坪月商32万円! 餃子を看板に、話題になる要素を散りばめ女性が集まる酒場に

福岡・大名にある餃子酒場「餃子のラスベガス」は、モチモチ&ジューシーな餃子を看板に、1日約130人が来店。自家製瓶詰めドリンクを開発するなど、話題にしたくなる要素を随所に散りばめ、集客を図っている。

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餃子のラスベガス

福岡 天神・大名 居酒屋

「街に必要とされる店」を追求して業態を開発

 九州最大の繁華街、福岡・天神の西に広がる大名エリアにある餃子酒場「餃子のラスベガス」。店名のとおり、手作りの餃子を看板にしており、10~20代の女性やカップルを中心に集客。26坪47席で、客単価2,500円でありながら、坪月商は約32万円の大繁盛店だ。

手前にあるヒョウタン型の大テーブルは賑わいを演出する工夫の1つ。グループの人数によって仕切りを変え、効率よく配席できる利点もある。正面奥が系列店のビストロ「Yorgo(ヨルゴ)」の入り口

 オープンは2018年7月。「餃子のラスベガス」のフロア奥には、系列店であるビストロ「Yorgo(ヨルゴ)」があり、1つの物件に2つの店舗が入る珍しい造りとなっている。「Yorgo」は、近隣の警固で2014年にオーナーの川瀬一馬氏が独立・開業した1号店。「『Yorgo』が手狭になったので20坪ほどの移転先を探していたところ、50坪のこの物件を見つけました。ちょうど2店舗目の物件も探していたので、2業態併設の新しいスタイルに挑戦しました」と川瀬氏は経緯を語る。「Yorgo」はゆったりと食事が楽しめるため、客層は30代以上、客単価は6,500円。2店の業態やメニューは全く異なるが、キッチンはつなげ洗い場を1つにしており、食材を共有したり、スタッフが行き来できるなど、メリットも多いという。また、2店をはしごする人もおり、川瀬氏は「両店舗の認知が広まるなど、相乗効果が高いと感じています」と話す。

 2号店を出店するにあたり、川瀬氏は「店長やスタッフのキャラクターに頼らず、店そのものに魅力があることが大前提」であるとともに、「街に必要とされる業態であることが重要」と考えた。もつ鍋やラーメン、スパイスカレーなども浮かんだが、「餃子は好きな人が多い一方で、博多では老舗の『一口餃子』や町中華のイメージが強く、開発の余地が大きい」(川瀬氏)と、餃子を主力にした業態で勝負することにした。

皮も餡も店で手作り!必要な工程にしっかり手をかける

オーダー率100%の「焼餃子」(手前)と「水餃子」(奥)。モチモチでジューシーな味わいを目指した。付けタレとして(左から時計回りに)「納豆ダレ」、「パクチーダレ」、「麻辣ダレ」も用意し、味変が楽しめる

 そこで、餃子の開発に力を注ぐ。皮は独自にブレンドした粉を製パン機で練り、オーダーが入ってから卓上製麺機で伸ばし、モチモチ食感に。餃子の餡はジューシーさを追求し、ひき肉は使う分だけを、毎日店でひいて仕込み、注文が入るとカウンター前のキッチンで包む。「脂でジューシーさを足すのではなく、肉が保つ水分で本来の肉汁を味わってもらいたい。そのためにはドリップが出ないよう、新鮮な肉を使うことが不可欠です。品質を均一にするために機械化はしますが、必要な工程にはしっかりと人の手をかけています」と川瀬氏は言う。

餃子に使うひき肉は店内で毎日ひいて餡を作る。皮も手作り。注文が入ってから包むライブ感も好評。来店客が自分で包むと50円引きになるという遊び心もある
  • 「焼餃子」と「水餃子」のほか、“変わり餃子”2種を月替わりで提供。「半熟海苔玉」(180円)、「砂ずりポン酢」(530円)なども人気
  • 唐辛子、山椒、ゴマなどをブレンドした「粉ラー油」。液体より辛みの調整がしやすく、オリジナルで開発

