さつま酒飯店 和総
鹿児島 天文館 居酒屋
生産地や蔵元に足を運び、鹿児島食材の魅力を発信
「鹿児島のよかもん尽くし」をコンセプトに2016年3月、鹿児島・天文館エリアにオープンした居酒屋。オーナーの鳥越慎一氏は、自らを「好奇心のかたまり」と称し、鹿児島県内の農家、蔵元、漁港などを巡って県産食材の魅力を自身の目で確かめ、仕入れルートも築いた。「南北約600㎞に広がる鹿児島県は、北薩・南薩、薩摩半島・大隅半島、種子島・屋久島・奄美地方など、エリアによって水も土も違い、それぞれに個性的でおいしい食材がある宝の山。しかし、地元の人々にとっては身近すぎて、その価値は見過ごされがち」と鳥越氏。また、世界一大きい大根といわれる桜島大根は「価格が高いため、地元の人々が食べる機会はほとんどなく、もったいない」と言う。
そこで、県内各地から「これは」と感じた食材を集め、まずは地元の人々に楽しんでもらえるようにした。魚介は垂水のカンパチ、長島のブリとサバ、枕崎のカツオ、屋久島のトビウオなど、県内各地の漁港から旬のものを直送してもらい、刺身や薫製、塩焼きなどで提供。また、鹿児島ブランドの知覧鶏は、炙り刺し、鉄板焼き、ぼんじりのタレ焼きなども好評だ。そのほか、茶美豚(ちゃーみーとん)や黒豚、霧島の茶、与論島のもずく、各種野菜や柑橘類も仕入れている。「食材の90%は鹿児島県産」と鳥越氏。加えて、「必ず現地に足を運んで、どんな人がどんな想いで生産しているのかを体感し、それを丸ごとお客様に届けたい」と熱く語る。そのため、店のスタッフとともに桜島大根の収穫を行ったり、焼酎の仕込み作業の1つである「芋切り」を手伝ったり、お茶農家やみかん農園を訪れたりして、食材の背景にあるストーリーを積極的に学び、接客に生かす。コースでも「かごんま食散歩おまかせコース」(飲み放題付き4,300円)などを作り、県産食材の魅力を前面にアピールしている。
ドリンクでは特に焼酎に力を入れる。「オープン当初、焼酎について何も知らなかった」と話す鳥越氏は、複数の蔵元に依頼して生産を手伝わせてもらい、焼酎の魅力を体で覚え、蔵元との信頼関係を構築していった。今では県内全域から200種類の焼酎を仕入れ、定員51人の「焼酎の会」を月1回開催。蔵元を招いて様々な話をしてもらい、蔵元自慢の焼酎と、それに合う料理を提供して、焼酎の魅力を伝えるとともに店のファンを増やしている。
地元ビジネス層と出張客を獲得。オンラインでの物販も計画
客層の中心は、40代以上の地元ビジネス層だ。企業の経営者のほか、官公庁の職員も多く、女性が6割を占めている。また、県外からの出張客が鹿児島産の食材や郷土料理を求めて来店するケースも少なくない。鳥越氏は「どうしたらお客様に喜んでもらえるかを常に考えて、地元ならではの料理、充実した焼酎のラインナップ、接客の質の高さの3本柱を軸に店作りを行ってきました」と振り返る。客数は順調に伸び、2019年4月には2号店を出店。社員を増やして接客を強化し、平日も満席になる人気店に成長している。
ぐるなびには、オープン半年後に加盟。2019年秋に店舗ページを刷新したところ予約数が伸び、認知の拡大を実感している。また、食材の入荷状況や「焼酎の会」の情報などを、FacebookやGoogleマイビジネスなどで発信し、リピートにつなげている。
「今後の事業展開は大きく3つ」と鳥越氏。1つは、店で提供している県産食材や焼酎を販売する「和総オンラインショップ」(今年開設予定)。2つ目は、その販売を実店舗でも展開する「和総アンテナショップ」の開店。3つ目は樽熟成の焼酎を使ったハイボール専門店を出店すること。これらを通して、鹿児島の食材と焼酎をさらにアピールし、生産者と消費者の結びつきを深めていきたいと考えている。
ここがポイント!
鹿児島県鹿児島市東千石町7-12 ニイムラビル1F
https://r.gnavi.co.jp/dh1pg52j0000/