2022/02/21 特集

2022年の外食トレンドを読み解く(1)「近代食堂」編集長・雨宮 響 氏

コロナに翻弄された2020年、コロナとの付き合い方が見えてきた2021年。そして、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのか。専門誌の業界ウォッチャーに昨年から今年にかけてのトレンドを読み解いてもらった。

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目次
【2021年の外食トレンドを振り返る】
 冷凍自動販売機などテイクアウトの動きに注目。寿司酒場がコロナ禍のニーズにマッチ

【2022年の外食トレンドを読み解く】
 「コラボ」や「シェア」がキーワード。付加価値を付ければ高価格でもヒットの可能性も

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スピード感のある経営がカギ。体験やライトユーザーを意識して、飲食の価値を上げる

 コロナ禍を生き抜くためにさまざまな試行錯誤、チャレンジを続ける外食業界。2021年も苦しい状況が続く一方で、ワクチン接種などによる感染者数の減少で一筋の光が見えた年でもあった。では、2022年は外食業界にとってどんな1年になるのだろうか。外食業界を見続けてきた専門誌の編集長らに話を聞き、業態、メニュー、食材など、さまざまなポイントについて、昨年のトレンドを振り返りつつ、今年のトレンドを読み解いてもらった。

 第1回は、飲食店専門誌「近代食堂」で編集長を務める雨宮響氏が登場。テイクアウトの隆盛に伴う冷凍技術の進化や、寿司酒場・焼き肉業態の好調に注目。また、2022年は「コラボ」「シェア」がキーワードの1つになりそうだという。

【2021年の外食トレンドを振り返る】冷凍自動販売機などテイクアウトの動きに注目。寿司酒場がコロナ禍のニーズにマッチ

テイクアウトと冷凍技術の進化

 2021年を振り返ると、テイクアウトから撤退する店があった一方、テイクアウトを事業の柱と位置付けて腰を据えて取り組む店も見られました。時間が経ってもおいしいテイクアウトメニューを開発したり、自店のブランディングとともに確立させるなど、一時的な売上の補完にとどまらない成果をあげた店もあります。

 テイクアウトの動きと合わせて注目したのが、冷凍技術の進化と普及です。昨年、自店でメニューを決めて商品を充填できる冷凍自動販売機が販売され、多くの店で取り入れられました。これによって店の料理を冷凍して販売することが個店でも手軽になり、急速冷凍機や真空包装機、冷凍自動販売機などを組み合わせれば非接触・非対面・24時間で販売できる。飲食店ならではのおいしさを時間を選ばすに販売できるとともに、利用客にとっては飲食の楽しみ方が広がります。また、冷凍に合ったメニュー開発、販売ノウハウを生かしてECに展開するなど、飲食店が持つ技術と戦略を広げるチャンスの1つではないかと期待しています。

寿司酒場・焼き肉業態の好調

 業態では寿司酒場が好調。スシローが手掛ける大衆寿司居酒屋「杉玉」や東京・三軒茶屋などで展開する「スシスミビ」など、コロナ禍以前からスタートしていた業態ですが、つまみにも食事にもなる寿司を手軽に食べられる点が、コロナ禍のニーズにマッチしました。

鮨 酒 肴 杉玉
https://www.sugidama-sushiizakaya.jp/

回転寿司「スシロー」を運営する株式会社FOOD & LIFE INNOVATIONSが手掛ける大衆寿司居酒屋。こだわりの寿司や一品料理を、ほぼ299円(税抜き)で提供。駅前や繁華街を中心に、関東・関西・九州で約50店舗展開している。

 また、寿司とともに幅広い年齢層に支持されている焼き肉業態は、新規参入も含めて好調。 “ミートショック”(世界的な牛肉価格の高騰)という不安材料はありますが、これからも参入企業は増える可能性は高く、差別化が必須になるでしょう。

【2022年の外食トレンドを読み解く】「コラボ」や「シェア」がキーワード。付加価値を付ければ高価格でもヒットの可能性も

「コラボ」や「シェア」など共同の動き

 2022年の飲食業界を展望したとき、経営形態として「コラボ」や「シェア」がキーワードの1つではないかと思います。

 例えば、ミシュランの星付きレストラン「sio」(東京・代々木上原)と埼玉を中心に店舗展開をしている株式会社ロットは、共同で「町の洋食 パーラーオオハシ」「イザカヤ」(どちらも埼玉・戸田)を開発して出店しています。「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏とロットの創業者・田子英城氏は共に出身が戸田であり、鳥羽氏は一つ星レストランを作るのと同じくらいの熱量で「o/sio」(東京・丸の内)や「パーラー大箸」(東京・渋谷)など、カジュアル業態の店づくりに注力してきました。そこで、地域密着の経営を行いドミナントで店舗展開をしているロットと組むことで、地域に新たな活力となる魅力ある店を生み出しています。

