2026/08/10 特集

【2026飲食店トレンド北海道編】札幌のインバウンド再加速と食文化の進化

食の宝庫として全国にその名を知られる北海道。その中心地である札幌の外食シーンは今、大きな変革期を迎えています。今回は、飲食店の現場と向き合うぐるなび北海道営業所の3人にインタビューを実施。再開発が進むエリア動向からヒット店舗の裏側、注目の新業態、そして札幌の未来像まで、最前線にいるからこそ見えてくる「札幌・飲食店の今」に迫ります。

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【札幌】注目のエリアや繁盛店、メニューを紹介

北海道は、言わずと知れた日本を代表する食の宝庫であり、全国有数の食材を誇る一大産地です。なかでも新千歳空港からの玄関口でもある札幌は、観光と外食の中心地として、新店の出店や新業態の進化が特に活発な注目のエリアです。

北海道エリアを拠点に飲食店の「今」と「次」を最前線で見続けているぐるなび営業担当への取材をもとに、札幌における繁盛店の動きや新たなヒットの兆し、集客につながるメニュー・経営の工夫を解説。現場で得たリアルな情報から、2026年「札幌の飲食店トレンド」を紐解いていきます。

札幌 飲食店トレンドの語り手

河合 竜男(かわい たつお)
東日本セクション 北海道グループ グループ長 兼 北海道営業所 所長
ぐるなび入社:2007年6月
これまで担当したエリア:北海道全域、関東全域
西松 美津子(にしまつ みつこ)
東日本セクション 北海道グループ チームリーダー
ぐるなび入社:2009年4月
これまで担当したエリア:北海道全域
中塚 智紀(なかつか とものり)
東日本セクション 北海道グループ
ぐるなび入社:2014年8月
これまで担当したエリア:北海道全域

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飲食店トレンド 2026 札幌編
1.札幌のエリア傾向:すすきのと狸小路に人流が集中
2.繁盛店「ジンギスカン」「ラーメン」「焼き肉」「寿司」
3.札幌の敏腕な飲食店経営者:話題の新業態とブランド
4. 札幌で売れ続けるメニューと食文化の動向
5. 札幌の飲食の「今と未来」

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1.札幌のエリア傾向:すすきのと狸小路に人流が集中

――札幌の中で、人気エリアの傾向はありますか。

中塚: 今も昔も札幌の中心といえば北海道一の繁華街「すすきの」ですが、最近は人流に大きな変化が起きています。これまで地元の若い層は、どちらかというと札幌駅周辺の商業施設を利用する傾向がありましたが、2034年完成予定の再開発に伴い、現在は一時的に札幌駅前の商業施設が減っている状況です。そんな中、2023年11月にすすきのエリアに複合商業施設「ココノ ススキノ」が開業。映画館などを目的に、地元客の流れがすすきのエリアへシフトしてきています。

一方で札幌駅周辺エリアは、同時に高級ホテルの建設ラッシュが進んでいて、今後はアッパー(富裕)層をターゲットにした集客の動きも活発化していくと見ています。ビジネス街や交通のハブとして地元客と観光客の両方を取り込める強みがあるため、今後の展開が非常に楽しみなエリアですね。

――新たに、飲食に盛り上がりを見せるエリアはありますか。

狸小路(たぬきこうじ):札幌の中心部、大通駅とすすきの駅の間に位置する巨大なロングアーケード商店街。写真は夏の「狸まつり」時の狸小路5丁目通り

西松: 狸小路(たぬきこうじ)に面白い変化が起きています。1丁目から7丁目まで約900mにわたり約200軒のお店が並ぶ全天候型のアーケード商店街で、元々はお土産店が多くインバウンド中心のエリアでした。観光需要が戻ってきたことで、最近は椅子に座ってじっくり食べるスタイルだけでなく、散策しながら「ちょっとつまめる」飲食体験が流行り始めています。例えば、羽根つき焼きおにぎりをだしスープに入れて食べるおにぎりスタンド「漁師のにぎりめし」(2026年5月オープン)などが代表例で、物販だけでなく「飲食も楽しむ場所」へのシフトを感じています。

さらに、「七宝麻辣湯」「麻辣湯HAO」「札南マーラータン」といった「麻辣湯(マーラータン)専門店」が狸小路に相次いで登場したことで、トレンドグルメを求める中高生など若い地元客の姿が増えました。お土産街に地元の学生とインバウンドが混ざり合う、これまでにない新しいにぎわいが生まれています。

