2018/08/21 特集

【ノウハウ&事例】出店後も大事!飲食店のエリア分析

出店時にエリアを分析していても、状況が変わることは珍しくない。既存店はどのようにエリアを分析し、戦略を立てればよいのか。識者から話を聞くとともに、エリア分析をして売上増を果たした事例を紹介。

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更新日:2022.9.21

目次
既存店でも定期的なエリア分析が不可欠!
エリアにいる人の顔が思い浮かべられる分析を
STEP1:商圏調査
STEP2:立地調査
STEP3:導線調査
既存店こそ大事!競合店調査
【事例】エリアを分析して高級炉端焼からネオ大衆酒場に大変身!
 「ニュー大衆酒場 火一刀」(東京・赤羽)

 出店時にエリアを分析していても、状況がいつの間にか変わっていることは珍しくない。周辺に商業施設や競合店ができたり、住民の年齢層が変わっていたり、飲食店を取り巻く状況は常に変化する。既存店はどのようにエリアを分析し、いかに戦略を立てればよいのか。識者から話を聞くとともに、エリア分析を行って高級炉端焼きからネオ大衆酒場にリニューアルし、売上増を果たした事例を紹介する。

既存店でも定期的なエリア分析が不可欠!

お話を聞いたのは 株式会社 販路企画 田口勝氏
大学卒業後、経営コンサルタント会社に就職。その後、株式会社セブンイレブンジャパンの本部で店舗経営コンサルティングを担い、2014年に独立。飲食店や小売店の多店舗展開およびFC本部展開支援などを、商圏調査、立地調査、エリアマーケティングの分野で200社以上のコンサルティングを行う。「実務家としての視点」を大事に、数値改善にこだわって支援している。

 飲食店にとって「エリア分析」は、経営方針の基礎となる重要な情報源だ。新規出店するときに行うのはもちろんだが、既存店でもその重要性は変わらない。

 株式会社 販路企画の田口 勝氏は「ほとんどの飲食店は、来店客の6~7割を、店舗を中心としたある一定のエリア内から集客しています」と指摘。もちろん、遠方から来店するケースはあるが、「それは少数派で、来店客の1~2割。そこに注目しても集客は伸びません。大事なのは、6~7割のほうです。エリア内にどんな人たちがいて、どこから来て、何を求めているのかを知ること。それがエリア分析です」と力を込める。

 また、エリアの状況は、時事刻々と変化していると言っても過言ではない。近隣に駅が新設されれば、それだけでエリアの性格は容易に変わり、駅の改装によって出口の場所が変わったり、増えたりしただけでも、人の流れは大きく変化する。さらに、商業施設や新たな観光スポット、大規模マンションなどができることもエリアに変化を生む。住宅地の場合は、住民の年齢層が時とともに移り変わるのは避けられない。「既存店は、常に世の中の動きや周辺の動向に目を向け、定期的にエリア分析を行って変化に対応していく必要があるのです」と田口氏は語る。

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エリアにいる人の顔が思い浮かべられる分析を

 では、エリア分析には、どんな方法があるのだろう。「基本的には、『商圏調査』『立地調査』『導線調査』の3つ」と田口氏。「商圏調査」とは、店の周囲にどのくらいのマーケットがあるのかを把握する調査。エリアの総人口、世帯数、事業所数、従業員数などを調べ、エリアにどんな人がいるのかを把握する。「立地調査」とは、店舗の「見つけやすさ」の調査。店の近くを通る人に気づいてもらえるかを現地で確認する。「導線調査」は、商圏の交通の発生源となる駅や商業施設、大型マンションなどを特定し、そこからの人の流れを調査する。「この3つを総合的に判断するのが、エリア分析のポイント」と田口氏。「人口など、数の把握はもちろん必要ですが、同時に、導線や立地を現場で見て、エリアの質、つまり“どんな人が、どんなニーズで、このエリアにいるのか”を、顔が思い浮かぶくらいまで把握することが大事」と語る。

