2021/08/20 特別企画

国産ジビエ、再発見――おいしい&ヘルシー&売りになる!農山村を守る意義も(2ページ目)

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焼肉店ならではの強みを生かし、信州ジビエの魅力を発信

焼肉の家 マルコポーロ(長野・上田市)

シカの焼肉が大好評! 期間限定からグランドメニューに昇格

 有限会社シンコーポレーションが運営する「焼肉の家 マルコポーロ」は、1978年に長野県上田市で洋食レストランとして創業。1993年よりファミリー向け焼肉店に業態を変更し、その後、「地産地消」をコンセプトに、肉、野菜、米など信州産の食材にこだわったメニューを打ち出している。現在は長野県内に4店舗を構え、地元のファミリーを中心に集客する。

 長野県は、以前からジビエの消費拡大に注力しており、自治体の後押しもあって2015年には大手スーパーでシカの精肉販売がスタート。取締役社長の平山仁哲氏は、「その当時からジビエに興味はあったものの、仕入れ値が高かったため、一度は諦めていました」と取り扱いをためらっていた。しかしその後、三重県で飲食業を営む友人からもらい受けた夏の雄ジカを食べ、おいしさに感動。「滋味深く、牛・豚・鶏にはない味を体感し、何とかチャレンジしてみようと思いました」(平山氏)と、2017年4月より期間限定メニューとしてシカ肉を提供。すると、予想を超える反響があり、グランドメニュー化に至った。

「シカ背ロース肉」は1人前100g。肉はパサつきを防ぐためゴマ油でコーティングし、香り付けのローズマリーを添えて提供。シカのうま味をダイレクトに伝えるため、極力シンプルな味付けにしている

 当初は、シカの解体処理施設である信州富士見高原ファームからのみ仕入れていたが、現在は供給の安定を図るため、同じく長野県内の信州わかほジビエと長野市ジビエ加工センターを加えた計3カ所から直接購入。仕入れ先を複数にしたことで、メニューを通年提供できる体制が整った。仕入れ先である処理施設の選定においては、長野県が独自に策定した「信州ジビエ衛生管理ガイドライン・衛生マニュアル」に沿って処理や衛生管理を徹底する施設を選び、必ず平山氏自ら見学して安全性を確かめてきた。最新の施設では、トレーサビリティーのほかセシウムの含有量などまでチェックしてくれるという。

店内のポスターやポップでもシカをアピール。ジビエの魅力や安全性を伝え、オーダーを促している

シカ肉は月間400食を提供。イノシシ肉も好評

 シカ肉はロースを1本単位で仕入れ、セントラルキッチンで200gのポーションに切り分け、真空パックで急速冷凍。各店舗へ運び、「シカ背ロース肉」(100g/1,078円)として提供する。「素材そのものが力を持っているので、なるべくストレートに味わってもらいたい」(平山氏)と、味付けは肉を少量のゴマ油でコーティングし、ローズマリーを添えるのみ。「最初は供給が安定していなかったため大きな告知はしていませんでしたが、メニューを見て注文する方が多く、オーダー数は年々増えています」と平山氏。特に、淡白な部位を好む年配やヘルシー志向の人に好評で、SNSの投稿や口コミを見てジビエを目当てに来店する人も少なくない。今では毎日コンスタントにオーダーが入り、全店舗で月間400食ほどを提供している。

 また、シカ肉の反響を受けて、2019年からは信州わかほジビエから仕入れるイノシシ肉の提供も開始。果物の生産がさかんな長野市若穂地区で、摘果された実などを食べて育ったイノシシを仕入れ、「イノシシ背ロース肉」(100g/1,078円)として販売する。「発情期の雄イノシシは特有のにおいがあってメニューの味にマイナスの影響が出るため、当店では雌イノシシと発情期以外の雄イノシシに限定して仕入れています」と平山氏。

 残念ながら現在はイノシシの間で豚熱が流行し仕入れがストップしているが、提供時はシカを上回る出数だった。供給元とのコミュニケーションを続けており、「再度仕入れられるようになる時期も近いと思います」と話す。

通常の焼肉と同じように注文客が網で焼く。好みで、別添えのローズマリーと藻塩を混ぜた特製塩を付けて食す。焼きたてをすぐに食べることでジビエの良さが伝わりやすいのも、焼肉業態ならではの強み

ジビエ×ワインをアピールし、新たな利用動機の創出を目指す

 仕入れ価格の高さがネックではあったが、「当店は主要食材が牛肉なので、シカの原価率が高くても、全メニュートータルでは想定内に調整できています。また、焼きたてを味わってもらえる焼肉業態では、シンプルな味付けでシカ肉の魅力を最大限に引き出せる。ジビエと焼肉は相性がいいと思います」と平山氏。

 さらに、地域の人に地元産のおいしい食材を届けたいという思いから、昨年より「幻の羊 信州サフォーク」(100g/1,518円)や県内ワイナリーのワインもラインナップ。「シカやイノシシは味が濃くお酒に合うので、アルコールとの組み合わせも楽しんでもらえるようになれば」と平山氏。今後は、ファミリーだけでなく大人の会食利用などを開拓し、より多様なシーンに対応していきたいと考えている。

「信州を食べよう」というキャッチフレーズを掲げ、「信州黒毛和牛」「信州米豚」「信州上田地どり真田丸」「長野産コシヒカリ」などの地元のブランドを積極的に取り入れている
焼肉の家 マルコポーロ(長野・上田市)
長野県上田市常田3-15-52
有限会社シンコーポレーションが運営する焼肉店。1号店の上田店は、全146席。2011年にリニューアルし、建物に長野の木材や古材を多く使用するなど、食材だけでなく店内も“信州産”にこだわっている。
有限会社シンコーポレーション 取締役社長 平山 仁哲 氏
学生時代にアルバイトでイタリアン、多国籍料理店、ラウンジバーなど多様な業態の店舗で接客を経験し、飲食業に就くことを決意。その後、父が経営する「焼肉の家 マルコポーロ」での勤務を経て、2004年に有限会社シンコーポレーション取締役社長に就任。

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