更新日:2023.12.8
居酒屋開業を成功させるには綿密な計画と明確なコンセプト、効果的な販促がカギ
居酒屋は「幅広い客層を取り込める」「さまざまな料理が提供でき、柔軟にメニュー変更ができる」「他の業態と比べて利益率が高い」などのメリットがある。一方で、開業にあたってコンセプトの決定や開業資金の準備、物件取得、必要な届け出や効果的な販促方法など、気を付けておかなくてはらなないことも多い。これから居酒屋を開業したい人に向けて、必要な開業資金やコンセプト決め、物件取得、メニュー開発についてなどの居酒屋開業の流れと、成功・失敗しやすい居酒屋の例などもあげながら繁盛のポイントを紹介する。
※本記事の情報は記事作成時点のものであり、現時点での情報の正確性を保証するものではございませんので、ご注意ください。
目次
・居酒屋開業を成功させるには綿密な計画と明確なコンセプト、効果的な販促がカギ
・居酒屋開業の流れ
(1)開業資金
(2)コンセプトを決める
(3)物件取得
(4)必要な資格と届け出
(5)メニュー開発
(6)集客のための販促
・居酒屋開業のメリットとデメリット
・成功しやすい居酒屋の特徴
・失敗しがちな居酒屋の特徴
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居酒屋開業の流れ~コンセプト決めから物件取得、メニュー開発、販促まで
(1)開業資金:初期投資額の目安は60~80万円×坪数。半年分の運営資金も準備しよう
居酒屋を開業するために、まずは事前にまとまった資金を用意しておきたい。一般的な飲食店の初期投資額(物件取得費・設備投資費)の目安は、60~80万円×坪数。ただし、一等立地では物件取得費が高額になったり、物件がスケルトンか居抜きかによって厨房などの工事費がかさむ可能性もある。予算オーバーしないように、事前に無理のない出店計画を立てておきたい。
物件取得費には、保証金(敷金=家賃の6~12カ月分程度)、礼金、仲介手数料、前払いの家賃が、設備投資費には内装・外装工事費、厨房機器・設備費、備品・消耗品費が含まれる。これらの費用を抑えるには、店の規模を小さくしたり、居抜き物件(内装や厨房・空調設備などが残っている物件)を選んだり、調理台やシンク、フライヤー、冷蔵庫などの機器を中古品やリースでまかなう方法がある。
このほか運営資金(毎月の運営にかかる資金)として、家賃や水道光熱費、人件費、原材料費、消耗品費、広告宣伝費などがかかる。店舗が軌道に乗るまで、最低でも半年分の運営資金を用意しておきたい。居酒屋の立地や店の規模、スタッフの人数によって変動するが、家賃は売上の10%以下、人件費や原材料費はそれぞれ30%程度が目安となる。
開業資金の調達は、政策金融機関の1つである「日本政策金融公庫」を利用するのが一般的だ。ほかにも地方銀行・信用金庫からの融資や、自治体の助成金・補助金も活用できるケースもあるので、出店を希望するエリアで調べるとよいだろう。
(2)コンセプトを決める:明確なコンセプトがあれば、ターゲットや物件、立地が決まる
居酒屋にとってコンセプトはとても重要だ。店の柱になるものであり、どんなコンセプトにするかによってターゲットや物件、立地、店舗デザインやメニューなどが決まってくる。アットホームな大衆居酒屋、高級志向の個室居酒屋、肉料理やワインがメインの洋風居酒屋など、さまざまなコンセプトの居酒屋があるが、強みとなる明確なコンセプトがないと、周辺の店との差別化がしにくくなり、人々の印象にも残りにくい。
コンセプトを決める際には、外食のトレンドや近年の居酒屋の傾向、希望するエリアにどんな客層がいるか、どんな飲食店が多いのかなど、事前に情報収集することが大切だ。例えば最近では「ネオ居酒屋」「ネオ大衆酒場」と呼ばれる、昔ながらの大衆居酒屋のよさを取り入れながら、店舗デザインやメニューを現代風に洗練させた居酒屋が人気を集めている。ほかにも寿司酒場や天ぷら酒場、韓国・台湾系居酒屋など、専門メニューに特化した居酒屋も人気となっている。安易にトレンドを追うことはおすすめしないが、どんな要素が人々に受けているのかをよく分析しておきたい。
コンセプトを固めるために「誰をターゲットに、どんなメニューを、どんなエリアで、いつ、どのような形で提供すれば喜ばれるか」を客の目線で具体的に考えることも大事。利用シーンやニーズを想定した上で、立地や物件、メニュー、客単価、運営方針など、徹底的に具体化しよう。
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(3)物件取得:居抜き物件はレイアウト変更可否や設備などに注意!