 ただし、エリア分析を行っただけで満足してはいけない。「大切なのは、エリア分析によって把握したターゲットとニーズに対して、自店には何が足りないのかに気づくこと。そして、その結果を基にして総合的に改善することが重要です」(田口氏)。田口氏によると、店舗の売上構造は「商品」「立地」「サービス(接客)」「販促」で成り立っているという(下図を参照)。「以前は、この4つの視点のうち1つを変えれば結果がついてくる“足し算の関係”でした。しかし、現在は外食業界が成熟しており、同業の飲食店だけではなく、コンビニやデパートなどの中食も競合になりえる時代。4つのうち1つを変えても、そのほかの3つが手つかずの『ゼロ』であれば、結果は出ないという“掛け算の関係”になっているため、4つの総合的な改善が必要なのです」。例えば、エリア分析の結果から「商品」(メニュー)を変えれば、以前は多少なりとも売上が上がる状態だったが、今は「商品」を変え、同時にエリアの客層に「サービス(接客)」や「販促」でアピールしなくては、結果はついてこない。つまり、売上アップを狙うには、エリア分析によってターゲットとそのニーズを把握し、この4つの視点で変えていけばよいのだ。

 もちろん、エリア分析を活用して、4つの視点で立てた戦略が「100%成功する」と断言できるわけではない。しかし、何の指標もなく、思いつきで商品やサービスを変えるほうが、リスクは高い。エリア分析を行って客層とニーズを把握したうえで戦略を立て、実行すれば、成功の確率は高くなるはず。「ここに、エリア分析を行う最大のメリットがあるのです」と田口氏は語る。「売上が伸びないと悩んでいるならば、店の外に目を向けてみてください。店の中ばかりに目を向けがちですが、意外と店の外からヒントを得られることが多いのです」。

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 では、実際のエリア分析はどう行うのか。次ページより、「商圏調査」「立地調査」「導線調査」に分けて、見ていこう。

STEP1:商圏調査

自店の商圏を決め、エリアデータをチェック。実情に沿った調査を!

 「商圏調査」で重要なのは、自店の商圏はどの程度の範囲なのか、そこにはどんな人が住み、働いているのかを知ること。そこで、田口氏が紹介するのが、総務省統計局が提供する、各省庁などが公表する統計データをまとめて閲覧・検索ができるポータルサイト「e-Stat」だ。そのサイトの「地図で見る統計(統計GIS)」のページ内に、統計データを地図上に表示し、視覚的に把握できる地理情報システム「jSTAT MAP」がある。「jSTAT MAP」を使えば、指定した範囲(商圏)の総人口、男女別人口、年齢階層別の人口、世帯数、事業所数、従業員数などのデータを、無料で簡単に抽出することができる。

地図で見る統計(jSTAT MAP)
https://www.e-stat.go.jp/gis
日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト「e-Stat」内にある、統計を視覚的に把握できる地理情報システム(利用無料)。商圏規模を把握するためのデータを簡単に調査できる。上の画面は、「国勢調査」を基にした東京・有楽町近辺の人口総数を地図上に表示

 使用する際に、まず決めなければいけないのが、店からどのくらいの範囲で調べるか、という点だ。「『来店客の6~7割の人がいる範囲』を想定して設定するのが有効。範囲がわからなければ、来店客にどこから来ているのかを聞くことも1つの方法ですが、店舗の立地が『都市型』『郊外型』『商業施設型』のどれに当てはまるかを考えると設定しやすいです」(田口氏)。「都市型」とは徒歩での来店が基本の店、「郊外型」とは車で来店するケースが中心の店、「商業施設型」とは文字通り、特定の施設に来た人を集客する店だ。「徒歩5分が約500m、車で5分が約2㎞といわれるため、来店客の6~7割の人は徒歩や車でどの程度時間をかけて自店に来ているのかを考えるとよいでしょう」(田口氏)。例えば、ランチ客のほとんどが徒歩5分以内のオフィスから来ているなら、店から半径500mの範囲が昼の商圏。ディナーは徒歩10分のオフィスからの来店も多いなら、店から半径1㎞圏内が夜の商圏となる。調べてみて商圏の人口が思ったより少ないなら、商圏を広げた店づくりを考える必要があるだろう。

 だが、商圏範囲を一律、半径○㎞と設定するだけでは、現地の実情に伴った調査にはならない。「気をつけたいのが、『商圏バリア』の存在です」(田口氏)。「商圏バリア」とは、店に来づらい原因となっている障害物のこと。例えば、駅や線路、山や川、中央分離帯があるような大きな道路やきつい登り坂などがそれに当たる。商圏バリアがあると、人はそれを越えて行き来しにくい状況となり、商圏バリアを越えない内側が実質の商圏となる。大型商業施設やオフィスビル、大規模マンション、工場、広い敷地のある大学なども商圏バリアの1つ。商圏バリアがある場合は、人口などの数値も変化するので、実情に合った調査を意識したい。

