2018/07/17 特集

旅行者、出張のビジネス層を店に呼ぶ! 観光客を惹きつける店(2ページ目)

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県外の常連から食材情報を入手。生産者と密につながり、想いやこだわりも発信

【福岡・小倉】LA NATURE OHNO

市場の鮮魚店や仲買人から仕入れる鮮魚。魚料理を目当てに来店する人も多いという

野菜や鮮魚の産地を明記し、観光客に選ぶ楽しさを提供

大野政文・智子夫妻が、JR小倉駅から徒歩約10分の場所に、2014年4月にオープンしたビストロ。「都心部に比べると、まだそれほどビストロが浸透していない北九州エリアにおいて、素材の味を活かしたあっさりめのフレンチを、コース料理中心に提供しています」(政文氏)。カトラリーに箸も用意する気軽さも受け、50~60代を中心にリピーターを獲得している。

観光客や出張客と、地元客の割合は4対6。「常連さんは県外の方が多いですね。食通のお客様も多く、生産者や食材の情報を教えていただくこともあります。今、店で使っている野菜やフルーツは、様々なお客様からの情報をもとに福岡や大分の農家さんに会いに行き、直接仕入れているものです」と、政文氏。最近リストに加わった国産ワインもその1つ。長野県在住の常連から聞いた長野県のワインイベントに足を運び、実際にワイナリーにも訪れて入荷を決定したという。また、智子さんも、「牛肉や豚肉などに関しても、生産者さんに教えていただいた素材に関する情報を、接客時に積極的に話すようにしています。作り手の想いを伝えることも私たちの仕事と思っています」と言う。さらに、店のテーマである「美と健康」に合う生産者と出会えるように、常にアンテナを張りめぐらせ、来店客と積極的に交流している。

また、「ここの魚はおいしい!」「魚を食べに来た」などと評判の魚介は、毎朝訪れている中央卸売市場の鮮魚店や仲買人から仕入れ、看板食材として定着。魚介は決まったものではなく、“その日のいいもの”を選ぶため、メニューは文字通り日替わり。タイやスズキなどのポワレや、春の旬ならサワラをレアで提供したり、新鮮で上質の料理が好評だ。

「特に県外からいらっしゃる方には、選ぶ楽しみも感じてほしいので、黒板でおすすめするメニューには産地を明記するようにしています」と智子さん。Facebookなどで生産者や食材情報を積極的に発信しているが、料理のビジュアルは来店時のお楽しみにとっておいてもらおうと、あえて画像の掲載は最低限に抑えている。大野夫妻にとって観光客は、全国の食に関する情報をもたらすなど刺激を受け、小倉でフレンチに挑戦するシェフの個性を後押しする貴重な存在。今後もリピーターづくりに力を注いでいく。

「玄界産天然ダイのポワレ ワタリガニのクリームソース サフランリゾット添え」。あっさりめの、やさしい味が評判を呼んでいる
「山口県産うにと無農薬人参のムース オマールエビのジュレ添え」。夏は鮮度のよい「地うに」を使った料理も提供。特に人気の料理の1つ
野菜や果物は休日に九州各地の農園を訪ね、仕入れルートを開拓したものだ
熊本県阿蘇産のあか牛など、こだわりの食材は、ぐるなびでも紹介
「自家製サーモンのマリネとアボカドのタルタル カリフラワーのムース お花のサラダとともに」。パリで修業した大野氏。センスが冴えわたる料理の数々は、記念日利用でも好評
日替わりのアラカルトが書かれた黒板には産地も明記。選ぶ楽しみも提供している
2018年6月には仕入れルート開拓も兼ねて、長野県で開催されたワインイベントへ。
現在、提供する4種の長野産ワインは、黒板でもしっかりアピール
(右)Facebookでは食材の仕入れルートを開拓したときの様子や、その日の食材の入荷状況などを発信(左)自社のホームページでは、料理や食材の情報などをメインに、生産者の紹介も掲載
店内のPOPで自社ホームページをアピールし、さらなる認知向上を図っている
オーナー 大野 政文氏(右) 大野 智子氏(左)
料理と笑顔の接客が評判の大野夫妻。政文氏は国内の洋食店、フランス料理店で修業後に渡仏。智子さんも調理師として現場経験があり、現在は接客のほか自家製ドリンク作りなどを担当。
LA NATURE OHNO
福岡県北九州市小倉北区船場町6-1 麻布ビルB1
フランスのワイン倉庫をイメージした店内で体に優しいフレンチを提供。記念日の利用も多く、コースは5,400円~。沖縄産アグー豚などを使用したアラカルトもある。ワインはBioワインのみを提供している。

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