世界各国発 「Bento」が世界で人気! 前編

日本の弁当が海外で注目を集めている。ご飯や主菜、副菜などを箱にきれいに詰めるスタイルが珍しく、ヘルシーで多品目と好評だ。前編では、アメリカとインドネシアの弁当店を紹介する。

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Vol.175

日本の「お弁当」が今、海外で人気を集めている。そもそも海外では、ご飯や主菜、副菜などを一つの箱にきれいに詰める日本スタイルの弁当は存在しなかった。持ち帰り用のランチといえば、欧米ではサンドイッチやハンバーガー、アジアでは「おかず一品+白米」をタッパーに詰めたものが中心。また、子どもに持たせるランチボックスも「スライスチーズのサンドイッチに、カットしたリンゴやバナナ、カップのヨーグルト、ビスケット2個」といった内容で、多品目でもなく、見た目の一体感もないものが多い。日本料理店で、ランチタイムに店頭で弁当を売る姿も見られたが、ごく少数だった。それが、ここ数年で、日本の弁当店と同じような容器を使った「Bento(ベントー)」を販売する専門店などが世界中に登場している。

そこで、前編ではアメリカとインドネシアの弁当店を取材し、世界が日本の弁当に注目する理由に迫る。

アメリカで売られている「から揚げ弁当」。アメリカ人に合わせてボリュームを重視している
インドネシアの弁当は、から揚げなどのメインに野菜が付くもので、アメリカのものと比べると量は少なめ
もともとインドネシアで販売されていた持ち帰り用の弁当(3万5,000ルピア=約260円)。バナナの葉や紙で惣菜やご飯などを包んだもので、スープはビニール袋に入っており、ご飯にかけたりしながら食べる

「持ち帰りランチ」が好まれるアメリカ・シアトルで弁当が人気沸騰中!

アメリカ・シアトル近郊の「イーストサイド」は、マイクロソフト社を始め、多くのIT企業が開発拠点を持つエリア。忙しいビジネス層のランチは、レストランでゆっくり食べるより、「トゥー・ゴー(To Go)」(持ち帰り)のスタイルが好まれる。かつては、こうしたビジネス層のランチではサンドイッチが人気だったが、近年、いろいろな料理を一度に手軽に楽しめるということで、日本スタイルの弁当が人気を集めている。

看板商品「幕の内弁当」は、ソースやタレも自家製。この10年あまりで日本食が一般的になり、きんぴらごぼうや煮物、漬物にも抵抗感がない人がほとんどだ

そんなトレンドを追い風に繁盛しているのが、2017年7月にオープンしたテイクアウト弁当専門店「弁当屋ごえもん」だ。オーナーの石川和夫氏は、1992年からシアトル界隈の日本料理店で料理人として腕を振るってきたが、「日本スタイルの弁当は、アメリカでもヒットするはず」と考え、弁当専門店で独立・開業を果たした。

弁当を開発するにあたり、石川氏は、「日本の弁当をそのままアメリカで出しても売れない」と考え、アメリカ人の嗜好を反映。特にこだわったのが、ボリュームだ。約28センチ四方と、日本で一般的な持ち帰り弁当の2倍近くは入りそうな容器に、様々なおかずをぎっしりと詰め込む。特に人気の「幕の内弁当」は、照り焼きチキン、塩麹サーモンのグリル、エビと野菜の天ぷら盛り合わせと、メインだけで3種類。ほかに、きんぴらごぼう、野菜の煮物、卵焼き、サラダなど栄養のバランスも考えたメニューが並び、シソのふりかけをかけたご飯とカリフォルニアロールまで入る。これに味噌汁が付いて、13.95ドル(=約1,562円)。ボリュームもさることながら、ヘルシーなイメージの強い和食を10種類以上楽しめるのも人気の理由だ。

石川氏がもう一つ気をつけているのが、個々の客への対応。「“人種のるつぼ”と呼ばれるアメリカのなかでも、特にIT企業が多いシアトルは世界中から様々な人が集まる場所。宗教によって食べられない食材もあれば、ベジタリアンやグルテンフリーなど、主義や嗜好によって食の制限を持つ人が日本よりもはるかに多い。そうした人の希望にもなるべく沿うように、カスタマイズに応じています」と語る。

今後の展望について石川氏は、「シアトルは世界的な企業が集まる街。企業のランチミーティングやイベントなど、ケータリングへのニーズも高いので、今後は力を注いでいきたいです」と、笑顔を見せる。日本人の利用者はほんの一部で、来店客のほとんどはアメリカ人。平日は近隣に勤めるビジネス層、週末はファミリーの来店が多く、「Bento」は着実にアメリカの日常生活に浸透してきている。

