2022/01/06 繁盛の法則

手描きの壁画と手作り料理で“癒やし”を提供するビストロとは

東京・新宿にある「ビストロローブン新宿」は、こだわりのハンバーグとロールキャベツが売りのビストロ。店内には壁画アーティストでもある経営者・神谷氏の絵が描かれ、特別感のある空間も話題となっている。

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ビストロローブン新宿

Key Point

  1. ロールキャベツ、ハンバーグといった主力商品で定評を獲得
  2. オーナー自らが描いた壁画で独特の空間を創出
  3. 夜は前菜とワインを森の絵の中で楽しむというコンセプトを訴求

「街をおもしろくしたい」という思いから会社を創業

 店内奥の壁いっぱいに描かれた森の壁画が印象的な「ビストロローブン新宿」は、ロールキャベツとハンバーグを看板商品とするビストロローブンの4店舗目として、東京・西新宿に2021年12月にオープンした。この壁画は、経営者である株式会社カブトス代表取締役の神谷節(かみや せつ)氏が、約1カ月かけて水性絵の具で描き上げたものだ。神谷氏は美術大学を卒業し、在学中から壁画制作に携わってきた壁画アーティストでもある。2008年7月設立の同社は、飲食店経営、アートディレクション、空間プロデュース、壁画・絵画制作、不動産業など幅広い事業を行っている。その根幹にあるのは、「街をおもしろくしたい」という神谷氏の熱い思い。コロナ禍で飲食業が大打撃を受ける中、「ビストロローブン」としては最大規模となる30坪50席で新宿店を出店。自身が得意とする絵を描くことで、新宿店のテーマである“食とアートの融合”を目指している。

 神谷氏は1975年、東京・中野生まれで、クライアントからの要請を基に描く壁画制作を10年ほど続けてきたが、「このままでいいのか」と自問自答するようになった。自身の「街をおもしろくしたい」という信念に立ち返り、それを実現するためには、自分で店を作るしかないと思い始めた。そこで、「カブトムシのように、ゆっくりでもいいから前に進んでいきたい」という思いを込めて「カブトス」という会社を設立し、中学校の同窓生で、10年ほど洋食店で修業していた岩村誠秀(せいしゅう)氏に声を掛け、出店に向けて動き始めた。そんな折、たまたま知人から神奈川・藤沢の小田急線鵠沼(くげぬま)海岸駅の真向かいにあるビルの2階の居抜き物件を紹介され、2008年11月に「カブトスカフェ」をオープン。当初から好評だったのはハンバーグで、岩村氏が牛肉と豚肉の配合や挽き方などを工夫し、2日間煮込んだフォンドボーをベースにしたデミグラスソースをかけた自信作である。また、ジワジワと人気が出てきたのが、週替わりメニューの1つだったロールキャベツで、オーブンでじっくり焼くことで、箸でも切れるほどに柔らかく仕上げている。現在はハンバーグ、ロールキャベツともに、デミグラスソース、トマトソース、ホワイトソースの3種から好みのソースを選べるスタイルで提供している。

主力商品のデミグラスソースのハンバーグステーキ(昼1,450円、夜150g1,540円~)、トマトソースのロールキャベツ(昼1,150円、夜1,485円)。ともに昼はライスまたはパン、サラダ、スープ付きで提供する。温かい前菜の「ポルチーニ薫るアッシェパルマンティエ」(825円、ポルチーニ茸を加えたジャガイモと挽肉のグラタン風の料理)など、夜は前菜類約30品目をそろえる。森を描いた店内の壁画は、料理を引き立てるようにあえて落ち着いた色調に抑え、筆のタッチを活かして仕上げた。1人でキャンプに行き、森の中で食べる食事のおいしさに感動した神谷氏の体験も基になっている

ロールキャベツをメインに都内での店舗展開を開始

 「カブトスカフェ」は、周辺の住宅街から幅広い層を集客する人気店となったが、神谷氏と岩村氏が東京出身ということもあり、人口が圧倒的に多い都心のオフィス街で勝負したいという思いを強めていった。そこで自分たちで歩いて物件を探し始め、JR田町駅からほど近い場所で、貸し物件の張り紙が出ていた2階建ての古民家を見つけた。以前は人家だったが、その後フランス料理店が入っていた物件で、1~2階合わせて20坪弱32席の店舗に全面改装し、2013年9月に「ビストロローブン三田」としてオープン。東京進出に際し、「オーブンで焼くロールキャベツ」を前面に打ち出そうと、「ローブン」という店名を考案した。また、以前は小さめのロールキャベツ2個で提供していたが、肉120gをたっぷりのキャベツで巻いた、インパクトのある大きさのロールキャベツ1個に変更した。

 三田店も徐々に認知度が上がって軌道に乗り、特にランチタイムにはウエイティングが出るほどの集客力がついてきた。加えて同社では2016年から不動産事業も開始したため、不動産のオーナーたちと親しくなり、物件情報も入ってくるように。神谷氏は飲食部門の人材を強化したいという考えから、2018年9月に12坪カウンターのみ15席の「ローブン八丁堀」(東京・八丁堀)を、2019年6月には新築マンション1階に20坪28席の「ビストロローブン芝公園」(東京・芝公園)を出店した。基幹商品のロールキャベツとハンバーグ以外は、飲食部統括シェフの岩村氏の監修の下、各店の料理長の裁量に任せ、トラディショナルな三田店、庶民的な洋食店風の八丁堀店、カフェのように開放的な芝公園店と、各店で特徴を出した店づくりをしてきた。都内の3店舗の運営に集中するため、藤沢の「カブトスカフェ」は2019年12月に閉店した。

 コロナ禍による緊急事態宣言下では、3店とも完全に休業して感染拡大防止に協力。2020年末ごろに、東京の新宿野村ビル地下1階に出た空き物件の情報が持ち込まれ、逆境こそチャンスと捉えて大きな挑戦をする決意を固め、2021年9月に現物件を契約した。商品面では新作メニューを入れ、ランチはロールキャベツ、ハンバーグに加え、メンチカツ、ドライカレーを提供し、想定客単価は1,300円。夜は前菜約30品目とフランス産を中心とするワイン約50種をそろえ、客単価7,000円を想定している。

 同店が個性的なビストロとして支持を獲得し、新たな挑戦に結び付けた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 時間を掛けて作るロールキャベツ、ハンバーグといった主力商品で確固とした評価を獲得している。
  2. 壁画アーティストである経営者の技術を生かし、独特の空間を創り出している。
  3. 夜のメニューを強化し、前菜とワインを森の絵の中で楽しむというコンセプトを打ち出している。

「ストレスがたまりやすいオフィスワーカーさんたちに、当店のアートと料理で心を癒やしていただきたいです。それを5年、10年と継続し、1つの歴史を刻んでいきたいです」と、神谷氏は新宿店に掛ける想いを語っている。

ビストロローブン新宿
住所
東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビルB1F
TEL 03-6302-0770
営業時間
11:30~14:30(LO.14:00)、17:30~23:00(LO.22:00)
定休日
不定休

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