  • 「鮭節焼きおにぎり&出汁スープセット」(660円)(写真提供:漁師のにぎりめし)
  • 「七宝麻辣湯」の「麻辣湯(マーラータン)」(1,000円)

【関連記事:「麻辣湯」ほか、夏に売れるメニューまとめ】
暑い季節に売れる!繁盛店の夏メニュー10選

2.繁盛店「ジンギスカン」「ラーメン」「焼き肉」「寿司」

――観光客にヒットしている繁盛店を教えてください。

中塚:2023年後半からのインバウンド本格回復に伴い、空前の「ジンギスカンラッシュ」が続いています。「ジンギスカンを出せば間違いない」と言われるほどの勢いで、人気店の多店舗展開も含めて各社が物件を探している状態です。札幌を訪れるインバウンドは韓国・台湾・香港などのアジア系が約8割を占めており、特に一番多い韓国人旅行者は焼き肉・ジンギスカン文化との相性が抜群なことも追い風になっています。

「士別成吉思汗(シベツジンギスカン)すすきの店」は、士別サフォーク羊の商品力で差別化

象徴的なのが「士別成吉思汗(シベツジンギスカン)すすきの店」です。最大の強みは、自社農場から仕入れた希少な羊肉を提供している点です。北海道内でも自社牧場の羊肉を出すジンギスカン店はほぼ唯一と言える存在で、ブランド羊肉としての注目度が高い名店です。過去にAPEC首脳会議やANA国際線ファーストクラスで提供された実績もあり、ブランディングが非常に長けています。

【関連記事:すすきの「士別成吉思汗」山下社長インタビュー記事はこちら】
「士別成吉思汗(シベツ ジンギスカン)」が国産サフォーク羊の商品力で月商1,300万円!

西松: インバウンド需要を上手に捉えているお店として、2024年9月にオープンした「札幌ラーメン 原ゝ(げんてん)その2」があります。ここは「朝ラー(朝ラーメン)」需要をつかんで行列を作っています。近隣ホテルで朝食が付かないケースが増えた背景もあり、朝から手軽においしいラーメンが食べられる選択肢として選ばれているんです。

「札幌ラーメン原ゝその2 」の朝ラーで人気の「生海苔朝ラーメン 塩/醤油」(600円)。「その2」は、江別市の人気店「原ゝ」の味を札幌でも楽しめるようにオープンした店舗。札幌ラーメンの伝統を大切にしながらも、現代の感性を取り入れた“進化系”ラーメンが味わえる人気店

見逃せないのが、Googleビジネスプロフィール(GBP)を活用した工夫です。食券を受け取ってラーメンを提供するタイミングで「もしよろしければ、Googleクチコミをご投稿いただけませんか?」と丁寧にお声がけされています。会計時ではなく提供時に伝えることで、お客様がベストな状態のラーメンを撮影し、その場で投稿しやすくなるわけです。スタッフ全員の意識が高く、この声かけを徹底したことで、わずか半年ほどで高評価のクチコミが爆発的に増加しています。

――では、地元の人が通う繁盛店はいかがでしょう。

中塚:顧客の7割以上が地元客で、1〜2時間並ぶ郊外の人気店があります。

1つ目は「炭火焼肉 BLUSTA(ブルスタ) 新発寒(しんはっさむ)店」。圧倒的なコスパを誇る焼肉食べ放題のお店で、広大な駐車場を備えていることからファミリーに絶大な人気を誇ります。予約なしで訪れると2時間待ちになることも珍しくありません。

  • 「炭火焼肉 BLUSTA(ブルスタ)」は、札幌エリアのほかに登別、伊達、宮城県に展開している(2026年現在6店舗)
  • 札幌エリアのほかに旭川、北見、東京エリアに展開している(2026年現在14店舗)(写真提供:回転寿し トリトン)

もう1つは、道産子御用達の「回転寿し トリトン」。新鮮で豪快にでかいネタが特徴で、地元の方が「並んででも食べたい」と口をそろえるほどです。観光客はもちろん、地元客の心をつかんで離さない商品力を持っています。

