ソーシャルイノベーションカンパニーとして社会課題に挑む!
「塚田農場」「四十八漁場」など、「生販直結」のビジネスモデルを構築し、飲食業界の中で際立った存在感を見せる株式会社エー・ピーホールディングス。その傘下である株式会社エー・ピーカンパニー(以下、AP)の代表取締役社長を2023年11月から務める横澤 将司 氏は、岩手・陸前高田市出身で、東日本大震災をきっかけに「故郷のために何かしたい」という思いから入社。漁業の現場とつながって「四十八漁場」を繁盛ブランドに成長させるなど実績を残し、代表に就いた後も新業態の開発など次々と新たな手を打っている。水産業などが抱える社会的な課題を解決するソーシャルイノベーションカンパニーを目指すという横澤氏にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。
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目次
・20代半ばで飲食の道へ。本で得たノウハウを実践して成功!
・「故郷のために何かしたい」という思いを胸に転職
・店の業績アップが水産業の現場を盛り上げることにつながる
・食材と産地に向き合い、業態をリニューアル&新規開発
・「未利用魚」→「魅了魚」がイノベーションの第1歩
・「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」
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20代半ばで飲食の道へ。本で得たノウハウを実践して成功!
――自衛隊員、劇団員など異色の経歴をお持ちです。飲食業に携わるきっかけは?
小中学校では野球、高校では陸上競技に打ち込み、「大学には陸上競技で進学したい」と考えていたのですが叶わず、経済的・精神的自立のため陸上自衛隊に入隊。3年務めて退職し、上京して役者など好きなことをしていました。
そんな中で、20代半ばごろに入職したのが、株式会社平田牧場がFCで経営していた「牛角」。「飲食店の店長とは?」とか「売上を上げる方法」といった本を購入して、読みあさりました。書いてあることを素直に吸収して行動に移していたら、売上が数カ月で2倍に。平田牧場は6次産業のモデル企業と言われ非常に魅力的な仕組みを作った会社で、その後に任された自社業態「とんかつと豚肉料理 平田牧場」は日本橋、六本木、仙台などに次々と出店しました。今振り返ると、そのときの仕事内容に合わせて関連する本を読み、自分がいいと思った考え方やノウハウをつかんで実践することが、成果につながったんだと思います。成果が出ることで面白いと感じましたし、自分は飲食業に向いているとも思いました。
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「故郷のために何かしたい」という思いを胸に転職
――そんな中、東日本大震災が起こり、故郷の陸前高田市は大きな被害を受けました。
震災当日、私は東京にいて、故郷の誰とも連絡がつかない状態。友人の助けを借りてなんとか実家にたどり着いたのは、震災から5日後のことでした。家族の無事がわかり、電気も水もない中で、みんなで食事をした夜のことを今でも鮮明に覚えています。
この時から「故郷のために何ができるか」を考えて仕事をするようになりました。この思いを実践できる場所を新たに探そうと決意して、平田牧場を退職。求職活動をする中で出合ったのがエー・ピーホールディングスでした。宮崎の生産者から地鶏を直接購入する「生販直結モデル」を構築し、6次産業化を推進していたから。この会社であれば、同じことを漁業でもできるはずだし、それが故郷の活性化にもつながると考えたんです。
入社後、最初に配属された「塚田農場」では1カ月で店長、2カ月でスーパーバイザー、3カ月でエリアマネージャーと駆け足で階段を上っていきました。同時に、専務や副社長らに、週1ペースで自分の“漁業の6次産業化構想”についてプレゼンし続けていました。すると、ある日、出張に同行するように言われ、米山 久 社長(当時、現・株式会社エー・ピーホールディングス代表取締役会長 兼 社長)ら幹部とともに陸前高田市に行くことに。現地の漁師さんとの打ち合わせが始まり、魚の扱い方や輸送方法などの仕組みがサクサクと決まっていきました。そのスピード感に驚かされましたし、「この会社なら自分がやりたいことが実現できる」という思いを強くしました。
店の業績アップが水産業の現場を盛り上げることにつながる
――こうした取り組みが、「四十八漁場」の成長につながるんですね。
「四十八漁場」の改革に着手したのは2012年ごろ。当時、業績があまりよくなかったことから、評判やクチコミをインターネットで検索してみると、SNS映えするメニューの情報が多く、魚介の新鮮さや生産者とのつながりに関するものは全くと言っていいほどありませんでした。つまり、「四十八漁場」が持っている“本当の価値”がお客様に伝わっていなかったのです。
私たちがお客様に届けたいのは「新鮮でおいしい魚が食べられること」「その背景に漁師や生産地の苦労や熱い思いがあること」です。これらをSNSやイベントなどで発信するなどブランディングに力を入れたことで、1年後にはネット検索で出てくる情報も「私たちが思われたい姿」が増え、それにともなって売上や店舗数も順調に伸びていきました。