【商圏バリア】
駅や大きな道路、学校、川などが障壁となり、その外側から人は来づらい。そのため、その内側が実質商圏となる

 こうして商圏調査を行うと、自店のエリアの状況がだんだんと見えてくる。特に注目したいデータとして、田口氏は「世帯人数」を挙げる。「人口÷世帯数」がそのエリアの「世帯人数」(の平均値)で、単身者が多いと数値は1.9以下、ファミリーが多いと2.2~2.4程度になる。数字としてはわずかな違いだが、実際のエリアの様子は大きく異なるので、必ずチェックしてほしい。

 一方で、数値で見た結果と、店で感じる肌感覚が合致しないこともある。例えば、商圏調査で若いファミリーが多いことがわかったので、若いファミリー向けのメニューやサービスを打ち出したのに、この客層がまったく増えずに戸惑うこともあるだろう。でも、田口氏は「このときこそ、自店の弱みに気づくチャンス!」と言う。「呼びたい客層が商圏にいるのに、店に呼べていないのですから、どこかに穴があるのです。前述したように、商品・立地・サービス・販促の4つの視点で見直すと、打開策が見えてきます」とアドバイスする。そもそも、商圏調査をしなければ、現実と肌感覚のギャップにも気がつかなかったはず。ぜひ、商圏調査に取り組んでエリアの状況を認識するきっかけにしてほしい。

STEP2:立地調査

集客に不利な立地ならば、見つけやすさや入りやすさを改善する

 「立地調査」では、「店の『視認性』『侵入性』『回遊性』の3つをチェックしてください」(田口氏)。「視認性」とは店の「見つけやすさ」のこと。例えば、駅前の一等立地でも、近くを通る人の目に入りにくければ、改善が必要だ。「侵入性」は店への「入りやすさ」。入店をためらわせる要素の有無をチェックする。「回遊性」とは「駐車のしやすさ」。郊外店では、駐車場の広さが来店数を左右することも少なくない。

 それでは、この3点をどのように調査するのか。まず「視認性」では、離れたところから店が見えるかどうかをチェック。徒歩での来店が基本の「都市型店舗」であれば、店から10m離れたところで店を認識できるかが目安。「建物の陰になって店が見えなかったり、店が路地にあって、その道に入るまで気がつかないのであれば、改善が必要です」と田口氏。遠くから見える位置や、路地に入る曲がり角付近に看板を置くなど、対策を考えよう。「郊外型」の店舗の場合は、車を利用している人が多いため、店の50m手前で気づいてもらえないと厳しい。看板の大きさや、店が木で遮られていないかなども調査しよう。「看板の設置が難しければ、Webを活用してアピールすることも検討するとよいと思います」(田口氏)。

 また、店の前の通行量は多いのに、素通りされがちな店は「侵入性」が悪い可能性がある。ファサードが地味で目立たず入りにくかったり、逆に派手すぎて敬遠されることもある。集客したい客層の目線で、ファサードを検討することが大切だ。そして「回遊性」では、広い駐車場を持つことが難しければ、近くのパーキングを案内するのもよいだろう。「大切なのは、立地調査から、自分の店の欠けているところを認識すること。既存店の立地は変えられませんが、不利な立地を克服する方法はたくさんあります」。店のデメリットに気づくことができれば、自ずと解決策も見えてくるはずだ。

STEP3:導線調査

交通発生源を特定し、人の流れを調査。「質」の把握が大切

 「導線調査」とは、交通発生源の特定と、そこからの人の動きを調べること。田口氏は、「エリア分析の中で、もっとも重要な指標」と語る。商圏に多くのターゲットがいたとしても、店へ向かう人の流れ(=導線)が少なければ、実際の集客にはつながりにくいからだ。特に新規出店では、導線調査の比重が高く、よりよい導線を求めて出店するが、既存店の場合は、導線の交通量とそこを通る人の“質”を知り、店の戦略に活かしていくことが重要だ。