物件を決める際は、自店のコンセプトやターゲットに合った立地・物件かどうかを吟味したい。例えば回転率の高い立ち飲み居酒屋なら、閑静な住宅街よりも人通りの多い駅前が適しており、規模は狭くてもよいだろう。一方、落ち着いて過ごせることが売りの予約メインの個室居酒屋なら、人通りや路面にこだわらなくてもよいが、ゆったりと過ごせる空間が必要だ。コンセプト次第で、立地や物件の優先順位はおのずと決まってくる。
家賃も気を付けたいポイント。居酒屋経営において、家賃をはじめとする固定費を抑えることが安定的な経営につながってくるため、予算オーバーにならないように物件を選んでいこう。また、初期費用を抑えられて工期も短縮できることから、居抜き物件が人気を集めている。しかし、レイアウトやデザインが変えられない、設備が劣化していて予想以上に修繕費用がかかるといったデメリットもあるので注意したい。ガスや水道、電気などの容量が居酒屋開業に必要な基準を満たしているかもよく確認しておこう。
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家賃の目安として、東京都内の居抜き物件の坪単価を調べた(2022年4月現在)。渋谷区・恵比寿駅から徒歩3分のビル1階にある物件は坪単価4.5万円前後、徒歩1分のビル4階の物件は坪単価2.9万円前後となっている。東京郊外・八王子駅から徒歩3分のビル1階の物件では坪単価1.6万円前後だ。開業資金でも触れたが、家賃は売上の10%以下が望ましいので、それを踏まえながら物件選びをしたい。
(4)必要な資格と届け出:「食品衛生責任者」「飲食店営業許可」が必須
居酒屋開業にあたっては、「食品衛生責任者」の資格が必要だ。1店舗ごとに最低1人置く必要があり、栄養士や調理師などの資格がない人は、全国の食品衛生協会が定期的に開催している「食品衛生責任者養成講習会」の講習を1日受けて取得しておこう(費用は地域によって異なるが、一般的に1万円程度)。
また、「飲食店営業許可」も必要だ。店舗完成の2週間ほど前までに、保健所に店舗の完成図面を提出する。保健所からOKと判断されたら店舗検査が行われ、合格なら営業許可証が交付される。
居酒屋の収容人数が30名超の店舗は「防火管理者」の資格が必要なので、講習を受けて取得しよう。深夜0時過ぎに営業する場合は「深夜酒類提供飲食店営業届」の申請も必要になる。
(5)メニュー開発:魅力あるラインナップにしながら、利益も考えたメニュー構成を
メニュー開発は、店のコンセプトとターゲット層のニーズに合うものにしたい。調理をする人の技術や手間、原価率、仕入れ先なども検討し、メニューを決めよう。
原価率は「原材料費÷売上高×100」で計算できる。仕入れに200円かかり、800円で提供した場合、原価率は25%となる。原価率のおよその目安は30%だが、「原価率が高く集客力・満足度の高いメニュー」「すぐに提供できて原価率が低いメニュー」など、魅力あるメニューのほか原価を調整できるメニューなどバランスよく取り入れて、しっかりと利益を確保できるメニュー構成にしたい。
メニュー開発においては原価計算や味の追求だけでなく、見た目や提供時の演出なども重要。話題のトレンドメニューを参考にして開発すれば、集客にも効果的だ。ビジュアルや提供方法が目を引く“SNS映えするメニュー”も意識すると、情報が拡散され、集客につながるケースも多い。
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メニュー数は多ければ来店客の選択肢が広がり、使い勝手が良くなるだろう。一方で、オペレーションが煩雑になったり、食材ロスが出るというケースもあるので気を付けたい。全体のバランスを見据えながらラインナップを決めるとよいだろう。
(6)集客のための販促:チラシやグルメサイト、SNSなどを使って店の魅力を発信!