「四十八漁場」の業績アップは、水産業の現場を盛り上げることにもつながります。漁業の世界は、「漁師の高齢化」「働き手不足」「平均年収の低さ」「海洋資源の減少」など、課題が山積みで危機的状況です。こうした課題に対して、一般流通に乗りにくい未利用魚をうまく活用するなど、買い手の努力で改善できる部分も少なくありません。エー・ピーホールディングスの自社流通機能を活用すれば、未利用魚の活用などで漁業の現場を支援できますし、かつ生販直結による他店との差別化も可能です。そういう意味で、当社は社会課題と経営課題を同時に解決できるソーシャルイノベーションカンパニーだと考えています。
エー・ピーホールディングスと生産者は刺激し合う強い関係性ができていますから、お客様にこの思いを届けることで、「飲食をするなら、『四十八漁場』のような社会的に意義のあるお店に行こう」と思っていただけるような存在になりたい。消費は自分を表現する手段でもあります。どこにお金を使うかは、投票のようなもの。お客様の「来店」という大事な1票をいただけるように、生産者の思いや店の価値をしっかり発信していくことが大切だと感じています。
食材と産地に向き合い、業態をリニューアル&新規開発
――2023年11月、社長に就任。業態開発にも力を入れてきました。
コロナ禍が収束し、いよいよ守りから攻めに転じるタイミングでしたし、ホールディングス傘下の会社のトップたちは私より年齢が少し下の世代なので、彼らを束ねる役目もあると考えています。社長就任から1年余りですが、それぞれの会社が排他的にならずに、良いところを共有して伸ばし合えるような風通しの良さに気を配ってきました。
一方、「塚田農場」「四十八漁場」などのレガシーブランドについては、今後どうすることが会社・お客様・社会にとって良いことなのかを見極めたい。最近の調査では、若い人ほど空間にお金を払う傾向が強く、40代以上は料理のクオリティーを重視するようです。こうした傾向を踏まえて、全く同じ業態を出店するのではなく、エリアごとにマーケティングをして、どの業態をどう展開するのか、メニューの開発やリニューアルも含めて丁寧に考えることが大切です。
例えば、2024年10月にリニューアルした東京・西新宿の「四十八漁場」は、内装を変え、見せ方やライブ感を加えたことで売上が130%に伸長しました。好きな魚を好きな調理法で堪能できる「四十八漁場 西新宿」もリニューアルによって売上140~160%も上昇しています。
新業態では大阪の「すき焼 しゃぶしゃぶつかだ KITTE大阪店」、東京・新橋の「炭火焼鳥 塚田農場 THE2nd 新橋店」なども好調。客単価3,000~5,000円のゾーンは強力なライバルが多いので、私たちは食材と産地にしっかり向き合うという強みを土台に、コンテンツを際立たせる業態づくりを進めることが勝ちパターンになると考えています。
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2024年12月オープンの「なきざかな 渋谷」。各地の漁港から届く新鮮な魚貝を刺身や焼き、煮付けなどで提供 -
2024年7月にオープンした「すき焼 しゃぶしゃぶつかだ KITTE大阪店」。A5ランクの黒毛和牛や希少なブランド豚を、一人ひと鍋のぜいたくなスタイルで提供
「未利用魚」→「魅了魚」がイノベーションの第1歩
――今後の計画や展望を教えてください。
2025年1月には、横浜駅の地下街に「江戸前横丁」として、客単価2,500~3,000円の「立鮨 すし横」「うなぎ ろ鰻」「天ぷら・ばく天」を出店。さらに、春に向けていくつか新店舗の構想が進行しています。海外は東南アジアを中心に出店を視野に入れています。コロナ禍を機に業態のポートフォリオを広げたので、条件さえ合えばさまざまな国での展開が可能になっています。
経営で注視しているテーマは「人件費の高騰」と「人手不足」。スポットワークで短期的にしのげても、長期的に見るとQSCのレベルが下がり、店の文化も失われかねません。スポットワークを利用しながらも、雇用の安定と習熟度の維持・向上を図る方法を模索していきたいです。
そして、ソーシャルイノベーションカンパニーとして、地域貢献や生産者支援にもさらに力を入れていきたい。生産者と当社のコミュニティにお客様を巻き込んで水産業の現実を知ってもらい、「顧客のイノベーション」(消費者のマインドチェンジ)を起こせればと思います。その第1歩として、たとえば「未利用魚」は「魅了魚」、「フードロス」は「フードポテンシャル」と言い換えて発信するだけでぐっとポジティブな印象になります。こうした言葉の扱い方を含めて、楽しく前向きに社会課題に挑んでいきたいと思っています。
リーダー×一問一答
■経営者として一番大切にしていること
人
■愛読の雑誌やWebサイト
ゴング格闘技
■日課、習慣
コールドシャワー、ジョギング
■今一番興味があること
ドナルド・トランプ氏
■座右の銘
触れたものすべて抱いて生きる
■尊敬している人
五味隆典(総合格闘家)
■最近、注目している店舗名、もしくは業態
町寿司。寿司居酒屋、寿司酒場ではなく町寿司(町中華の寿司屋版)をどうするかが食文化の課題
■COMPANY DATA
株式会社エー・ホールディングス
東京都豊島区西池袋1丁目10-1 ISOビル5階
https://ap-holdings.jp/
設立:2001年
ブランド数・店舗数:40ブランド、157店舗(国内外を含む)
従業員数:社員556人、アルバイト2691人※国内飲食業のみ(中食、海外、および連結子会社は含まず)
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