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3.札幌の敏腕な飲食店経営者:話題の新業態とブランド

――手腕に注目している、札幌の飲食店経営者について教えてください。

河合: 株式会社WONDER CREW(ワンダークルー)の渡邊 智紀(とものり)社長ですね。2010年に創業されてから、直営・FCを含めて多彩なヒットブランドを生み出されている経営者で、クリエイティブなアプローチでその価値を最大化し、札幌の飲食業界と街全体を盛り上げようと事業を展開されています。また、「人」を重視される企業風土を築かれており、現場で働く若いスタッフたちからも高い熱量を感じます。

――どんな店舗・ブランドを展開しているのでしょう。

河合:渡邊社長の手腕が生かされているのが、札幌駅から徒歩10分ほどの立地にある注目の新店、ベーカリーカフェ「レモンベーカリー」です。1997年に開業し、惜しまれつつ閉店した経緯を持つパン屋ですが、ワンダークルーがその名称や北海道産小麦100%のこだわりを引き継いで、2025年3月に復活オープンしました。朝から行列ができて昼過ぎには完売するほどの人気店となっています。

  • 朝から昼(8:00~17:00)はベーカリーカフェ「レモンベーカリー」(写真提供:株式会社WONDER CREW)
  • 夜(17:00~23:00)は大人の隠れ家・ビストロ「うらレモン」(写真提供:株式会社WONDER CREW)

ここで注目すべきは、昼の営業で発生するパンや食材のロスを防ぐため、夜間は「うらレモン」というビストロへ業態を切り替えている点です。パンを夜のお通し(食べ放題/550円)として提供することで、食品ロスを生まない取り組み、夜は業態を変えて客単価UP、この2つを両立させています。ビストロのシェフには札幌のフレンチの名店「TATEOKA TAKESHI」の出身で地元テレビ番組にも出演する北川 賢太さんを起用するなど、話題性と合理性を備えたビジネスモデルを構築しています。

また、ブランド展開も多角的です。主力であるイタリアン居酒屋「エゾバルバンバン」や海鮮個室居酒屋「うおっと ~魚人~」、カキとワインに特化した酒場「FISHMANS SAPPORO 」のほか、歴史的建造物(札幌市内の旧永山邸)の敷地内に和洋折衷喫茶「Nagayama Rest(ナガヤマレスト)」など、ロケーションを生かしたストーリー性のある店舗づくりを得意とされています。

道産食材をバンバン豪快に最強コスパで提供する、北海道イタリアン居酒屋「エゾバルバンバン」(写真提供:株式会社WONDER CREW)
新鮮な海鮮と北海道各地の日本酒がそろう海鮮居酒屋「うおっと ~魚人~」の名物は「甘エビつかみ取り」(写真右上/1,280円)(写真提供:株式会社WONDER CREW)
「Nagayama Rest(ナガヤマレスト)」は、自然豊かな永山記念公園の文化財、旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮内にある(写真提供:株式会社WONDER CREW)

さらに、札幌PARCO屋上に夏季限定のビアガーデン「ROOFTOP GREEN GARDEN BBQ」の運営や、パンの自動販売機の設置など、市場のニーズを捕らえた、スタイリッシュで柔軟なブランド展開が強みといえます。

札幌PARCO屋上「ROOFTOP GREEN GARDEN BBQ」。バーベキュープランは3種類「スタンダード/ラムチョップ/漬け込みハラミ」(各5,500円~)を用意。2026年の開催期間は7月9日(木)~9月6日(日)(写真提供:株式会社WONDER CREW)

このように、ただお腹を満たすための外食ではなく、思わず写真を撮りたくなるような料理のビジュアル、細部までこだわり抜いた店舗の内装、そして遊び心のある接客など、「そこに行くだけでワクワクする空間」をデザインする力に長けています。

4.札幌で売れ続けるメニューと食文化の動向

――札幌で売れ続けるメニューについては、どのように見ていますか?