 そうして生まれた看板の「焼餃子」と「水餃子」(各6個540円)は、モチモチ&ジューシーな仕上がりで、オーダー率は100%。また、季節感のある素材を使った“変わりダネ”の餃子を、月替わりで2種類ラインナップ。そのほか、「納豆ダレ」(110円)、「パクチーダレ」(220円)など付けダレを3〜5種類用意し、味の変化も楽しめるようにしている。さらに、ラー油は「お客様が辛さを調整できるよう粉末の『粉ラー油』を開発しました」(川瀬氏)というこだわりだ。

自家製ドリンクをオリジナルの瓶詰めドリンクとして提供

自家製ソフトドリンクをロゴ入り瓶に充填し、グラスとともに提供するスタイルが大好評! 左から炭酸、レモン、グレープフルーツ、キウイ、クラフトコーラ、せとか果汁を使ったみかんソーダ

 一方、ドリンクは「1杯をいかにおいしく飲んでもらうか」を考え、自家製ソフトドリンクをそろえる。店のロゴ入り瓶や王冠(栓)を作成し、その瓶に自家製のオリジナルドリンクを充填し、グラスとともに提供。サワーやハイボールの割材としても提供しており、話題性は抜群だ。「ドリンクが自家製というだけでなく、オリジナルの瓶に詰めるところまでやっているから、お客様に『おもしろい』と言っていただけるのだと思います」(川瀬氏)。

  • ドリンクでは「1杯の価値」を追求。サワーはグラスにアルコールを入れて提供し、来店客に自家製瓶詰めドリンクで割ってもらう。ビールも瓶ビールのみを提供し、統一感を出している
  • オリジナルグッズも作成。来店客に無料で配るほか、5,000円以上で1組1回ルーレットを回してもらい、景品として提供することも

 さらにオリジナルグッズも作成して来店客に贈呈。こうしたさまざまな“仕掛け”はSNSで拡散され、これを見た人が来店するなど、集客につながっている。今では1日約130人が来店する繁盛店に成長した一方で、川瀬氏は「“仕掛け”が単なる情報として消費されない工夫も不可欠。店からの情報は最小限にし、お客様が人に伝えたくなるような体験を用意することが大事だと考えています」と語る。

「街に長く愛される店」として地域貢献活動も

接客や餃子の包み体験を盛り込んだ職業体験イベント「キッズベガス」を、2020年1月から開始。地域貢献の一環として喜ばれている

 そのほか、地域への貢献活動も行っている。子どもに店員になってもらい、家族を迎えて餃子包みなどの職業体験を行うイベント「キッズベガス」を2020年より開始。今年1~2月の緊急事態宣言下では、休業補償金の過剰分を材料費に充て、1日に餃子100人前を20日間無償で配る「餃子の大盤振る舞い」というイベントを行った。「売上や利益だけを求めるのではなく、街に長く愛されるための活動を続けたいと思います」(川瀬氏)。

  • スタッフが作成した「キッズべガス」のマニュアル。保護者用、子ども用があり、回を重ねるごとに充実した企画に成長している
  • 今年1~2月に行った「餃子の大盤振る舞い」では、餃子100人前を20日間無償で配布。メディアでも取り上げられた

 2021年5月には3号店として、だしをテーマにした小料理店「にるご」をオープン。今後は、出店数にはこだわらず、地域に求められ愛され続ける店を展開していく考えだ。

餃子のラスベガス(福岡 天神・大名)
福岡県福岡市中央区大名1-2-15 GF SQUARE大名1F
2018年7月、福岡・赤坂駅から徒歩9分のところにオープン。看板の餃子のほか、小皿料理が楽しめる。フロアの奥に併設されたビストロ「Yorgo」と合わせた月商は1,600~1,700万円。
オーナー 川瀬 一馬 氏
神奈川出身。専門学校を経て、東京のフランス料理店で勤務。1年間渡仏し、その後東京の和食店で日本料理と経営を学び、2014年福岡で独立を果たす。