2018/12/18 特集

分煙&禁煙にどう対応する? いま考えたい飲食店のタバコ対策(3ページ目)

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CASE STUDY 飲食店の禁煙化

【神奈川・藤沢】まつだ家

入口のレジ近くに、禁煙を示すステッカーを貼り、入店した人に必ず口頭で禁煙であることを伝える

客層が拡大し売上もアップ。人材募集でも好影響あり

神奈川県の藤沢駅至近にある「まつだ家」。カウンター席や掘りごたつの座敷席、半個室を備え、店内は全席禁煙。新鮮な海の幸と朝採りの鎌倉野菜、厳選した日本酒が売りの人気店だ。

いまでこそ全席禁煙だが、2011年のオープン時は全席喫煙可。来店客は40代以上のビジネス層が中心で、その半数以上がたばこを吸い、店主の髙橋章芳氏を含め、従業員も全員喫煙者だったという。しかし、禁煙の機運が高まるなか、非喫煙客から「料理はおいしいのに、たばこの煙が気になる」といった声が増え、入店直後に「たばこ臭い」と帰る人もいた。「吸わない人も気持ちよく食事を楽しめる店に」と考えた髙橋氏は、2014年初めに簡易的な分煙に着手。予約時や入口で喫煙の有無を聞き、なるべく喫煙者と非喫煙者が分かれるように席を振り分けた。だが、仕切りがないため煙が流れ、期待した効果はあまり得られなかった。そこで、社会的風潮も踏まえ、「思い切って禁煙にしよう」と決意。しかし、急に全面禁煙にすると常連の喫煙者が一気に離れると考え、まず、2014年夏にファミリーの多い土・日曜日と祝日のみを禁煙に。トラブルや拒否反応もなく、売上への影響も少なかった。

その後、2016年初めに平日の空間分煙を実施。10名を収容できる半個室だった空間に扉を設置。また、格子窓も板でふさぎ、喫煙可能な完全個室にし、ほかを禁煙席にした。それでも、個室を開ける際に煙や臭いが漏れて近くの席から苦情が出たり、さらには個室以外で喫煙できなくなったことで大口の宴会も減少。最盛期の70%にまで売上が落ちた月もあった。「専門家に相談しなかったこともあり、分煙としては対策が不十分だったと思います」と、髙橋氏は当時を振り返る。

そこで1年後、完全禁煙化に向けてたばこの臭いが染みついたエアコン5台を交換。2017年の元日から全席禁煙に踏み切った。分煙をしていた期間に喫煙しない常連が増えたこともあり、スムーズに移行。全席喫煙可能だった時代からの常連客が2割減った代わりに、女性が3割増加した。また、一人客も増えたため、一人用メニューを充実させて好評を得ている。「完全禁煙後は回転率も上がりました。以前は、食事後の一服などで、滞在時間が延びていたのかも」と髙橋氏。労働環境改善のために営業時間を短縮したにもかかわらず、新規客の獲得や回転率の上昇により客数は増加。売上も前年同月比110%前後で推移している。

人材募集にも全面禁煙の情報を掲載したところ、応募者が増加。「“快適に働ける店”と感じてもらえたのかもしれません。現在、多くのスタッフが非喫煙者で、定着率も上がりました」(髙橋氏)と、思わぬ効果を感じている。

トイレで隠れてたばこを吸う人もいるため、男女のトイレ入口にも、ステッカーを貼って注意喚起
最大10名まで収容できる個室。分煙を行っていた時期は、格子窓や上部の隙間をDIYでふさぎ、喫煙可能な個室として使用した。ただ、個室を開閉する際の臭いなどへの苦情が増えたこともあり、1年後に全面禁煙に踏み切った
禁煙化によって、一人でゆっくり食事を楽しむ人が増加。刺身やサラダなど、ハーフサイズメニューの数を以前の倍に増やして好評を得ている
一人客の増加により、キッチンに面したカウンター席の稼働率も上がった
「自治体の条例や活動は普段から気にするようにしています」と髙橋氏。オープン前に、神奈川県の受動喫煙防止条例(2010年施行)について市役所に問い合わせ、自店に禁煙化の義務がないことを確認し、全席喫煙可に。その後、禁煙化した際は、県制作の禁煙ステッカーを店内に貼るほか、藤沢市が完全禁煙店としてアピールする『健康づくり応援団協力店』にも登録。店舗情報が載った冊子(写真)がホテルなどに置かれ、来店にもつながっている
まつだ家
神奈川県藤沢市南藤沢20-17門倉ビル6 B1
https://r.gnavi.co.jp/gaw7700/
相模湾に面した、藤沢市の繁華街に立地。落ち着いた古民家のような空間で、新鮮な魚介と毎日仕入れる鎌倉野菜の創作料理が売り。
店主 髙橋章芳氏
ソムリエなどとして活躍後、同店で独立・開業。以前は自身も喫煙していたが、店の禁煙化を決めた2014年にたばこをやめた。

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