 スシローの大衆寿司居酒屋「杉玉」は、株式会社ダイヤモンドダイニングとFC契約を結ぶことで、出店を加速させています。業態開発を得意とするダイヤモンドダイニングがFCという形を選んだインパクトは大きいと言えます。事業展開のスピード感を高め、得意な分野を生かしあう「コラボ」の典型的な例と言えると思います。

町の洋食 パーラーオオハシ(埼玉・戸田)
埼玉県戸田市新曽2200-2 渡邉第2ビル1F
https://r.gnavi.co.jp/g9njpe770000/

埼玉・北戸田駅から徒歩2分の場所に、2021年7月オープン。株式会社ロットの創業者・田子英城氏と東京・代々木上原「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏が以前から親交があったことから、鳥羽氏がメニュー監修を行う。老若男女から愛される町に根付いた洋食店を目指している。

 一方、「シェア」については“人材のシェア”や“経営・運営のシェア”などが考えられます。A社の社長がB社の取締役を兼任したり、1人のスーパーバイザーが数社と業務契約を結ぶなど、経営や運営を共同で行うという形です。海外では出店の際に、数社が出資して共同で進めることは当たり前というほど浸透しており、海外出店の経験を持つ日本の経営者は、スピード感や展開の速さを目の当たりに感じていました。

 飲食業界は人材不足や外食市場の縮小という課題と、コロナの影響が重なり、経営の刷新が急務です。以前は、一国一城の主が1社もしくは1人で店の立ち上げから資金集め、運営、人材教育まで、全てをまかなうのが当たり前でしたが、変化の速い飲食業界にスピード感を持って対応するには、こういったさまざまな形での「コラボ」や「シェア」が有効になっていくのではないでしょうか。

SDGs、食品ロス削減への対応が本格化

 SDGsや食品ロス削減への対応も、本格的に進むように思います。未利用魚など価値がないとされていたものから魅力を引き出し、価値あるものに変えることは、まさに飲食店の得意分野。無駄をなくすという社会的意義だけでなく、価値あるメニューを作ることで生産者にも飲食店にも利益が出て、お客様にも“おいしい”“面白い”と喜んでもらえる。新しい形の「三方よし」を飲食店がリードして生み出していくチャンスがあるのではないかと思っています。

飲食店ならではの“体験”を重視したメニュー

 メニューでは、東京・吉祥寺「挽肉と米」の“挽きたて、焼きたて、炊きたて”にこだわったハンバーグがヒットするなど、飲食店ならではの“体験”を重視する流れがあります。今後の消費マインドが、リーマンショックや東日本大震災の後のように不況感が強くなれば、低価格で楽しめるホルモン酒場などの再来があるかもしれません。一方、食材費や人件費の高騰が避けられず、多くの店は価格帯を下げたくないはずです。高価格のメニューでも驚きや楽しさなどを伝えられれば、一気に支持が広がる可能性があります。

 酒類提供自粛などで厳しかったドリンクは、逆襲を期待したい。スタッフがドリンクを勉強して来店客を楽しませる提案をすることが付加価値につながります。フードとのペアリングなど、ドリンクの楽しみ方を広げられると面白くなるのではないでしょうか。

ライトユーザーを意識した業態

 業態としては、若者が気軽に利用できるネオ酒場系の多様な展開が予想されます。トレンド変化の速さやコロナの影響を考えると、ヘビーユーザーよりもライトユーザーを意識した店づくりもポイントとなるかもしれません。いずれにしても、来店客の満足感を高め確実にリピートにつなげる工夫と、ニーズを捉えて変化していく柔軟性が、今まで以上に必要になるでしょう。

 2022年はコロナ関連融資の返済が始まるなど、飲食店にとって正念場です。人時生産性を高めて利益を確保する努力は必要ですが、料理を通じて楽しい時間を提供する飲食店本来の価値を確認し、組織の再構築を急がなければなりません。足元を固めつつ、スピード感と柔軟性を持って臨むことで、飛躍のチャンスがつかめるのではないでしょうか。

月刊「近代食堂」編集部 編集長 雨宮 響 氏
1998年、旭屋出版入社。月刊「近代食堂」編集部、同誌副編集長、ムック書籍編集長を経て2018年より現職。取材件数は延べ6,000を超える。
月刊「近代食堂」(旭屋出版)
1967年に創刊した外食業界に携わる人のための総合情報誌。最新の繁盛店の情報やヒットメニューなど、現場視点の実践的なノウハウを掲載している。