2026/09/14 コラボ企画

各地の出会いを一皿に。神奈川「鎌倉ふくみ」店主の池田さんが続ける「飽きない」店づくり

鎌倉で和食店「鎌倉ふくみ」を営む池田さん。京都で働いた経験から食材の力に気づき、農家、酒蔵、器の作り手を各地に訪ねながら、その出会いを料理へと落とし込んできました。店を続けるために大切にしているのは、自分自身が飽きないこと。食材、器、酒、人との出会いを重ねながら、鎌倉ふくみの料理は今も少しずつ変わり続けています。

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※スマイラー124号(2026年7月)より転載

文化のある街・鎌倉で、野菜の力を活かす

店舗内観

神奈川県鎌倉市で和食のコース料理を提供する「鎌倉ふくみ」は、2018年にオープン。店名の「ふくみ」には「幸福を含む」などの意味が込められているといいます。

オープン前、池田さんは京都で料理の修業を積んでいました。「京都に行った時に、文化のある場所で店をやりたいと思ったんです」

歴史ある街並みと食文化が根づいた京都での経験が、同じように文化的な土壌を持つ鎌倉という土地への思いにつながっていったといいます。

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じっくり揚げた無農薬にんじんの料理

料理人としての転機のひとつは、その京都にいた頃の野菜との出会いだったといいます。「市場の野菜はあんまりピンと来なかったんです。でも田舎に行った時の、直売所で買った野菜が全然違って」

それまで野菜はコースの中の「歯車の一つ」程度に捉えていたという池田さんが、食材そのものの力に目覚めた瞬間でした。

取材当日も、隣町藤沢市の農園・柿右衛門農園の無農薬にんじんが登場しました。じっくりと40分以上揚げることで引き出された凝縮した甘み。素材の力がシンプルな調理法でそのまま皿に表れる、印象的な一品でした。

旅先の出会いを、鎌倉の一皿に変える

国内各地から集めた器

池田さんが大切にしているのは、「仕入れ」ではなく「出会いを持ち帰る」こと。伊賀、奈良、大阪、山形、福島、佐賀、長野など、国内各地に足を運び、農家や生産者、器の作り手との縁を育ててきました。

器への関心もその一環です。取材当日、最初に出てきた「いかめし」は、スルメイカに新潟・上越産のもち米を詰めて炊き上げ、伊賀焼の作家の椀と共に提供。鉄分を帯びたグレーの釉薬が印象的で、料理の端正なたたずまいを一層引き立てていました。

いかめし

また、佐賀・唐津を訪れた際には、お店のインスタグラムを見た横浜の割烹店主が突然メッセージをくれて、地元の魚屋を紹介してもらったといいます。「会ったこともないのに、ここ行ってくださいって。それで寄ってみたら、すごく魚に対して情熱のある方で取引をさせてもらうことになりました。魚の処理は抜群に良くて、いつもどんなお魚が届くのかなと楽しみにしています」

お酒についても、訪れた土地や生産者との出会いから扱うものを選びます。「お客様に、これはこの土地に行った時に出会ったんですよ、と話せることが大事」と語ります。料理だけでなく、酒も器もすべてに「出会いのストーリー」が宿っているのが、鎌倉ふくみの料理なのだといいます。

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料理は「あるもの」から組み立てる

そうして提供される料理は、確かな割烹の技術をベースにしながら、どこか遊び心や抜け感がバランスよく取り込まれています。その発想の根底には、修業時代のまかないの経験があると語ります。「あるものでなんとか作る」という積み重ねが、今の料理のベースになっているそうです。

鎌倉ふくみ 店主 池田吉正さん

「頭の中だけで料理を考えると、どこかで食べたもの、他の店の真似になってしまう。なので、手元にある食材や器から料理を発想するようにしています。あるものあるもので考えると、自分らしい料理ができて、意外な組み合わせが生まれたりするんですよね」

また、こうした発想で動き続けている理由は、お客様のためだけでなく、自分自身のためでもあるようです。「自分、飽きやすいんですよ。だから、飽きないように飽きないように、とにかく自分を奮い立たせるために動き続けている面もあると思います」

旅に出る、食べに行く、器を買う、新しい発酵調味料を試す。それは単なる趣味ではなく、店を続けるための原動力になっているといいます。塩麹や玉ねぎ麹、黒酢など、周囲との出会いから取り入れた調味料も数多く、料理の幅は少しずつ、しかし着実に広がり続けています。

「どんどんいろんな出会いが欲しくて。まだ刺激が足りないですね」と笑う顔には、飽きないための努力というより、心底楽しんでいる様子が見えました。

これからも、挑戦を続ける

「もっと挑戦したい。ダメでもいいからやってみる。そういう姿勢が大事だと思うんですよ」

取材の最後に、池田さんはそう話してくれました。店を続けることは、同じことを繰り返すことではないと池田さんは考えています。旅で出会った食材や器を持ち帰り、自分の手で一皿に落とし込んでいく。その積み重ねが、店の個性になり、7年間の歩みになっています。店主が動き、学び、出会い続けること。それが個店を長く続けるための、ひとつの現実的な答えなのかもしれません。

文:U・S・K
ライターとして、地域・食・暮らし・医療など幅広い分野で取材・執筆を行う。人や場の魅力を丁寧に掘り下げ、読み手にわかりやすく伝える記事制作を心がけている。
鎌倉ふくみ
住所:神奈川県鎌倉市扇ガ谷1丁目1-29 大崎ビル2階
https://r.gnavi.co.jp/4x550nta0000/

<店舗データ>
料理ジャンル:日本料理/和食/割烹・小料理
営業時間:昼 11:30〜14:30/夜 18:00〜21:00
定休日:月曜 ※月曜が祝日の場合は翌火曜休み
席数:15席(カウンター5席・テーブル10席)
アクセス:鎌倉駅西口から徒歩3分


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