※スマイラー112号(2025年6月)より転載
ナポリタンよりアツい「人が育つ現場」スタッフの成長がサービスの“質”向上へ
NPS改善のカギ!主体性を育むLINE指導と体感ロールプレイング
オープン当初の忙しさは目まぐるしく、初月の売上は2,000万に迫る好成績を記録した。しかし、その裏側でアンケートによる顧客評価は芳(かんば)しくなく、その指標として活用している「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」は、厳しい数値であったという。
当時を西里店長は「とにかく目の前の業務を回すことで手一杯で、育成や指導にまで手が回らなかった」と振り返る。そこで立ち上げたのがLINEによる「ワンポイント講座」だった。
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飲食店が人手不足になる原因と5つの解決策を教えます!
この講座は、スタッフに接客方法などの情報を共有するものだが、「一気に詰め込むと“やらされ感”が出てしまう」との考えから、毎日1テーマずつ発信した。
例えば、ラストオーダー後に来店されたお客様への対応や、『味を濃いめにしてほしい』といった要望にどう応えるか。そうした実際にその日に起きた出来事をもとに、即時でテーマを決定し、タイムリーに届けた。
この取り組みの狙いについて西里店長は、「マニュアルにはない接客対応を共有しながら『こんなふうにお客様のために考えて行動していこう』『こういう人をパンチョでは大切にしているんだよ』ということを伝えるようにしていました」と話す。
こうすることで、スタッフは安心して行動を起こすことができるようになり、何を大切にすればいいのかがわかるから不安なく判断できるようになる。そんな情報共有の積み重ねが、現場の改善と一体感につながっていった。
そして、改善のもう1つの柱がロールプレイングである。ホール接客におけるスタッフの立ち居振る舞いを見直すため、西里店長が自ら「店員役」となり、スタッフに「お客様役」を体験させた。「来店のタイミングで、わざと背中を向けて『いらっしゃいませ』と言って、どんな気持ちになるか、実際に感じてもらうようにしました」と語る。同店では、お客様の満足を高めるうえで「お出迎え」と「お見送り」は特に重視している。
なぜなら、モバイルオーダーとセルフ会計を導入しているため、一般的な飲食店と比べて、お客様との接点が少ない。その中で、西里店長は「オーダーや会計で使う接客時間がないぶん、その時間をホスピタリティとしてお客様に還元すればいい。だからこそ、入り口での出迎えや見送りに注力しようと考えました」と話す。
いまでは出入り口での挨拶はもちろん、キッチンスタッフも客席に向かって「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」と声を掛かけるのが当たり前の光景となっている。ファイブグループでは、店舗評価の基準として「また来たいKPI」という独自の指標を設けている。
これは、お客様アンケートをもとに、「このお店にまた来たい」と思っていただけたかどうかを数値化したものだ。「普通に満足してもらうだけでは、『また来たい』と思っていただけません。だからこそ、お客様の期待を超える接客が大事だと思うんです」。
その実現に向けて、入り口での出迎えや見送りといった接客に力を入れる際には、「先手必勝、終(しま)い圧勝」という共通言語を用いて、チーム全体にその価値観を浸透させていった。
このような柔軟な取り組みによって、現場スタッフが主体的に考え、動ける環境が整っていった。同店はオープンから1年が経過した今も、オープン景気で打ち立てた売上から大きく落とすこと無く好調をキープしている。「話題性」ではなく、「また来たい」と思わせる理由が、しっかりと根づいている証だと言えるだろう。
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「ギブ アンド ギブ」が育む信頼と成長
「見返りを求めずに与えていくことが、結果的に一番返ってくる」。この「ギブアンドギブ」の思想も、西里店長の人材育成スタイルを語る上で欠かせないキーワードだ。「与える」とは、モノではなく、時間や言葉である。日々のちょっとした声掛け、休憩中の会話、面談の場など、あらゆる機会でスタッフに寄り添う。
こうした姿勢が組織内に浸透することで、スタッフ同士による自発的な支援の輪が自然と広がっていく。あるスタッフが急な体調不良でシフトの交代を依頼した際には、LINEでの呼びかけからわずか3分で代役が決まったり、わざわざ外出先から駆けつけたスタッフがいたという。
