2019/03/26 特集

シェフにも、店にも、メリット盛りだくさん! 十人十色の「コンテスト」活用法(3ページ目)

URLコピー

コンテストで自分の立ち位置を確認。自己成長につなげて世界を拓く

【広島・宮島口】AKAI

落選の経験も糧にして新たなステージに立つ

 日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35 2017」で、グランプリを獲得した赤井顕治氏。3回目の挑戦、(応募資格35歳以下のため)最後の挑戦でつかんだ栄冠だった――。

 料理やお菓子、パンに至るまで、何でも手作りする母親の影響を受け、幼い頃から料理に関心があったという赤井氏は、高校卒業後に料理人への道を歩み出した。広島と福岡のイタリア料理店を経て、広島市内のワインバーへ。そこで見たフレンチ出身のシェフの技術に衝撃を受け、フランス料理に目覚める。すべて独学だ。「ワインバーを辞めたら独立するつもりでした。でも、落選の経験も糧にして新たなステージに立つ東京などでフレンチの名店を食べ歩くなかでそのレベルの高さに愕然とし、自分の力のなさを痛感。基礎から学び直そうと修業先を探しましたが、年齢や経験のなさもあって全滅でしたね」と当時を振り返る。そこで取った行動は、渡仏だった。渡航費を稼ぐために仕事をかけ持ちして1年半働き、妻子を日本に残してフランスへ渡った。

受賞の瞬間、控えめのガッツポーズで喜ぶ赤井氏。確かな料理技術や独創性、人間性が、脇屋友詞氏(「Wakiya 一笑美茶樓」オーナーシェフ)を審査員長とする10名の審査員団に高く評価された
最終審査でプレゼンする赤井氏
決勝審査で作った料理「私たち~活きるということ」。塩のみで味付けした合鴨のローストに牡蠣を添えた

 そして5年後、「RED U-35」3度目の挑戦でグランプリを獲得。その応募動機を、「自分と同世代の活躍を見て、トライしたいと。『RED U-35』は技術力だけでなく、ビジョンやプレゼン能力など、一料理人として多角的に審査されるので、そこがおもしろいと思いました」と語る。しかし、1回目の応募は一次審査で落選。翌年は二次予選落ち。3度目に挑戦できたのは、「自己成長」のためだ。「1度応募して、自分の中にフォーマットができた感じです。2回目は審査の要領もわかり、料理以外でもアピールしようと考えることができたので、体感的に『戦える!』と感じました。僕の場合、コンテストは単なる勝ち負けじゃない。成長するためのツールです。勝っても自分自身は何も変わらないですし、落選時は準備不足や弱い部分が見えて、むしろ得るものの方が多かったです」。

独立・開業をひかえた赤井氏。柔和な表情ながらも、内に秘めた情熱が伝わってきた
4月にオープンする「AKAI」は、平屋の古民家を改装。オープン後も、徐々に改装していく予定だ

RED U-35とは…
新時代の若き才能を発掘する、日本最大級の料理人コンペティション。夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を発掘し、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の飲食業界の総力を挙げて開催。2013年よりスタート。35歳以下の料理人によって競われる。「RED U-35 2019」は、2019年4月16日(火)開幕。
https://www.redu35.jp/

2017年の審査内容
【一次審査】 書類審査。応募テーマ「糖」についてのレシピ提案。
【二次審査】 映像審査。「信頼する生産者とのつながり」をテーマに、その食材を活かした料理を、2分30秒以内の映像にまとめて紹介。
【三次審査】 調理師専門学校を舞台にした「学園祭審査」。各自が模擬店を運営し、「旬のアミューズ」がテーマのオリジナル料理を、事前に募集した一般来場者180名に提供。料理技術、コンセプト、来場者への接し方などを含めた総合的な審査。
【最終審査(決勝)】 三次審査当日の夜に、翌日の最終審査のミッション「“天草の塩”をテーマにしたレストランのシェフとして、スペシャリテをつくること」が発表される。築地市場での買い出しから仕込み、調理までを限られた持ち時間で1人で行う過酷な内容。

AKAI
広島県廿日市市宮島口4-3-41
※2019年4月中旬オープン予定
築約80年の古民家を改築。食材は国産のみで、昼・夜とも10,000円のコースを提供。「料理ジャンルは特になく、あえて言うなら“赤井料理”。料理はシンプルに、食材本来の力を活かします」(赤井氏)。

全3ページ