「しょうが焼き弁当」(11.95ドル=約1,338円)。日本らしい弁当の定番として、「から揚げ弁当」(9.95ドル=約1,114円)と並んで、日本人からの注文率が高い
アメリカで25年の料理人歴を持つオーナーの石川和夫氏。見慣れないものは敬遠されるためアメリカ人にもなじみ深い料理を中心にしつつ、日本人も満足できるおいしさを追求している
Bento-ya Goemon(弁当屋ごえもん)
700 NW. Gilman Boulevard, #E-103A, Issaquah, WA 98027
http://www.bentoyagoemon.com

インドネシア人の好みに合わせたアレンジで成功

インドネシアの首都ジャカルタの中心部に位置し、トレンドに敏感な人々が集まるショッピングモール「プラザスナヤン」。その最上階のおしゃれな雰囲気のフードコートには、国内外の飲食店が並び、昼夜を問わず大勢の人で賑わっている。その中の1店舗が、2007年7月にオープンした弁当店「ホクベン エクスプレス(HokBen Express)」だ。日本の弁当文化を知ったインドネシア人オーナーが1985年に創業した「ホクベン」は、仕切られた容器にご飯やおかずを入れる日本式の弁当を、現地にいち早く持ち込んだパイオニア的な存在。それまで、インドネシアでテイクアウトの食事というと、バナナの葉や紙でごはんや惣菜を包んだものしかなかったが、すっきりと仕切られ見た目も美しい弁当が若者を中心に人気を集めている。また、ここ数年でパソコンやスマートフォンからもメニューの閲覧や注文を簡単にできるように。サービスを強化したことで、さらにユーザーを獲得し、現在、インドネシア全土に150店舗を構える一大チェーンとなっている。

一番人気の「ベントスペシャル4 牛肉の照り焼き」。手羽先に鶏肉を詰めて揚げたもの、エビフライなどがつく。インドネシア人が様々な料理に使う定番の唐辛子ソース「サンバル」を入れて、好みで味を調整できるようにしている

弁当に入る料理は、インドネシア人の好みに味付けを変えた日本食。4種類の「ベントスペシャル」が売りで、一番人気は「ベントスペシャル4 牛肉の照り焼き」(5万8,000ルピア=約440円)だ。白米のほか、副菜としてエビフライ、エビの練り物のフライ、手羽先の揚げ物、大根と人参の紅白なますが付く。次に注文が多いのは「ベントスペシャル2 牛肉の焼肉」(5万8,000ルピア=約440円)。付け合わせは、手羽先の揚げ物とカニすり身のカニロール、なます、白米となっている。そのほか、牛肉の焼肉や鶏肉の照り焼きを主菜にした弁当も用意している。

どれも、日本の味にこだわらず、インドネシア人の好みに合わせて甘い調理用ソース・ケチャプマニスやとうがらしなどで甘辛くアレンジを加えたり、サイドメニューには、現地で人気の高い鶏肉やエビの揚げ物などを取り入れるなど、積極的に“現地化”を進めたこともヒットの理由として挙げられる。さらに、インドネシアでテイクアウト用のランチボックスというと「白米+おかず1品」という商品が多かったため、品数の豊富さも日本風の弁当が人気を呼ぶ要因となっている。また、インドネシアでは高級で“アッパー層が食べる食事”というイメージが強かった日本食を、手頃な価格で食べられるのも幅広い層からの支持につながった。

客層は、ファミリー、友人同士のグループ、アッパー層、モール内で働く従業員など様々。売りの弁当以外に、丼物や揚げ物、焼肉や照り焼きなどの一品メニューも販売しており、モール内ということもあり、店内で飲食する人がほとんどだ。

アメリカでは「ボリューム」と「来店客の要望に応じたカスタマイズ」、インドネシアでは「現地の味付け」と「価格の安さ」がポイントになり、日本の弁当が高い人気を集めている。

「プレミアムセット・ビーフヤキニク」(6万ルピア=約450円)。牛肉の焼肉とチキンカツがメイン。付け合わせの紅白なますは日本の味付けだが、ピクルスに近いため、インドネシアでも人気
「ベントスペシャル2 牛肉の焼肉」。濃い味付けの焼肉に肉詰めの手羽先、現地で好まれるカニのすり身を軽く揚げた「カニロール」がつく。カニロールはインドネシアで生まれた料理だが、なぜか“日本食”の練り物の一つとして定着している
ホクベン エクスプレス(Hokben Express)
Plaza Senayan, Lantai 3, Food Court, Jl. Asia Afrika, Senayan, Jakarta, Indonesia
https://www.hokben.co.id/

取材・文/ハントシンガー典子(海外書き人クラブ アメリカ)
取材・文/さいとうかずみ(海外書き人クラブ インドネシア)
※通貨レート 1ドル=約112円 1インドネシアルピア=約0.0075円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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