更新日:2024.1.25
Vol.176
ご飯や主菜、副菜などがきれいにまとめられた日本式の「お弁当」が世界各国で人気を集めている。前編では、アメリカとインドネシアの弁当店を取り上げたが、後編の舞台は“食の都”フランス・パリ。ほかの国と同様、フランスでも弁当といえば日本料理店が店内で提供するものや、日本の食品を扱う店がテイクアウトで販売するものが中心だった。しかし、近年ではテイクアウトをメインにイートインスペースも設けた弁当店が増えている。
ここでは、日本の“駅弁”を愛するフランス人が経営する、パリ近郊にある純和風の駅弁店と、パリの中心街にある日仏折衷の弁当を売る店を紹介。地元の人たちの支持を得ている理由に迫る。
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目次
・肉、魚、野菜、幕の内。4種類の純和風弁当を販売
・日本の新幹線での駅弁体験が生んだ野菜重視の弁当
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肉、魚、野菜、幕の内。4種類の純和風弁当を販売
パリ中心部から電車で10分。路面電車との乗換駅で、周辺には大手企業がオフィスを構えるイシー・ヴァル・ド・セーヌ駅。その構内に2015年2月オープンしたのが、フランス初の駅弁店「小江戸へどうぞ(Koedo Dozo)」だ。
弁当は「肉弁当」「魚弁当」「ベジタリアン弁当」(12~14ユーロ=約1,560~1,820円)と、「幕の内弁当」(15ユーロ=約1,950円)の4種類で、それぞれ内容は日替わり。肉弁当のメインは、「鶏肉のグリル」「とんかつ」「鶏の唐揚げ」「ハンバ―グ」など。魚料理のメインにはフランス人に人気の鮭や鯛、タラを使うことが多い。鮭は「塩焼き」のほか、味噌バター風味の北海道の郷土料理「ちゃんちゃん焼き」など日本らしい味付けにこだわっている。また、ベジタリアンが増加傾向にあるため、「厚揚げ」「揚げ豆腐」など豆腐を用いたメニューや「野菜のかき揚げ」「茄子の味噌焼き」などをメインにした「ベジタリアン弁当」を用意している。
副菜は、「野菜の煮物」「野菜の炒め物」「漬物」「酢の物」といった組み合わせ。煮物や炒め物は「レンコンとニンジンとブロッコリー」「大根とサツマイモとズッキーニ」「おからとひじき」「切り干し大根」など。そこに「紅白なます」や「きゅうりとわかめの酢の物」などを加える。
味付けは、フランス人の好みに合わせず、純和風。主菜はしっかり味が付いているが、野菜は素材の旨みがわかるようにあえて薄味にしている。店主のエステル・ミケル氏は、「高校時代、日本へ1年間交換留学したときに、ホストファミリーに食べさせてもらった“日本のお母さんの味”を再現するため、日本人のシェフと相談しながら開発しました」と語る。
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見た目や味付け、メニューの内容など、日本の弁当とほとんど変わらないが、意識して変えているところは、ご飯の量。「ご飯は日本の弁当より少なめにしています。フランス人にとって米は“安い食材”というイメージが強く、ご飯が肉や魚より多いと損をした気分になる人が多いからです」と、ミケル氏は説明する。もっとも人気が高いのは、肉と魚の主菜や卵焼き、コロッケなど、多品目が味わえる「幕の内弁当」だという。
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日本の駅弁と同様、長時間の列車移動の車中で食べる人もいるが、近隣の企業に勤めるビジネス層がお昼休みなどに購入するケースが多い。来店客は30代が中心で、ほとんどがフランス人の常連客。オープン当時は日本への滞在経験を持つ人が多かったが、“駅弁”という珍しい文化への興味から来店し、ヘルシーな和食に魅了されて店のファンになる人も増えているという。
7 rue Rouget de Lisle - Gare Issy Val de Seine 92130 ISSY-LES-MOULINEAUX
Issy Val de Seine (RER C線とTRAM T2線)駅構内。切符売り場の隣。
https://www.koedo.fr/
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日本の新幹線での駅弁体験が生んだ野菜重視の弁当
