2023/10/11 特別企画

時代をリードする経営者は、どこまで進化を続けるのか。株式会社BigBellyの代表取締役・大林芳彰氏

2011年に東京・池袋で「AGALICO(アガリコ)」を開業した、株式会社BigBellyの代表取締役・大林芳彰氏。日本居酒屋協会会長も務める彼に、これまでの数々の挑戦や開業を考えている人へのアドバイスを聞いた。

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遅れて来た飲食人、ホッピング客の心を掴む

大林芳彰 氏
東京都出身。グローバルダイニングを経て、2011年に東京・池袋でオリエンタルビストロ&ワイン「AGALICO(アガリコ)」を開業。現在は、アガリコの他、アガリコ餃子楼、酒トうどん大福、大衆鰻酒場いづもなど25店舗を展開。飲食店のプロデュース、海外進出のコンサルティングなども行っている。日本居酒屋協会会長。

 大林さんが、飲食の世界に飛び込んだのは26歳の時。それまでは住宅メーカーの営業だった。当時のテレビドラマのロケに使われ、人気が沸騰していたモンスーンカフェに行ったときのこと。食べたことのない料理なのに、とてもおいしい。興味を持った大林さんは、ここでアルバイトして、この料理を作れるようになりたい。そう思い立ち、すぐに行動に移す。その場でモンスーンカフェを経営するグローバルダイニングにアルバイトとして入社。モンスーンカフェで働き始める。

 「普通より遅いスタートでしたから、先輩は自分よりも若い人ばかり。20歳そこそこの先輩に『何やってるんだ!』と怒鳴られながら修業していました。内心、すぐにお前よりも仕事ができるようになってやると思ってね」。

 大林さんはその3年後、一旦グローバルダイニングを離れ、本場のアジア料理を学ぶためタイへ渡る。グローバルダイニングは社員になるのが難しい会社だという。大林さんは帰国後、グローバルダイニングに戻ると、本場の知識と経験を武器に社員となる。そして料理長を任されるようになった。立て続けに4店舗の売上を伸ばし、社内一の稼ぎ頭になっていく。

 「グローバルダイニングという会社は、各店舗の運営に社長はあまり口出さずに、従業員に任せてくれる。でも、実力主義だから結果は問われるんですよ。だから経営感覚が磨かれる。ここで学んだことは、独立してからとても役に立ちました」。

 独立したのは2011年。アガリコをオープンしたのはその年の6月。あの東日本大震災の3カ月後だ。

 「計画停電の最中、こんな状態でお客さんが来てくれるんだろうかと心配だったのですが、比較的順調なスタートを切れました。当時、池袋の和民が朝10時まで営業して繁盛していたんですよ。池袋は夜中のニーズはまだまだあると思ったので、そこを狙って夕方6時から朝8時まで営業することにしました。私自身もサラリーマン時代、夜何か食べたいと思った時、気軽に行けてちょっと飲める店が欲しいと思っていましたから。それから池袋は、酒場をホッピングするお客様が多いという分析もしました。いわゆるはしご酒です。だから一人でも入りやすいように、カウンターのある店がいいと考えました。キッチンを通りに面するように作って、道行く人にも声をかけやすくしました。一杯だけで帰ってもいいんです、毎日来たくなるようなお店にしたいと思って作ったのがアガリコです」。

コロナ禍でも発揮された、常に課題解決に挑戦する姿勢

 アガリコは、深夜のホッピング客の心を捉え、さらに大林さんの作る本格アジア料理が人気を呼び、大成功する。オープン後1年の間に、なんと3店舗を出した。

 「多店舗展開を狙っていたわけではなく、たまたまうまく行っただけ。いい人が集まったことも大きい。店長ができる人に任せて私は現場に入る必要もなくなった。暇だからお店のプロデュースでもやろうかなと思って、そうSNSに書いたら、本当に仕事が来て、気がついたらアガリコが10軒、プロデュース店が4〜5軒という状態に割とすぐなりました」。

 こんな話を聞くと、大林さんはなんて幸運な経営者なんだろうと思ってしまうが、実はその裏には計算された準備と努力がある。大林さんが経営する株式会社BigBellyの案内を見ると、展開している店舗の中に「串カツ田中」がある。

 アガリコオープンの約1年後に、フランチャイズのノウハウを勉強するためにフランチャイジーになり、現在も加盟店として数店舗を運営している。大林さんは、たまたまと言うが、実は先をしっかりと読んで準備を整えての前に進んでいることがわかる。