 具体的に、導線調査の方法を見ていこう。まず、交通発生源を特定する。エリアの人の流れ(=交通)が、どこから生まれているかを見極めることが大切で、駅や集客力の高い商業施設、映画館、観光スポットなど、人が多く集まる場所が当てはまる。

 交通発生源から自店に向かって1番多くの人が通行する道を「主導線」、2番目を「副導線」と考え、それぞれの人の流れを見ていく。新規出店であれば、この主導線・副導線の通行量を見て出店場所を決めていくのだが、田口氏は「既存店は、通行する人の数より、その“質”が大事」と言う。「年齢や性別はもちろんですが、自店のエリアを通行している人が、どんな目的で、どこを目指し、どんなニーズを持っているのかを、服装や表情、歩くスピードなどから感じ取ることがポイントです」。店の前を観察することはあるかもしれないが、それだけでなく、交通発生源を利用している人をよく観察し、ターゲットとなる人を把握することが必要なのだ。さらに、平日と週末、ランチとディナーでは“導線の質”が違うので、自店が営業する曜日・時間帯別でもチェックするとよい。

 「導線の質を把握することで、通行している人たちを店に誘導するための作戦を考えることができるはずです」(田口氏)。しっかりと「質」を捉えて、有効な戦略を導き出すことが肝要だ。

【導線調査】
交通発生源を起点に
・どんな人が
・どんな目的で来ているのかを見る

エリア分析をしてから他店を見ると、自店が見えてくる 既存店こそ大事! 競合店調査

 エリア分析を行った後に取り組みたいのが、「競合店調査」だ。飲食店が供給過多といわれている現在、他店と差別化し、選ばれる店になることが重要。「ただし、他店がやっていない新しい料理やサービスを始めたからといって、有効な差別化になるとは限りません」と田口氏。「差別化で必要なのは、他店に対して自店の強みを際立たせること。同時に、その強みが商圏の客のニーズと合うものでなければいけません」と指摘する。

 例えば、自店の売りとして「飲み放題の豊富なラインナップ」を打ち出す場合、知る人ぞ知るような酒をアピールしても、有効な差別化にはならない。むしろ、繁盛している競合店の飲み放題を調査し、それを少し超えるラインナップにするほうが、自店の強みをよりアピールできる。他店を知って比べることで、初めて自店の強み・弱みを意識できるのだ。

 そして、実際の視察では「競合店のすべてを知ろうとする必要はありません」と、田口氏は釘をさす。自店が飲み放題を売りにするなら、他店の飲み放題を集中的にチェックすることが肝心。すべてを把握しようとすると、視点がずれてしまう。もちろん、売りを決めるときは、エリア分析で店のメインの客層とそのニーズを把握し、商品・立地・サービス(接客)・販促の4つの視点で検討しなければならないことは言うまでもない。

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 また、飲食店の競合は飲食業だけではない。「小売業、特にコンビニは、“コンビニコーヒー”の販売や食事スペースを設けるなど、明らかに外食の市場を狙っています」と田口氏は警鐘を鳴らす。「飲食店とコンビニでは客のニーズが違う」と決めつけるのではなく、ユーザーはコンビニに何を求めているのか、それが自店とどう競合するのかに注意を払う必要がある。

 さらに、エリア内の競合店調査はもちろんだが、エリアの外の繁盛店にも目を向け、トレンドや売れ筋を捉えて、自店に活かせないか考えることも有効だ。飲食業だけでなく、小売業やサービス業の店舗運営からも学べることは多くあるはず。ぜひ、店の外やエリア外にも目を向け、感覚を研ぎ澄まして、様々な競合から多くのヒントを得てほしい。

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事例 エリアを分析してリニューアル!高級炉端焼からネオ大衆酒場に大変身! エリアを歩いて、ニーズをつかむ

ニュー大衆酒場 火一刀(ヒイト)【東京・赤羽】

足かせになった高級路線。エリアの見直しが契機に

 2013年6月、高級炉端焼店として出発し、2016年8月に「ニュー大衆酒場」としてリニューアルオープンした「火一刀」。客数はリニューアル前の約3倍、月商は約2倍に伸びて大成功している。この背景には、エリアのニーズを掘り下げて、戦略を練り直す取り組みがあった。

 同店は、JR赤羽駅の改札口から60秒足らずの人通りの多い路面店だ。駅周辺には低単価な居酒屋が多く、古くからの飲み屋街「赤羽一番街」があり、昼飲みを打ち出す店も多い。