コンセプトやターゲットを明確化し、こだわりのメニューを作ったとしても、販促をしなければなかなか集客には結びつかない。新規オープン時は、看板やのぼりの設置、チラシの配布などで近隣住民や周辺で勤務するビジネス層、通行人にアピールする販促が効果を発揮する。
また、グルメサイトでの情報発信は、エリアや業態で店舗検索するユーザーに広くアピールできるという利点がある。情報を充実させて、店の魅力をしっかりと発信したい。InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSも活用したい。画像や動画を使って店のメニューや売りをアピールでき、ファンづくりにも有効だ。そのほか、来店時にクーポンを配布したり、メンバーズカードなどの会員制度の実施、LINE公式アカウントの登録促進や情報発信なども行って、リピーターの獲得やファンの囲い込みにつなげたい。
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居酒屋開業のメリットとデメリット
さまざまな人を集客できるのがメリット。一方で競合も多く、コロナへの対応も
居酒屋のメリットは、ターゲット層が幅広く、一人客からグループ客、学生からシニア層まで年代や利用シーンを問わずさまざまな人を集客できる点だ。専門店とは異なり、さまざまなジャンルの料理を扱うことができ、柔軟にメニューを変更できることも利点と言えよう。
また、他業態に比べ利益率が高いこともメリット。特にドリンク類は利益率が高く設定でき、例えばハイボールやウーロンハイ1杯あたりの原価は50円前後。1杯500円で提供すれば、原価率を1割に抑えることができ、その分ほかの食材に原価をかけることが可能だ。
一方で、デメリットもある。他業態に比べ、競合が多く差別化が求められる。また、現在はコロナ禍で休業や時短営業の要請や酒類提供自粛などへの対応が求められることもあり、売上が不安定になりがち。それらを凌駕するだけの魅力ある店づくりが大切だ。
成功しやすい居酒屋の特徴
1.綿密な出店計画を立てている
成功しやすい居酒屋の特徴は、まず「綿密な出店計画」を立てている店だ。例えば東京・門前仲町にある中華居酒屋は、10坪未満・20席の小規模な店舗で初期投資や運営費を抑えるとともに、原価率や損益分岐点が低い中国料理を選択。本場の名物料理を提供しながらも、ドリンクで全体の原価率を調整して客の満足度を高めている。その結果、オープン後の早い段階から経営は安定。常連客を多数獲得している。
【詳しい内容はこちら】
出店・運営費を抑え、戦略的な業態と料理でリピーターを獲得!
2.効果的な販促を行っている
コロナ禍では、集客のための効果的な販促も欠かせない。緊急事態宣言中の2021年3月にオープンした東京・錦糸町にある居酒屋では、オープン1カ月前からInstagramなどSNSでの発信に注力。毎日更新して広くアピールした結果、多数のフォロワーを獲得して一躍人気店に。最高月商は970万円(坪月商53万円超)を記録している。
【詳しい内容はこちら】
オープン前からInstagramで発信し、坪月商30万円超えの店に!
3.「目玉メニュー」を設置している
集客力の高い「目玉メニューの設置」も大事なポイントだ。2020年7月にオープンした大阪の大衆酒場では、思わず写真を撮りたくなるユニークな「創作てんぷら」やカラフルなフルーツサワーなどをラインナップ。SNS映えするメニューとして情報が拡散され、現在では坪月商57万円を記録する人気店となった。
【詳しい内容はこちら】
インスタ映えする独創的メニューを拡散し、坪月商57万円を実現!
失敗しがちな居酒屋の特徴
人員不足、無理な資金計画、販促の怠りなどが原因に
一方、失敗しやすい居酒屋の特徴として、人手不足によってサービスの質が低いことがあげられる。いくら料理に力を入れていても、来店客の要望に応えられるスタッフがいなければ、顧客満足度は上がらず、リピートにつながらないばかりか悪評につながる可能性も出てくる。オープン前からオペレーションを含め、スタッフが何人必要かをしっかりと見極めて確保したい。
また、無理な資金計画も失敗のもとだ。予算をオーバーしているのに「好立地だから」という理由で物件を決めてしまい、固定費で首が回らなくなるケースもある。出店費用や運営資金が想定よりもオーバーしそうなら、潔く諦める判断が必要になる。開業前に念入りな資金計画を立てておこう。
加えて、競合が多い居酒屋は販促が欠かせない。販促を怠ったために、店の存在に気付かれないケースも多い。チラシやDMの配布、ホームページやグルメサイト、SNSでの情報発信などさまざまな手段があるので、店のターゲット層に合う販促に取り組むことが大切だ。
居酒屋は幅広い客層が狙える一方で、競合も多いため、開業までしっかりと計画を練ることが重要。今までのポイントを生かして開業させ、ぜひ繁盛につなげていただきたい。