不動産オーナーと共同で、新しい収益構造の業態に挑戦!
BIRTH DINING by plein 【東京・麻布十番】
独立を志す若手シェフに経営を任せるスタイル
2017年9月、東京・表参道に週休2日の「Bistro plein」を出店し、繁盛店に成長させた株式会社PLEIN(プラン)。その後も店舗展開をしつつ、食を通した他業界とのアライアンス(提携)事業にも注力する中、昨年は新型コロナによる集客減に直面。代表取締役の中尾太一氏は「それまで作った企画書の多くを破り捨て、戦略を練り直しました」と語る。
コロナ禍でも収益が上がる業態として打ち出したのが、「michiru(ミチル) by plein UEHARA」(2020年7月オープン、東京・代々木上原)だ。「この店はいわば実験店」と中尾氏。すでにEC用の商品とし開発していたスパイシーカレー、キッシュ、シャルキュトリーを活用し、ランチでスパイシーカレーを提供し、テイクアウトとデリバリーも手掛けるほか、店頭で物販も実施。「トライ&エラーを繰り返し、コロナ禍での〝勝ちパターン〞を探りました」と語る。さらに、今年3月には客単価5000円のアフタヌーンティー専門店「Atelier(アトリエ) plein EBISU」(東京・恵比寿)を出店。昼営業&ノンアルコールながらアッパー層を集客できる高級業態で、新たな道を拓いている。
新業態を積極的に出店
そして、次なる一手が、複合型レジデンス「BIRTH IN-RESIDENCE 麻布十番」の1階にあったレンタルキッチンスペースを活用して今年4月にオープンした「BIRTH DINING by plein」(東京・麻布十番)だ。この店の特徴の一つが、ビルオーナーと共同で出店したこと。「コロナ禍で不動産業と飲食業は、貸主と借主の関係から家賃交渉の面で対立しやすく、その解決法を考えていました」と中尾氏。そんな折、中尾氏は旧知の仲だった株式会社髙木ビルの代表取締役社長・髙木秀邦氏から、同ビルのキッチンスペースの利用頻度が少ないことを聞き、飲食店として活用すれば、マンションの利便性や価値が上がることを伝えた。これに髙木氏が賛同し、髙木ビルがハード面(物件や設備)を、PLEINがソフト面(食材や人材)に関する出資を担当し、家賃も売上に応じて変動する仕組みにした。これにより、外出自粛などで店の売上が落ちれば家賃も比例して下がり、人気店に成長すればビル側が想定した以上の賃料収入を得られる枠組みを構築した。
ビルオーナーとタッグを組み、家賃変動制などを実現
そして、もう一つの特徴が、独立を目指す若手シェフに学びと活躍の場を与えていることだ。コロナ禍で独立するシェフが減っていることを憂慮した中尾氏。「独立半歩前プロジェクト」と銘打ち、店のシェフに29歳の竹内誉弥氏を起用した。昼は「michiru」と同じスパイシーカレー専門店、夜は竹内氏が手掛ける創作イタリアンを提供する〝ネオ食堂〞という二毛作に。PLEINと竹内氏は2年の専属契約(更新あり)を交わして、メニューやドリンクの内容、食材調達、販促、収支管理など、店舗の経営は竹内氏に一任しており、売上の一部をPLEINに支払う仕組み。PLEINの系列店からスタッフを派遣したり、PLEINの持つブランド力を生かせるなど、資金面や集客面での支援を受けながら、経営を実地で学べる構造になっている。
若手シェフに機会創出する「独立半歩前プロジェクト」
オープン後は、ほぼ毎日来店するマンションの入居者も多く、近隣住民の中には週4日通う常連もいる。テイクアウトやデリバリーも順調で、この店が気に入り入居を希望する人が増加するなどビル側にもメリットが生まれている。またシェフの竹内氏にとっては、外出自粛で売上が下がっても、家賃が変動制であることから負担が軽く、堅実な運営が実現できている。
中尾氏は今回の店舗をモデルケースに、不動産を含むさまざまな業界とのアライアンス事業を進める考えで、「若手シェフたちが活躍できる場を増やしたい」と意欲に燃えている。
東京都港区三田1-2-20 BIRTH IN-RESIDENCE 麻布十番1F