新業態に挑む外食チェーン③ 株式会社レインズインターナショナルCWカンパニー
株式会社コロワイドは1963年に設立。1977年に居酒屋「甘太郎」を出店し、外食事業をスタート。その後、積極的なM&Aでグループを拡大。2012年にコロワイドグループの1つとなった株式会社レインズインターナショナルは、1997年に焼肉「牛角」をオープン。その後、国内外で「牛角」を展開するほか、「しゃぶしゃぶ温野菜」「かまどか」などを運営する。
居酒屋業態で食事需要の取り込みを強化。既存店を活用して新たな売上も創出
居酒屋からの業態転換に既存メニューの蕎麦を活用
1977年に1号店の居酒屋「甘太郎」をオープンした株式会社コロワイド。「食」の総合プロデュース事業会社として、2600を超える飲食店を運営する(FC含む)一方、M&Aで飛躍的な成長を遂げた。そのグループの1つである株式会社レインズインターナショナルは、焼肉チェーン「牛角」のほか、居酒屋、しゃぶしゃぶなど多様な業態を展開している。
現状について、「飲み会、特に大人数の宴会がなくなり、居酒屋業態は厳しい状態が続いています」と話すのは、株式会社レインズインターナショナルCWカンパニー運営本部第一事業部マーケティング企画担当の白戸滝一氏。とりわけ、リモートワークなどの影響でオフィス街の店舗は売上が激減した。「店舗によって状況は異なるので、業態ごとの対策ではなく、各店舗の環境や状況を見て、いかに席を埋めるか、売上を取るか、戦略を立てなくてはなりませんでした」(白戸氏)。そのため、本部では話し合いを重ねたという。
そうした中、食事がメインの業態では比較的客足が戻っていることから、戦略の1つとして食事面の強化を図ろうと、「地酒とそば・京風おでん 三間堂」のオフィス立地の店舗は、業態のリニューアルを決断した。従来は、こだわりのだしで煮込んだおでんと手間をかけた和食で日本酒を楽しみ、シメにそばを食べるスタイルだったが、「シメのそばに着目し、食事需要を取り込むそばメニューをメインに、お酒も楽しめるそば専門店へと進化させることにしました」(白戸氏)。
そして、2020年8月20日、東京・新宿のエルタワー店を「蕎麦処 三間堂」としてリニューアルオープン。新宿の高層オフィスビルの地下にあり、店内は落ち着いた和の雰囲気で、個室と半個室で構成され、男性ビジネス層を中心に多くの常連客でにぎわっていた。ただ、仕切りを外せば大人数にも対応できるため、企業の宴会利用が多く、その需要が消えたコロナ禍のダメージは大きかった。そこで、「内装はそのまま生かし、急ピッチでメニューの考案と改訂を行いました」(白戸氏)と、リニューアル決定後、約1カ月でオープンにこぎつけた。
リニューアル後は、これまで1種類のみだったそばを時間やシーンに合わせて提案できるよう、そば粉の配合・食感・太さを変えた3種類を用意。ほどよい硬さで食べ応えがある「藪そば」は、ランチ一番人気のそばと小丼のセットなど、グランドメニューのほとんどに使用。そのほか、太くてコシが強い「平打ち」と、石臼挽きのそば粉を使い、のどごしが良い「細打ち」のどちらかを選べるメニューも用意。食事メインの人には「平打ち」、飲んだ後のシメには「細打ち」をおすすめしている。現在、そばメニューは30種以上用意し、「かけそば」(700円)など定番のほか、板そばを3種類のつけだれで味わう「三昧そば」(1300円)、ぜいたくなウニソースをかけた「磯雪そば うにソース」(1100円)、パスタ風の「大葉じぇのべーぜ」(1000円)など、創作そばも新たに投入。価格は700~1500円とリーズナブルに設定している。
オフィス街に人が戻ってくるに伴い、特にランチの利用者が増加。「そばが本格的でおいしいという声も多くいただき、そば好きの新しいお客様も増えました。食事で使えるそば専門店という認識が高まっていると感じています」と、店長の松下充氏もリニューアル後の手応えを語る。「そばの種類を迷っているお客様には、それぞれの食感など特徴を説明し、コミュニケーションのきっかけにしています」(松下氏)。また、想定以上に女性が増えたことから、メニューブックには女性に人気のある創作そばの写真を入れてアピールする。「狙い通り客数は伸びていますが、売上の80%がランチで、夜も6~7割が食事目的。以前は夜の客単価は3500円でしたが、現在は1日を通して1500~1600円にとどまっています」(白戸氏)と課題もある。
