2020/12/15 特集

【PART1】新業態に挑む、外食チェーンのこれから 外食業界、それぞれの挑戦 ~激動の2020年から2021年へ~(3ページ目)

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新業態に挑む外食チェーン② 株式会社ダイヤモンドダイニング

Company Profile
現株式会社DDホールディングス代表取締役社長・松村厚久氏が2001年に創業。2010年に「100店舗100業態」を達成。2020年9月に「博多かわ串・高知餃子 酒場フタマタ」などを手掛ける株式会社ゴールデンマジックほか連結子会社4社を吸収合併。2020年11月、東京・赤羽に新業態の非接触型居酒屋「東京カンカン市場赤羽店」をオープンした。

見直し、見極め、分析を徹底し、新しい時代が求める新業態を開発

“ハットトリック”を武器にコロナ禍で新店をオープン

 飲食事業のほか、アミューズメント事業なども展開する株式会社DDホールディングスの代表取締役社長・松村厚久氏が、2001年に創業した株式会社ダイヤモンドダイニング。「100店舗100業態」を目標に掲げ、2010年にこれを達成。「九州熱中屋」など居酒屋業態のほか、バル、コンセプトレストラン、完全紹介制の懐石料理店まで、幅広い客層と利用シーンに対応する店を手掛ける。

 2019年8月に誕生した「博多かわ串・高知餃子 酒場フタマタ」は、2つの地域(博多と高知)の2つのおいしい(かわ串と餃子)を打ち出した“ハイブリッド酒場”。もとは、DDホールディングスの連結子会社である株式会社ゴールデンマジック(2020年9月にダイヤモンドダイニングに吸収合併)が生み出したブランドだ。客単価は3000円以下で、近隣で働くビジネス層を中心に集客し、東京都内で順調に店舗展開を進めてきた。そして、2020年7月には9店舗目となる蒲田店をオープン。青果店(物販)×洋食ランチ&喫茶(非アルコール)×酒場(アルコール)という3つの顔を持つ“ハットトリック”が大きな特徴で、異なるニーズに合わせたウィズコロナ時代の新業態として誕生した。

 オープンの経緯について、株式会社ダイヤモンドダイニング第二営業本部統括部長の林拓未氏は、「消費者のニーズや、コロナ禍により飲食業界の常識が変化していることの影響が大きい」と話す。「飲食店の需要は都心から郊外へシフトしました。接客の常識も逆転して、接触しないことがサービスの一つという状況もある。そんな中でどう生き抜くかを考えた結果の〝ハットトリック業態〟でした」と林氏。物販では、業者から仕入れる野菜や店舗で調理した惣菜や弁当などを販売し、予想以上の反響を得たという。「現在は客足が回復したため、青果店と喫茶を中止していますが、オープン直後は物販の売上が店全体の8割にもなりました。住宅とオフィス、両方がある立地のため、惣菜や青果は地元の住民やファミリーに、温かいお弁当は近隣で働くビジネス層に好評でした」(林氏)。

 ランチは、あえて居酒屋とは関連性のない洋食メニューを提供。“昼と夜のフタマタ”もテーマに、時間帯ごとに全く別の業態・料理を楽しめるよう、オムライスやナポリタンなど昔懐かしい洋食店を意識したメニューをラインナップ。ボリュームも多いため、30~50代前半の男性に好評だ。「居酒屋の延長線上にあるランチは似たり寄ったりで、価格やボリュームの競争になってしまう。リモートワークの影響でオフィス街のランチ需要が減った今、『これを食べにあの店へ行きたい』という、来店動機を与えられるかが大事になると考えています」(林氏)と、目的型店舗であることの重要性を語る。

 現在、ランチは男性を中心にビジネス層を獲得し、ディナーの男女比はほぼ半々。2020年11月には最新の客層やニーズに合わせて夜の居酒屋メニューをリニューアル。円柱状のポテトサラダにイクラを盛り付ける「贅沢な!ポテトサラダ」(528円)など、“プチ贅沢”な小ポーションの料理の充実を図った。「二毛作や三毛作は、都心でも郊外でも需要がある。それぞれのエリアのニーズに合った料理やサービスを模索しながら、今後も『酒場フタマタ』のブラッシュアップに努めていきたいです」(林氏)。

【Store Brand】博多かわ串・高知餃子 酒場フタマタ
博多のかわ串と高知の餃子を2枚看板に据えた“ハイブリッド”居酒屋。2019年8月、東京・新橋に1号店をオープン。2020年11月25日には10店舗目となる西新橋店をオープン。昼は蒲田店と大崎店で洋食ランチを提供、浜松町店は「ステーキ五郎」として営業し、ビジネス層を多数集客している。

  • キラーコンテンツの「博多かわ串」「高知餃子」を記した大きなのれんを掲げ、特徴である“フタマタ”をアピール
  • タブレットと紙が一緒になったユニークなメニューブック。「かわ串」と「餃子」は名物として大きく掲載している
  • オムライス、唐揚げ、ナポリタン、サラダがセットになった「フタマタランチB」(968円)。蒲田店のランチは洋食で、ライス、スープがおかわり自由と満足度が高い
  • 11月にリニューアルした夜の新メニュー「贅沢な!ポテトサラダ」(528円)。“プチ贅沢”を意識してイクラを盛り付けたビジュアルが女性に人気で、高い注文率を誇る