 運営元の株式会社ティーピーディー取締役営業統括本部長の有山正寿氏は、「最初は高級感を出して周囲との差別化を狙いました。落ち着いた雰囲気でゆっくりできる店のニーズもあるはずと考え、それを掘り起こそうとしたんです」と語る。客単価を4200~5000円に設定。日本酒を50種類以上そろえ、原価をかけて料理のクオリティにもこだわった。狙い通り30代後半~50代の男性ビジネス層が接待や会食で来店。しかし、高級感が足かせとなって客足が伸びず、利益が低下。特に、高級感を打ち出したファサードは、フリー客や女性を遠ざけていた。

 2015年冬頃から「『この業態で本当にいいのか?』と、初心に戻って赤羽の街を歩きました」と有山氏。近隣の不動産屋やスーパーマーケットにも立ち寄り、エリアの生活感覚を探るとともに、競合となる飲食店にも足を運んだ。「店ではなく、来店客を見ました。来店客が何を求めているのかを知りたかった」と、有山氏は当時を振り返る。

リニューアル後の店内。個室をなくし、6席だったカウンターを30席に増やして、1人客の「サク飲み」に対応。客単価を下げる一方で、客数と回転率を上げ、売上増を図った

 そこで気がついたのが、昼飲みの需要の高さと、若い女性がエリアに多く存在すること、バルやビストロなどの洋食系飲食店が台頭していることだった。「若い女性が気軽に飲んでいる姿を多く見かけ、そういったニーズがあると気がついたのです」(有山氏)。折しも、埼玉にある系列店が「ニュー大衆酒場」としてリニューアルして絶好調。これを赤羽のエリアに合わせ、本格イタリアンも楽しめる店に進化させようと模索。こうして生まれたのが、大衆酒場とバルをかけ合わせた「ニュー大衆酒場 火一刀」だ。

“昼呑み”をアピール!
気軽に昼飲みできるように大看板でアピール。女性も利用しやすいよう、メニューは写真付きでわかりやすく表示し、エリアの昼飲みを喚起する
ちょうちんで大衆感を演出!
通行量が多い駅前立地の利点を活かすため、大きなちょうちんや、のれんで親しみやすさを演出し、店への引き込みを図る

 客単価は、2500円に設定。リニューアル前より大幅に下げる一方、個室をなくしてカウンター席を増設し、客数と回転率アップを目指した。料理は、刺身やピザ、生ハムなどとともに、もつ煮をデミグラスソースと合わせた「濃厚!イタリア下町のもつ煮込み」(421円)など、洋風にアレンジしたメニューもラインナップ。料理のクオリティは下げずに、ポーションを小さくして価格を抑え、品数を増加。ランチをやめ、昼飲みを前面に打ち出した。さらに、入りにくかったファサードを改修。照明を明るくし、大きなのれんと、ちょうちんで親しみやすさを演出。大きな看板も設置し、どんな店なのかひと目でわかるよう工夫を凝らした。

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大衆居酒屋に業態変更し、昼から通し営業。少人数の利用や若年層をつかむ

和と洋をミックスさせたメニューをラインナップ
コンセプトは「バルと酒場のいいとこどり」。刺身やピザなど、和・洋の人気料理とともに、洋風の創作料理など50 種類以上を提供
リニューアル後の人気メニュー「濃厚!イタリア下町のもつ煮込み」(421円)。大衆酒場の定番のもつ煮をデミグラスソースで洋風にアレンジしている

 この戦略が当たり、今では20~60代の男女を幅広く集客。フリー客が増え、昼飲みも好調だ。来店客の4割は女性で、特に休日は昼から賑わう繁盛店に成長している。今後もエリアのニーズを敏感に捉え、さらなる発展を目指す。

リニューアル前は…

高級炉端焼店だったため、ファサードや店内では、落ち着いた雰囲気を演出。客層は男性ビジネス層が中心だったが、「高そうな店」と敬遠され、フリー客や女性が獲得できていなかった

株式会社ティーピーディー 取締役 営業統括本部長 有山 正寿 氏(右) 店長 髙橋 克哉 氏(左)
有山氏は、埼玉県南部を中心に首都圏で展開する二十数店舗を統括。髙橋氏は、同店のリニューアルと同時に、系列店から店長に抜擢。

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