 「負けたくないからね。だからできるだけ準備はする。でもね、それほど先読みしているわけではないんですよ。アガリコ餃子楼を作った時も、最初は弟のためだったんです。弟が独立して店をやりたいと仕事を辞めてうちに入社してきた。料理もできなかった飲食初心者の弟に何ができるか、と考え、おいしい手作り餃子をつまみに飲める居酒屋業態を思いついたんです。餃子作りをとことん修業させて任せたら、なんと大繁盛店になって、今はアガリコより店舗数が多い」。

 アガリコはメニュー数が多く、調理のこだわりも多い。しかも当時は珍しかったアジア料理なので、誰でも作れるというわけではなかった。だから、腕のいい料理人が抜けると経営自体が難しくなる。その結果、10軒あったアガリコは徐々に減り、3店舗になってしまった。その課題をアガリコ餃子楼は、最初から解決していた。だからFC展開がしやすく、成功しやすかったのだろう。

 「そこで、アガリコのセントラルキッチンを作りました。これで、加盟店の負担はかなり減るはずです」。

 大林さんが、幸運なだけの経営者ではないことが、よくわかる。課題を発見したら、そのまま放置することは決してしない。常に進化し続ける経営者なのだ。コロナ禍でも、そんな大林さんらしさは発揮される。コロナだから仕方ないなどと思うことはなかった。

 「最初にやったのは、567(コロナ)をぶっ飛ばせ! と567円でドリンク飲み放題という企画をやりました。SNSで告知したら連日満席になって、テレビ局全局が取材に来ました。パンデミックが少し落ち着いて東京の感染者数が少なくなってきた時には、発表された感染者数に合わせてビールの価格が変わるという企画もやりました。感染が減るとそれだけ安くなるわけで、いわばコロナ感染予防を応援する形にもなりました。まあ、悪あがきというか、いろんなことをやりましたね。うどん屋で昼間だけラーメンを出してみたり、話題になりそうなこと、面白がってくれそうなことをどんどん考えては、実施してました」。

この時代に開業しようと考えている君たちへ

 コロナで変わったこともある。

 「商店街の方が、助成金のもらい方を教えて欲しいと私に聞きに来るんですよ。池袋でも個人店は高齢化が進んでいて後継者がいないから、私みたいな者も頼りにされるんです。コロナは、私たちに助け合って生きることの大切さを思い出させてくれたようにも思います。そのせいか、飲食業全体のこと、社会全体のこと、未来のこと、そんなことも考えるようになりました」

 そして、なんと大林さんは今年の統一地方選挙に、都民ファーストの会から立候補する。残念ながら僅差で落選してしまったのだが、コロナでいろいろと浮き彫りになった飲食業や商店街の脆弱(ぜいじゃく)さを改善していくためには、政治の世界に影響力を持つことも大切だという思いは、今もぶれていない。

 「日本居酒屋協会の会長になって、後継者問題や商店街の衰退など、いろいろな課題が耳に入ります。活気ある街づくりを考える必要性は、今や地方も東京も変わりません。私で力になれることがあるなら、やるべきだという思いが強くなりました」

 課題を放置しない進化する経営者は、ついに飲食業界全体の、そして日本の課題にも取り組もうとし始めている。いったい、どこまで進化するのだろうか。

 しかし、大林さんはこう言うのではないだろうか。そんな大層なことをしようと思っているわけではなくて、近所で困っている人の声が聞こえてきたので、それを解決するにはどうしたらいいかと考えただけだ、と。

 最後に、大林さんに、これから飲食店を開業しようと考えている人に、何かアドバイスすることはないか聞いてみた。

 「そうですね、今から始めるなら、料理ができるようになった方がいい。昔はそんなことは言わなかったけど、コロナの影響もあって人手不足状態が続いてますからね。ホールもキッチンもできるオールラウンダーになった方がいいです。それから、流行りの店を押さえておくこと。そういう店を真似しろというのではなく、知っておくことが大切なんです。お客様に聞かれたら答えられるぐらいには研究しておいてほしいですね。そういう情報は、お客様とのコミュニケーションにも生きるし、自分の視野も広がりますから。それから、経営者になるわけですから、数字の勉強もしっかりしておいたほうがいいです。原価管理などは、人任せにせず自分でするようにしてください。最後は、SNSを使いこなすこと。これ、今の時代、とても大切です。この4つを、開業前に身につけておくことをお勧めしておきます」。

取材協力:「アガリコオリエンタルビストロ 池袋本店」
株式会社BigBellyの代表取締役・大林芳彰氏
https://r.gnavi.co.jp/djucbcxc0000/
東京都豊島区池袋2-10-6 
050-5385-3741

※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」92号より転載

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