時代に合った業態を開発し、既存店舗の底上げも図る

 ダイヤモンドダイニングはこれまで、創業者・松村氏の指揮の下、“攻め”の姿勢を貫いてきた。しかし、現在は「凡事徹底(当たり前のことをやり切る)」をキーワードに、部署・部門の再編成や業務プロセスの見直しのほか、メニュー開発や集客経路の分析をしながらエリアや業態の特性を見極め、新たな利益構造の創出に注力している。「この状況下では昨年対比を重視するのはナンセンス。それよりも今後、特に都心の夜営業は元に戻らないとした上で、新しい利益構造にのっとった業態を開発していく必要があります」と林氏。同社では、去る9月の合併を経て新規事業プロジェクトチームを設立。通常は出店エリアに合わせて業態を考案するが、現在の消費者ニーズやトレンドを踏まえて先に業態を開発し、その業態が合う立地や物件を選ぶという取り組みを始めている。

 さらに、開発した新業態は既存の店舗で実験的に営業し、利用客の反応を見ながら、完全オリジナルの出店に落とし込んでいくことも。2020年11月から「酒場フタマタ 浜松町店」のランチタイムで実践している「ステーキ五郎」もその一例だ。「ステーキ五郎」は、バル業態「ワインホールグラマー」で提供しているステーキのノウハウをもとに、二毛作のランチ業態として生まれた新ブランド。モヤシなどの野菜を山盛りにのせたステーキを、シングル(150g/980円)、ダブル(300g/1660円)、1ポンド(450g/2200円)の3サイズで提供する。「当初は浜松町店も洋食ランチを実施していましたが、さまざまな面からメニューを見直し、変更しました。洋食の出数は1日30~40食程度でしたが、ステーキになってからは1日85食で売上も大幅にアップ。メニューが一元化されるためオペレーションの負荷も軽減されました。女性のお客様も多く、目的来店を誘導できる強みを感じています」と林氏。浜松町店が軌道にのれば他の「フタマタ」での実施や、専門店として郊外へ出店する可能性も大いにあるという。

 こうした流れについて、林氏は「合併により、組織を横割りにして一緒にやっていこうという方向性が明確になりました。ダイヤモンドダイニングは100の業態を展開してきた企画や仕入れの力、ゴールデンマジックは居酒屋運営で培ったオペレーションや営業力。互いの強みを生かしながら、相乗効果を発揮できています」と語る。

 そんな中で、11月24日には東京・赤羽に新業態「東京カンカン市場」がオープン。一斗缶を使ってカキやズワイガニなどの海鮮を調理する「カンカン焼き」を売りに、注文はモバイルオーダー、会計はQRコードやクレジットによる電子決済、ドリンクは持ち込み可能で、電子マネー対応の自動販売機も設置予定など、新しい生活様式に合わせた非接触型を徹底している。「人件費を抑え、来店動機につながる食材にお金をかけるという、当社のこれまでの居酒屋とは真逆のFL構造になっています」と林氏。

 このように新しいニーズに合った業態を生み出し、その業態に適したエリアを精査する方法を始めたことで、新規出店のリスクを減らしつつ、既存店舗の転換・ブラッシュアップが容易になった。「社内の動きはこれまで以上に活発になっています。今後も新規事業プロジェクトチームを筆頭に、一丸となって挑戦していきたいです」と、林氏は前向きに語ってくれた。

【Store Brand】ステーキ五郎
アメリカ産ミスジのステーキにモヤシやキャベツなどの野菜を積み上げた“ラーメン次郎インスパイア系”のステーキ業態。二毛作のランチ業態として開発され、新橋、赤坂、浜松町などで展開し、話題を集めている。

  • 提供メニューはステーキのみ。野菜、ニンニク、脂(バター)の量や生卵のトッピングなど、自分好みにカスタマイズできる
  • 「酒場フタマタ 浜松町店」のランチタイムには、のれんや看板で「ステーキ五郎」をアピール。連日、ビジネス層でにぎわう

【Store Brand】東京カンカン市場
モバイルオーダー、クレジットなど電子決済、ドリンク持ち込み可能、電子マネー対応の自動販売機も設置予定など、非接触サービスを徹底した新業態の海鮮居酒屋。11月24日、東京・赤羽に1号店をオープンした。

  • 料理の売りは一斗缶を使ってカキやカニなどの海鮮を調理する「カンカン焼き」。自宅用や贈答用にECサイトでも販売
  • 赤羽店は全81席。ドリンク持ち込み可能にすることで人件費削減を実現。赤羽は住宅も多く、ファミリーの需要も見込む
第二営業本部 統括部長 林 拓未氏
2012年に株式会社ゴールデンマジック入社。「九州熱中屋」の店長を務めた後、部長として新規出店、店舗管理を担当。現在は「酒場フタマタ」「やきとり○金」などを統括する。

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