伝統を残しつつ、若者・女性を掘り起こす新モデルを展開
ダイキチシステム株式会社は、「やきとり大吉」という1つのブランドを磨き続け、その全てが個人のFC店舗で、直営店は過去1度も出したことがないという珍しい会社だ。創業者の辻 成晃(しげあき)氏は、1977年に前身の飲食界情報管理センターを立ち上げ、「150万円で経営者になれる」という独自の開業システムで店舗数を増やしてきた。現在の社長は、2023年11月から就任しているサントリー出身の近藤 隆 氏。サントリーからダイキチシステムに出向して、辻氏の薫陶を受けつつ、新しい時代に合った「やきとり大吉」の価値を模索してきた。
そんな彼に、これまでの歩みを聞きつつ、新モデル「白い大吉」や、既存ブランド「赤い大吉」のリブランディングなどについて伺った。
目次
・直営店を持たない異質な事業モデルに衝撃!
・コロナ禍で加盟店の窮地を救ったのは常連だった
・創業50周年に向けてリブランディングに着手
・鳥貴族グループ参入を強みに2030年700店舗へ
・「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」
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直営店を持たない異質な事業モデルに衝撃!
――ダイキチシステムとはどのような形で出合ったのですか?
大学卒業後、サントリー株式会社に入社し、1994年から外食チェーンを担当する市場開発本部でダイキチシステム株式会社(以下・ダイキチ)の担当を任されたんです。当時、ダイキチはサントリービールを日本で最も多く販売している飲食チェーンで、20代の私にとっては重責でした。そこで、ダイキチの創業者・辻成晃さんと出会ったことが、私の人生を大きく変えることになりました。
当時のダイキチの印象は、とにかくパワフル。外食チェーンにはさまざまな形態がありますが、ダイキチは直営店を1店舗も持たず、しかもFCは法人ではなく個人。その異質さに衝撃を受けました。1994年には500店舗ほどでしたが、数年で1,100店舗を超えるまでに拡大。そのすべてが個人経営で、すさまじいパワーを持った会社だと感じました。
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ダイキチは、1977年の設立当時、「飲食界情報管理センター」という社名でした。お金はないけれど自分で商売をしてみたい。そんな情熱を持った若者たちを応援するため、お金を持つ資本家とマッチングさせ、夢の実現を後押しする仕組みを考えたのが始まりです。この仕組みが自分の店を持ちたいと願う人の心をつかみ、多くの人が集まってきたのです。1990年代半ばにはバブル崩壊のあおりを受けたリストラ組も加わり、爆発的に店舗数が増えていきました。
「やきとり大吉」はFCブランドでありながら、串打ちはセントラルキッチンではなく各店舗で行っています。また、接客に細かいマニュアルはなく、店主のやり方・キャラクターを大切にしているのも特徴です。料理も、15年ほど前から店ごとのオリジナルメニューを認めるようになりました。本部がメニューの詳細を確認してOKが出れば、最大15品まで提供することが可能です。こうして、店主の串打ちの技術や接客スタイル、メニュー開発のアイデアによって、店ごとに個性が全く異なるのが「やきとり大吉」の魅力ですし、地域の方々に愛される理由だと考えています。
コロナ禍で加盟店の窮地を救ったのは常連だった
――2019年にダイキチの取締役に就任されますが、その経緯は?