古くからの街並みにおしゃれなブティックやカフェが建ち並ぶパリのマレ地区にある「ネオベントー(NeoBento)」は、2012年12月にオープンした弁当専門店。共同創始者のリオネル・ドリュクマン氏とマニュエル・ロワール氏が、以前、日本へ旅行したときに新幹線で駅弁を食べ、「これをフランスで販売すればヒットする」とひらめいたのが出店のきっかけだという。
もともとフランスには、日本の弁当と同様に、間仕切りされた箱に、前菜からデザートまでフルコースの料理を入れた「プラトー・ルパ」という高単価のランチボックスがある。主に総菜店が販売しているもので、企業がランチ会議の際などに注文することが多い。こういった商品があったことで、フランスの人たちが弁当を受け入れる素地はでき上がっていたと言えるかもしれない。
同店の弁当は、あらかじめ作り置きしておいた全20種類の料理のなかから、来店客が注文したものを詰めるスタイル。野菜料理3品+ご飯やイモ系の料理1品+肉や魚の料理1品+デザート1品という組み合わせの「クラシック」が13.8ユーロ(約1,794円)。これに、すべての料理のなかから1品追加できる「マキシ」が15.5ユーロ(約2,015円)、全メニューから3品を選ぶ「ミニ」が9.8ユーロ(約1,274円)だ。料理の組み合わせを自由にした理由は、「私自身が押し付けられるのが嫌いで、すべて自分流でやりたい性格だから」とドリュクマン氏は笑顔を見せる。用意されたものではなく、自分の好みで弁当をカスタマイズしていくというスタイルは、自己主張が強いと言われるフランス人からも好評を得ている。
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料理は、日仏折衷で、フランス料理を日本の食材で作ったり、日本料理をフランスの食材で作ったりしている。野菜料理で人気なのは「そら豆のサラダ」。本来は枝豆を使いたいと考えていたが、大量入手が難しいことからそら豆で代用したところ予想以上の人気商品に。きゅうり、乾燥クランベリーと青りんごが入り、フルーツのさわやかな酸味がアクセントになっている。
ほかにも、「レモン汁とハチミツを加えたズッキーニの漬物風マリネ」「ブロッコリーのオーブン焼き」「トマトとバジルのスープ」など、多彩な野菜料理が7種類。フランス料理では肉や魚より野菜が少ないケースが多いため、野菜をたっぷり摂れることが他店との差別化のポイントになっている。
ご飯やイモ系の料理では、「ニンニク、しょうゆ、こしょう、エシャロットで味付けしたジャガイモのオーブン焼き」や「マッシュポテト」などのジャガイモ料理をはじめ、「海苔と米酢とアサツキで味付けしたソバ」や「唐辛子入りパスタ」などの麺料理のほか、「キヌア」「白米」など、バラエティ豊かにそろえてる。
また、肉や魚の料理で人気なのは、日本の「つくね」をヒントに開発した「豚肉と子牛肉で作る甘辛味の肉団子」。料理はすべて日替わりだが、肉団子と「そら豆のサラダ」は人気が高いため、定番として毎日提供している。ほか、ベジタリアン用に「豆腐とハーブの炒め物」など肉や魚を使わない主菜も用意している。
さらに、デザートにもこだわり、「ラベンダー風味のクランブル入りイチジクのロースト」や「チアシード入り抹茶味のゼリー」など6種類を用意。メニューを決めるにあたって、独自に周辺エリアで市場調査を行い、ターゲットであるビジネス層やファミリーの9割が「ランチでもデザートがないと物足りない」と考えている、という結果が得られたことから、満足度アップにつながるデザートの開発に力を入れたという。
主な客層は、周辺のオフィスなどで働くビジネス層や近隣住民、観光客などで、ビジネス層向けのテイクアウト中心の店としては珍しく土・日曜日もランチ営業をしていることもあり、週末はファミリーが多い。イートインも可能だが、ほとんどの人がテイクアウトで購入するという。
自分好みのカスタマイズができる点やヘルシーさを売りに、人気を集めている弁当店。どちらも、日本の駅弁がキーワードになっており、今後、フランスで“駅弁ブーム”が到来する日も近いかもしれない。
5 rue des Filles du Calvaire, 75003 Paris
取材・文/羽生のり子(海外書き人クラブ)
※通貨レート 1ユーロ=約130円
※価格、営業時間は取材時のものです。予告なく変更される場合がありますのでご注意ください。
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