西松: ロングセラーの代表例が、「海味はちきょう」の名物「元祖つっこ飯」ですね。「おいさー!」の威勢の良い掛け声とともに、ご飯が見えなくなるまでイクラを盛り続ける名物メニューで、利用者の多くを観光客が占めています。

「元祖つっこ飯(めし)」(小鉢1,690円、小3,690円、中4,590円、大8,690円)は、イクラこぼれ盛りの元祖といわれる(写真提供:海味はちきょう)

創業者は元羅臼漁師で、名物「つっこ飯」は、羅臼の食堂で大盛りのご飯が余った際、「もったいない」とイクラを豪快にぶっかけた漁師町の豪快な食事スタイルとアイデアから誕生したそうです。圧倒的なインパクトと体験価値が、長く愛される理由なのでしょう。このように海鮮ジャンルでは「コト消費(記憶に残る体験)」を意識したメニュー展開がヒットしています。

中塚: 複合商業施設、狸COMICHIの1Fにある「シハチ鮮魚店」などに代表されるように、質の高い海鮮を提供するだけでなく、視覚的に映える盛り付けや、お客様の目の前で仕上げるパフォーマンスを組み合わせた「進化系海鮮丼」が人気を集めています。食べるだけでなく、食体験そのものを楽しんでもらう工夫が現在のトレンドですね。

海鮮丼の一番人気「名物!!シハチの10種海鮮丼」(1,848円)。その日の鮮魚を10種と言わず、13~15種を盛り合わせている

【関連記事:「シハチ鮮魚店」インタビュー記事はこちら】
札幌「シハチ鮮魚店」が月商2,000万円超え!直営鮮魚と二毛作モデルが好調

――では、札幌の食文化の動向についてはどうでしょう?

西松: 「ライブ感」と「炭火(すみび)」をキーワードにした業態が定着・増加しています。すすきの「炉端焼 くし炉」をはじめとする炉端焼きは、カウンター越しに大きな食材を炭火で焼き上げるライブ感から、インバウンド層を中心に集客を伸ばしています。2026年6月にオープンした「海鮮炉端と焼鳥しのぶれ すすきの店」のように、八角形の入り口など意匠性の高い空間をInstagramで発信し、若い世代や観光客を惹きつける新店舗も出てきています。

  • 創業40年「炉端焼 くし炉」。5代目店主が焼き上げる本格炉端焼き
  • 「海鮮炉端と焼鳥しのぶれ すすきの店」の外観。目に留まる個性的なデザイン

中塚: 札幌独自の食文化がさらに細分化、進化しているところも注目点です。

例えば、飲み会の後に楽しむ「締めパフェ」。北海道では文化として定着していますが、「夜パフェ専門店 ななかま堂 」のように、近年は甘さ抑えめで、美しく華やかな大人向けのメニューを提供する店が増加傾向です。甘いもの好き以外の人の利用も増えて、ターゲットが広がっていますね。

「夜パフェ ななかま堂」の美しいパフェ。左から「孔雀は夜に踊る」(2,880円)、「桃庭-touted-」(2,580円)

「スープカレー」に関しても、ラーメンと同様にだしのベース(系統)による細分化が進んでいます。王道のチキン系「ラマイ」をはじめ、豚骨系「GARAKU」、海鮮・エビ系「スープカレー奥芝商店 実家 」、野菜系「Rojiura Curry SAMURAI.」など選択肢は多岐にわたり、自分好みの、その日食べたい系統から店を選ぶスタイルが定着してきています。

「スープカレー奥芝商店 実家」の「牛肉100%のおくしばーぐカリー」(1,980円)。スープには、毎朝2,000匹以上の甘エビの頭を使用し、職人が時間をかけて煮出す。北海道産の具材が濃厚エビだしスープに溶け合う

5.札幌の飲食の「今と未来」

――最後に、札幌の飲食の「今と未来」について、どう見ていますか。

河合: 伝統的なジンギスカンやラーメンにとどまらず、スープカレー、締めパフェ、そして先住民族であるアイヌ文化を意識した料理など、独自の食文化を創造し進化させている街の一つだと思います。その札幌が、今回の札幌駅周辺の再開発により、歴史的な文化と近未来的な街並みが融合した魅力的なエリアへと変わりつつあります。多様な食の選択肢を楽しめる街として、今後の展開が楽しみです。

西松: 札幌の食の魅力はもちろんですが、それぞれの飲食店がこだわりを持って提供されている料理や食材のすばらしさを、もっと多くの人に知っていただきたいですね。飲食店が活気づき、お客様が満足して帰られること、その積み重ねが北海道全体の活性化へつながると信じています。

中塚: 札幌は地元に住む私たちでさえ、改めて「食の街」だと実感するほどおいしいものが集まっている場所です。飲食店が元気になれば、街全体がより明るく魅力的な場所に変わっていきます。食の現場を支える一人として、少しでもそのお手伝いをできればと思っています。

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