1994年から6年間ダイキチの担当を務めた後、別の部署に異動しましたが、2008年からはサントリーに籍を置きながらダイキチに出向し、より深く経営に関与するようになります。その後、株式会社プロントコーポレーションの取締役を経て、2019年にダイキチの取締役に就任しました。
私に白羽の矢が立ったのは、創業者が経営を担っていた時代から、私がダイキチを見続けてきたからと考えています。「やきとり大吉」は全国的な知名度があり、創業者の経営手法も優れていました。ですが、変化する時代に合わせて、新しいスタイルを模索すべきタイミングが来ていたのかもしれません。会社の良い部分は大切にしつつ、新しい時代に対応できるビジネスモデルを構築していくべきだろうと。そこで、昔のダイキチを知っている私に変革が託されたのだと思います。
取締役就任の翌年にコロナ禍が発生し、会社としてもFC加盟店をいかに守るかが課題となりました。ダイキチは加盟店から定額のロイヤリティ-を支払ってもらうビジネスモデルのため、なんとか持ちこたえていましたが、個人経営の店主さんにとっては死活問題です。そこで、テイクアウト需要を掘り起こすなど、さまざまな販促施策でサポートしました。
ただ、この時にそれぞれの店舗を救ってくれたのは常連のお客様たちでした。「やきとり大吉」は、住宅地に立地している店舗がほとんど。心配して顔を出してくれる常連のお客様が多く、加盟店オーナーの方々からも「常連に愛される店づくりを続けてきたことが窮地で生きた。やきとり大吉をやっていて本当に良かった」という多くの声をいただきました。その後はコロナ禍の影響が薄まるとともに順調に業績が回復し、2024年はコロナ禍前の水準まで売上が戻ってきています。
創業50周年に向けてリブランディングに着手
――2022年9月に1号店を出店したリブランディング店「白い大吉」の狙いを教えてください。
コロナ禍を理由にした閉店は一軒もなかったのですが、それでもここ数年は、店舗の純減傾向が続いています(2024年8月末現在491店舗)。この主な原因は「店主の高齢化」です。
1990年代後半、爆発的に店舗数が増えた頃、40~50代で開業する人たちがたくさんいました。その人たちがちょうど60~70代に差しかかってきています。ご子息への事業継承なども後押ししていますが、すべて上手くいくわけではありません。このまま店舗数が減少していけば「やきとり大吉」のブランド自体に元気がないと思われかねない。そこで、こうした状況を変えるため、新しい取り組みを行うことにしました。その一つが「白い大吉」の開発だったのです。
当社は2027年に創業50周年の節目を迎えますが、これを「第二の創業」と捉え、ブランドの活性化を図りたいと考えてきました。そこでまず1万人を対象にしたWebアンケートを実施。その結果を見てみると「やきとり大吉」の認知度は高い一方で、「行ったことがない」「店に入りにくい」という声が予想以上に多かったのです。
ひと昔前は、店内外に電柱と枕木を配した郷愁を誘う昔懐かしいスタイルが人気を集めましたが、特に若い世代から「店の中がどうなっているのか分からない」という意見が数多く寄せられました。そこで第二の創業に向けたリブランディングの一環として、店内の様子が分かりやすく白と木目を基調としたモダンな外観の「白い大吉」を開発したのです。
2022年9月にオープンした1号店を皮切りに、現在は9店舗の「白い大吉」を展開しています。王道のやきとりメニューに加え、「味自慢!ささみかつ」(418円)、「鶏白湯ラーメン」(638円)などの1品ものを追加。若い世代と女性を取り込むのが狙いでしたが、既存店に比べ20代の比率が大幅に増え、20~30%だった女性客は、全9店舗で50%に達しています。客単価は既存の「赤い大吉」が2,900円であるのに対し、「白い大吉」では3,200円程度まで増加。今後は全国の主要都市に出店し、さらなる検証を進めていければと考えています。
鳥貴族グループ参入を強みに2030年700店舗へ
――今後の展開と展望について、お聞かせください。
2023年1月には、鳥貴族ホールディングス(現エターナルホスピタリティグループ)の傘下に。そして同年11月には社長に就任しました。鳥貴族のグループに入ったことは話題を集めましたが、鳥貴族とは出店エリアも異なりますし、ネガティブな影響は出ていません。むしろ親会社が同業であることは、今後の大きな強みになると期待しています。すでに串の共同購入などを始めており、さまざまな形でシナジーを発揮していければと思っています。
私の社長就任については、改革をさらに推し進めてほしいという期待の表れだと受け止めています。そこで新たに取り組んだのが赤い大吉のニューモデルの開発です。2024年8月には、赤い大吉の良さを残し、白い大吉の入りやすさを取り入れた「新・赤大吉」のモデル店を東京・平和台にオープンしました。新・赤大吉の展開は、既存店の改装をメインに考えています。長らく使用してきたブランドロゴと看板を、柔らかく親しみが感じられるデザインに刷新。創業から続くアットホームな雰囲気を残しつつブラッシュアップし、令和の時代も長く愛される店づくりを目指していきます。
今後の目標は、白い大吉を直近2~3年で30~50店舗ほど出店していきたいと考えています。確かな手応えがあれば、さらなる拡大を目指します。同時に、既存の赤い大吉から新・赤大吉への改装も進め、好評であれば新・赤大吉の新規出店も模索していきます。これまでの伝統を継承しつつ、時代のニーズに合わせた新たなスタイルを提示することで、「2030年7月末までに700店舗」という目標を達成したいと思います。
リーダー×一問一答
■経営者として一番大切にしていること
叶えるという強い思い
■座右の銘
凡事徹底
■尊敬している人
辻成晃(ダイキチの創業者)
■COMPANY DATA
ダイキチシステム株式会社
大阪市中央区淡路町4-2-13 アーバンネット御堂筋ビル20F
https://www.daikichi.co.jp/
設立:1977年
ブランド数・店舗数:1ブランド、491店舗(2024年8月末時点)
従業員数:社員10人
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