年末年始に向けてコースも用意しているが、これまでのようにビジネス層の大人数での宴会は期待できない。「少人数の宴会は増えているので、当日でもコースの注文をお受けしつつ、お一人様にも対応できるようにしています。また、2時間1500円の飲み放題は、アラカルトのお客様にも提供しています」(松下氏)と、満足度を高める取り組みを実施。現在、新宿エルタワー店に続き、赤坂店、丸の内店もオフィス街での食事利用の集客力を高めようと「蕎麦処 三間堂」にリニューアル。蕎麦専門店として着実に認知度を上げている。
【Store Brand】蕎麦処 三間堂
1998年に1号店がオープンした「地酒とそば・京風おでん 三間堂」を、シメで好評だったそばに着目し、本格的なそばを楽しめる業態としてリニューアル。「藪そば」「細打ち」「平打ち」の3種を用意し、丼や天ぷらのほか一品料理も提供。現在、新宿エルタワー店、赤坂店、丸の内店と展開。
既存店舗を有効に活用し、稼働率と売上向上を図る
コロナ禍で増える食事需要を取り込むもう一つの試みが、売上が苦戦して客席の稼働率が低い既存の居酒屋業態に、食事需要に特化した新業態を併設する“完全セパレートの間借り営業”。それが2020年9月29日、横浜・センター南駅近くにある居酒屋「いろはにほへと」店内に併設された「ハンバーグッド」だ。家では味わえないジューシーなハンバーグを、肩肘張らずに箸でカジュアルに楽しんでほしいという思いから開発した新業態で、主に近隣住民のランチ利用や、単身者の夕食などの利用を想定。「肉を挽いてこねる作業などを全て店内で行うことで、原価を抑えました」と白戸氏。客席だけでなく、厨房やスタッフも「いろはにほへと」と共用し、「店舗を有効活用して客席を埋め、売上を上げることが目的です。販促面でも店を知ってもらうための窓口を2つに増やすことで、集客力を高める効果を期待できます」(白戸氏)と説明する。スタッフは来店客に入口で「居酒屋の利用ですか?ハンバーグですか?」と聞いてから席に案内。売りの「グッドハンバーグ」(1100円)や「レディースセット」(1430円)などが人気で、オープン直後から予想以上に地元のファミリーや女性グループなどが多数来店。そのため、早くも11月26日には、新宿駅東口のビル内にある「いろはにほへと」の店内に2号店をオープンした。
さらに、同じ〝セパレート業態〟の動きとして、「秘伝焦がしたれ焼肉丼やきはち」も新たにスタート。もともとデリバリー専門で展開していたブランドで、特製のたれで香ばしく仕上げたカルビがたっぷりのる「牛カルビ丼」(990円)や「豚丼」(790円)などが売り。11月19日に「うまいもん酒場 えこひいき 難波店」や「なにわ味贔屓屋 三宮店」「甘太郎 新大阪ソーラ21店」など、関西エリアの居酒屋5店舗で同時オープン。その後、「北の味紀行と地酒 北海道 藤沢駅前店」など、関東の居酒屋業態でも併設するかたちで続々始まっており、「今後も速いスピードで展開していく予定です」と白戸氏は話す。
「当社が運営する業態の中でも、若い世代の利用が多い『やきとりセンター』や『格安ビールと鉄鍋餃子 3・6・5酒場』といった大衆酒場は、比較的好調です。今後も業態転換を含め、日々変わる状況に柔軟に対応していきたい」(白戸氏)と、未来に目を向けながら取り組んでいく。
【Store Brand】秘伝焦がしたれ焼肉丼 やきはち
都内を中心にデリバリー専門で展開していた焼肉丼専門ブランドが好調だったため、居酒屋のセパレート業態として展開。11月19日に関西の居酒屋業態5店舗で同時オープン。肉やネギの増量、温泉卵のトッピングも可能で、男性ビジネス層に好評。
【Store Brand】ハンバーグッド
居酒屋「いろはにほへと」の店内に併設する形で、食事需要に特化したハンバーグ専門店。家では作れないジューシーなハンバーグを、ご飯と一緒に箸で食べるカジュアルさがコンセプト。地元住民のランチ利用のほか、単身者の夕食需要などを見込んでいる。
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