※スマイラー120号(2026年3月)より転載
若者に支持される人気店「酒トナデシコ七変化」
東京メトロ丸の内線本郷3丁目駅改札口を出てすぐの場所にある「酒トナデシコ七変化」。週末の夕方、店内にはネオンが煌めき、カウンターでは若い女性のひとり客が小鉢をつつき、立ち飲み席では中高年の常連客が静かに飲んでいる。
同店はコロナ禍最中の2023年の春に開業。店名を聞いてピンと来る人はだいたい50代から60代だろう。「普通に居酒屋やっても誰も来ない状況なので、“おじさん"にキャッチーな名前にした」と話すのは同店を経営するPMA商会の志方 俊一郎 氏。開店当初は時短営業下で、苦戦した。そんな中でも来てくれた中高年の客は今も健在だ。「常連客は週3、4回来る人がほとんど」と話す。
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おじさんの“懐かしさ”は、若者の“新鮮さ“に
食事メニューは焼き鳥·おでんを始め、至って大衆酒場的。酒類は果物が入ったカラフルな「なでしこサワー」などがある。ドリンクメニューの片面はホッピーや日本酒などで、「“おじさん”はこちらの面しか見ない」と笑う。
壁には80年代に流行ったアニメのキャラクターが描かれ、中高年を狙った昭和なコンセプトだったが、結果として若い客層が目立つように。「リバイバルって必ず来ますからね」(志方氏)。
一方、コロナ禍があけて、近くにある東京ドームから、週末にイベント帰りの若い女性が来店するようになったようだ。
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客と店の壁を低くする「仕掛け」
本郷3丁目に店を構えたのは、別の仕事で同エリアに来ることがあり、ボロボロの同物件を見つけたのがきっかけ。「お客様から見えるところ、見えないところではっきり分けて、コストをかけずに改装しました」と話す。
同エリアはちょっと特殊で、週末は客足が少ない。「会社が休みなので、土日は全然動いていない。近くにある東大の学生もあまり来ない」と志方氏。ひとりでもじもじしながら来るような子が多く、店の若いスタッフが話しかけて距離感を縮めているという。
カウンターに立ち、焼き鳥を焼くのは30代前半の女性店長だ。このアイデアは、志方氏が、もと飲み友達だった店長と話し合って決めた。「文京区はスナックやキャバクラのような店がないので、そういう意味で何か引っ掛かるでしょうねということで」。
志方氏は「お店の顔にしたかった」と話す。1階のカウンター内側にある、グラスや料理を2階に運ぶ手動の荷揚げ滑車は、なじみの施工会社に作ってもらった。「女の子が作業していると、“おじさん”たちが大丈夫かって。終わった後、一杯飲むか、みたいなやりとりが結構多く、客と店とのハードルも下がるのでいいかなと思って」。
若者は飲むが飲み方が違う。“体験”を求める来店動機
若者の酒離れ傾向について志方氏はどのように感じているのだろうか。酒量は女性の方が多いと感じているという。「20代前半や半ばまではそんなに飲まない。ひと口ふた口飲んで、写真を撮って満足している感じ。酒好きの年配者はかつて“とりあえずビールやハイボール“でしたが、若者は目的をもって来店し、目的のものを頼みます。『インスタでこれを見てこれを飲みに来た』的なのがほとんどなのでそこは意識します」と志方氏。
同店以外に、焼肉店やビストロ業態も経営する志方氏から見た、昨今の若者は「高くても自分の興味のあるものであれば頼む」印象だと語る。SNSに上げる場合も“何をやってるんだろう”と 思わせるようなものにし、無理に説明はしない。例えば同社の他店では、果物を自分で仕上げるような“体験型ドリンク”も見られる。「お客様の求めているものを求めている以上にちょっと楽しくする」を心がけているそうだ。
若者は面白さを求めている。志方氏は、常にアンテナを張り、彼らに受けるものを考える。面白さ・体験を重要視しているが、一方で料理のおいしさもこだわっていると話す。
渋谷で戦わない。日常使いに徹した経営判断
志方氏は同店を、ネオ居酒屋の本場ともいえる渋谷のスタイルとは別ものと捉えている。そのスタイルを踏襲せず、日常使いしやすい価格設定で差別化。結果、客単価は3,500円程度に収まっている。
開業して現在4年目。3年目くらいから業績が安定してきた。開業当初は月商300万円に届かない時期があったが、現在は500万円から550万円程度で推移している。従業員の採用は口コミや紹介がほとんどだ。
集客はSNSがメインになっているが、それほど費用はかけていない。多くて1店舗あたり5万円程度だという。「今もメインだと思っていますが、まぁ家賃みたいなもんです」。出店は1年に1店舗の展開で考えている。「人がついてこないと思っているからです。黒字化してから次を出したい」。千葉県出身の志方氏が今後考えている舞台は、都心から離れた郊外。都心より求職者が多いからだ。かつて山の中にあるパン屋のコンサルをしたときも求職者が殺到したと話す。
食材も産直で安く手に入る。錦糸町に4店舗経営している志方氏は、渋谷の流行は時差を経て他地域に受け入れられると話す。「1年ぐらい温めて、“入口は入りやすく、入ったら思ったよりオシャレ、思ったより、おいしい”とい うイメージで構想します」と語る。
現在は物件を探し中。構想はいくつもあると話すアイデアマンの志方氏は、その地にあった戦略で、着実に人が集まる店を展開していくのだろう。
住所:東京都文京区本郷2-39-2 番場ビル
https://r.gnavi.co.jp/eph7cyu10000/
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