な日本の食卓
「食べたものが身体をつくるという考えのもと、日本の食文化に根差した健康的な食を提案する。それは、堀先生がいつも大切にされていることです」と語るのは、店長の佐久川 健太さんです。
「味噌汁は、野菜や肉、魚などを組み合わせることで、一つの椀からたんぱく質やビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素を取ることができます。そんな味噌汁を主役に据え、一汁三菜の魅力を現代のライフスタイルに合わせて伝えたい。その思いから『佳照庵』は生まれました」(佐久川さん)。
店のある土地には、かつて自営業を営んでいた堀さんの両親と取引のあった業者があり、家族の思い出にもつながっているのだとか。昔ながらの職人文化や日本の面影を残す街並みは、「古き良き日本の食卓」を掲げる佳照庵によくなじみます。
実際、店には年配の常連客も多く訪れ、おいしさと健康を兼ね備えた定食を楽しんでいます。一方で、近年の和食や発酵食への関心の高まりから、若い世代の利用も増えているそうです。夜には、30代の女性が2人で訪れ、おばんざいを少しずつ味わいながらお酒を楽しむ姿も見られるようになりました。
3カ月前に店長へ就任したばかりの佐久川さん。ワインをドリンクメニューに加えたり、新しいデザートを考案したりと、佳照庵の新たな魅力づくりにも取り組んでいます。「幅広い年代のお客様に、もっと楽しんでもらえる店にしていきたいですね」と言います。
味噌汁は、決してご飯に添えられるだけの脇役ではありません。丁寧に引いただしと丹念に造られた味噌、旬の食材を組み合わせれば、それだけで食卓の中心を担う立派な料理になります。
「佳照庵」の定食を食べ終える頃には、身体だけでなく、心までゆるやかにほどけていくのを感じます。一椀の味噌汁から、日本の食文化の豊かさを改めて教えてくれる一軒です。
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