このような行動の背景には、西里店長が重視する「貢献意欲」の存在がある。「貢献意欲とは、“お店のため”ではなく、“自分の人生のために働いている”と実感できたときに自然と生まれるものなんです。組織のために頑張れと言っても、やはり限界がある。人は、指示されるよりも、自分で気づいたときに変わるんです」と西里店長は語る。
西里店長の人材育成スタイルは、徹底して「自分で考える人を育てる」ことに重きを置いている。「スタッフが自分で“おかしいな”、“もっとこうしたい”と気づけるようにするのが私の役割です」。その根底にあるのは、トップダウンで命令するのではなく、共感と納得を引き出す巻き込み型のアプローチだ。「パンチョで働くならこれを大事にしてね、と伝えるのではなく、自分の人生が豊かになるから大事にしてという伝え方をしています」。
また、パンチョの理念をスタッフの行動に落とし込むため、同店では入社時だけでなく、半年後にも同じ内容のオリエンテーションを実施している。「実際に働いてからもう一度話を聞くと、伝わり方が違うんです」と西里店長は自身の経験を基に話す。
西里店長がスタッフに求めるのは、単なる業務習得ではなく、一人ひとりが主体的に考え、行動できる人に成長していくことにある。
「不機嫌禁止」感情の管理がチームの空気を変える
オリエンテーションでは、同社が大切にしている“人”としての在り方を示す『ファイブウェイズ』の考え方も共有している。その中にある、「不機嫌禁止」という価値観をスタッフに教えるときは、「不機嫌な人は、その場にいないほうがマシ」と、あえて厳しい言い方で伝えているという。なぜなら、チームで働くうえで、とても大事なことだからだ。
人は誰しも、思い通りにならないときやキャパシティーを超えたときに無意識に不機嫌になる。しかし、この「不機嫌禁止」といった価値感を日頃から伝えておくことで、スタッフは自らその状態に気づき、できるだけ早く切り替えることができるようになる。
実際に、これを伝えると、行動がすぐに変わるスタッフも多い。店内では、不機嫌な空気を感じ取ったスタッフ同士が「今ちょっと不機嫌になってない?」と声を掛け合うこともある。西里店長は、「私の言葉を受け入れてくれて、賛同してくれる。これは私が目指している人材マネジメントの形でもあるんです」と語る。
スタッフが「楽しそうに働く姿」が西里店長の原動力
パンチョでの10年間で、100人以上のスタッフの入社から卒業までを見届けてきた西里店長。 「店長にこう言われたのがきっかけで、変わることができたんです」、そんな言葉を聞いたときが、何よりも嬉しいと話す。「自分の言動が、その人にとって何かしらの支えになれたのだと実感できた時、本当にやりがいを感じます」。
“人の心に在り続ける”これは、西里店長の志であり、働く原動力でもある。その思いがあるからこそ、西里店長は大規模店舗である「越谷4号バイパス店」の立ち上げにも自ら手を挙げた。「大きな店舗で、多くの人と関われるチャンスだと思いました」。
実際、1年で50人ものスタッフと関わることができ、「10年で100人育てた経験の、半分を1年で経験できました。それが今、一番楽しい理由かもしれません」と話す。
現在、同店は驚くほどの低離職率を維持し、「辞めない店舗」としてファイブグループでも一目置かれる存在となった。「人が辞めないからこそ人が育ち、人が育つから店が強くなる。結果として、また新しい仲間が自然と集まってくるんです」と西里店長。
同店の取り組みは、こうした成果によって社内でも高く評価されている。その象徴が、ファイブグループ全体の成果発表会「C-1グランプリ」への選出だ。「人手不足の店舗が多い中で、うちは“人手過多”という真逆の状態。さらにアルバイトさんからの社員登用が3名、そこが注目されました」と西里店長。
店舗で取り組んできたスタッフの自主性を引き出す育成法が高く評価され、惜しくも優勝は逃したものの、1点差で準優勝という結果を残した。この発表を通じて、独自の育成スタイルが他店舗にも波及しつつあるという。「スタッフが辞めない店舗」、「貢献意欲の高いスタッフが育つ店舗」として、社内での存在感を確実に高めている。
「結局、私がこの仕事をやっている理由は、みんなが楽しそうに働いているのを見るのが一番うれしいからなんです」。取材の最後、西里店長はこのように言葉を結んだ。
本社住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-5-10 いちご吉祥寺ビル7F
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