各店の板前が腕を競い合う、月替わりのメニューが好評!
【大阪・北浜】北浜 よし田
値付けや見せ方の工夫など実践を通し経営感覚を体得
大阪市中央区に5店舗を展開する日本料理の「よし田」。10年以上続く独自の取り組みとして、毎月、全店で約15名いる板前が1人1メニューを「板前おすすめ」として開発し、各自の店で提供している。月末には各メニューの出数を集計し、原価率や店舗ごとの売上の差なども踏まえた「利益貢献率」を正確に算出。上位3メニューの考案者には賞状と金一封が贈られる。
実質的な社内料理コンテストに当たるこの取り組みは、自身もかつて板前だった社長の吉田強氏の発案で始まったもの。板前にメニュー開発の実践経験を積ませ、料理への評価が売上につながる手応えを実感させることが大きな目的で、将来的な独立への予行演習の意味合いも含まれている。
北浜店で料理主任を務める永岡太一氏は入社当初から参加し、ほぼ毎回、上位3名に名を連ねる。「意識しているのは、季節の食材を用いることと、ワンポイントの〝ひねり.を加えること。グランドメニューと差別化し、特色がより際立つ料理を心がけています」と永岡氏。例えば、2月の「生牡蠣と生麩のとろ~りグラタン」は、クリーミーなベシャメルソースの隠し味に、かつお出汁が香る1品。3月に提供する「ハマグリと春野菜の茶碗蒸し」(900円)は、ハマグリの蒸し汁を卵液に加え、風味豊かに仕上げている。
毎月の流れとして、各店の板前は10日までに、翌月の「板前おすすめ」のレシピ案を固め、全店共通のフォーマット用紙に記入し提出する。食材や価格に縛りはなく、仕入れ値、料理の原価、利益率などを計算したうえで、板前が自分で価格を設定。必要に応じて各店の店長や吉田氏がアドバイスを行い、修正を加え、レシピが確定する。永岡氏は「どのくらいの価格設定にすれば、お客様に気軽にオーダーしてもらえ、なおかつ利益も出せるのか。毎回シビアな計算を通して実践的に学べるので、とても勉強になります」と語る。ときには、自信を持って提供したメニューの売上が伸び悩む場合もあり、そこで得る教訓も多いそうだ。「11月の『板前おすすめ』で豆乳鍋を出したのですが、時期的にグランドメニューにも各種の鍋料理があり、結果は振るいませんでした。メニュー全体をトータルで見て、構成を考える大切さを学びました」(永岡氏)。
季節感と創意工夫に満ちた「板前おすすめ」は、今では「よし田」の名物として常連客にすっかり定着。特にカウンター主体の北浜店では、料理人と来店客の距離が近く、「永岡君の今月の料理ちょうだい」と、メニューを見ずに注文するリピーターも多いという。
来店客の評価がダイレクトに反映されることに加え、賞状と金一封という、目に見える形で結果が残ることもモチベーションになっている。「賞状は家族にも見せ、大切に保管しています。料理人として自信と励みになりますし、お客様の期待に応え続けようと、気持ちが引き締まります」と永岡氏。
コンテストを通して根付いた、板前同士が腕を競い合い、高め合う風土が、グループ全体の料理のクオリティやブランド力の向上に一役買っている。
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