学芸大学「干支屋(ゑとや)」の「おばんざい盛り」が感動を呼ぶ理由

個性的な飲食店が次々に登場し、話題を集めている学芸大学ガード下「学大横丁」。その一角に、2024年7月6日オープンした「干支屋(えとや)」。「駅周辺の居酒屋は若い人が多くて、ちょっと入りにくい」と感じていた地元の年配層から支持を集めているといいます。その店づくり、料理の味わい、メニュー構成の秘密に迫ります。

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「おばんざい盛り」

「おばんざい盛り」(7皿/1人前盛り638円)

女性の“少しずついろいろ食べたい”という欲を満たすためか、最近、居酒屋でよく目にするようになった「おばんざい盛り」。なかには、差別化を図ってどんどんボリュームが増したり、メイン級の凝った料理が加わったりするお店もあり、「おばんざい盛りに求めているのは、これだったっけ?」と思うことも…。そんな中、シンプルで少量ながら、ひとくちごとに感動がある「おばんざい盛り」が人気の店があるといいます。

今回は週末の酒場巡りが趣味というフードライター・桑原 恵美子さんが、学芸大学で大人気の居酒屋「干支屋」の「おばんざい盛り」を紹介。穏やかで控えめな味付けなのに感動的においしい、おばんざい盛りの極意を探ります。

桑原 恵美子
フードライター。十数年間にわたり、新聞社系の媒体で大手チェーン飲食店や新オープンの商業施設の飲食店、食品メーカーを中心に取材。ぐるなび媒体「dressing」でも100軒以上の飲食店を取材。「ラクなのに美味しい 驚異の弱火調理法」(三空出版)など料理レシピ本の構成にも携わる。
訪れた飲食店を紹介している個人ブログ:
https://ameblo.jp/amaguri0111/theme-10066247104.html

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干支屋(ゑとや)(東京・学芸大学)

【店舗Data】
干支屋(ゑとや)
業態: 居酒屋
席数: 22席(カウンター14席、4~5人用テーブル2卓)
客単価:5,000~7,000円
客層:40~60代 男女比5:5
カップル、少人数利用が多い
住  所:東京都目黒区鷹番2丁目21−19
アクセス:東急東横線学芸大学駅から徒歩3分
営業時間: 17:00~24:00
定休日:不定休
https://r.gnavi.co.jp/6d5xxr5e0000/
https://www.instagram.com/etoya_gakudai/

目次
老舗酒場のような風格と、尋常じゃない数のメニュー
シンプルだから、もっと食べたくなる
目指すのは、“食材の味を調味料が超えない”料理

老舗酒場のような風格と、尋常じゃない数のメニュー

ニューウェイブ居酒屋のメッカ・学芸大学に、また一つ伝説になりそうな名店が誕生しました。場所は、個性豊かな飲食店が連なる東急東横線の高架下の「学大横丁」の、祐天寺方面エリアの一角。

私が初めてこのお店の前を通りかかった時、最初に心をわしづかみにされたのが、新店でありながら老舗の酒場を思わせる渋いたたずまい。そして入り口に貼られたメニューの、尋常ではない品数の多さでした。

  • 「駅周辺の居酒屋は若い人が多く入りづらい」という、地元の年配のお客様の声から、あえて外観は昔ながらの粋な居酒屋の雰囲気に。窓に取り付けた目隠しのルーバーで、中のにぎわいが通りにほどよく伝わる仕掛け
  • 大きなオープンキッチンを中心にしたコの字型のカウンター。左手前にはテーブル席もある
入り口に貼られた手書きの「おしながき」。1枚に100種以上が並ぶ

「お刺身」だけで9品、「おばんざい」が11品、「天ぷら」12品、「魚料理」に至ってはなんと27品、「ちびちび」(日本酒の肴系)が8種類、「菜」が10品、「肉」が7品、「甘味」が5品、「しめ」が12品。なんと合計101種類! とはいえ、初めて訪れた昨年末は123種類だったから、これでも最近は減っているのです。

「★印は全てノンアルコールにできます」の表記。ノンアルコールメニューがこれだけ豊富だと、お酒に弱い友人も誘いやすく、ありがたい

そしてさらにすごいのは、今まで数回この店を訪れ、そのたびに7~8品注文しているが、全品が期待以上のクオリティーでハズレなしだったこと。ということは、100種類以上ある料理のすべてが逸品という可能性がかなり高いということなのです。

シンプルだから、もっと食べたくなる

これだけメニューがあると目移りして選ぶのも大変ですが、まず頼んでほしいのが、ほぼ100%のお客さんが頼むという「おばんざい盛り」です。

「おばんざい盛り」はその日のおばんざいからおまかせで7種類で構成。旬食材がふんだんに盛り込まれている

10種類以上ある「おばんざい」の中からおまかせで7種類を、おちょこサイズの豆皿に盛って出してくれます。このお味見くらいのボリュームと素材を活かしたごくシンプルな調理法が、食事のスターターとして完璧なのです。

取材時のおばんざい。写真左から時計回りに「モロヘイヤ 鳴門わかめ お浸し」「蒸鶏 ゴーヤ すだち和え」「そうめんかぼちゃとひげ付きヤングコーンのお浸し」
  • 「つるむらさき めかぶ すだち酢」(写真左)、「胡瓜、白瓜、昆布だし浅漬け」(同右)
  • 「ズッキーニ 鈴かぼちゃ じゃこサラダ」(写真左)、「新レンコン 新生姜 柚子 山椒 きんぴら」(同右)

どれも、料理名と実物を見た瞬間に味のイメージが浮かぶシンプルさ。食べた瞬間に目を見開くようなインパクトのある味付けではなく、素材の味を引き立たせるためのごく控えめな味付けです。

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目指すのは、“食材の味を調味料が超えない”料理

「メニューの品数が多いせいか、時間をかけてじっくり飲食を楽しんでくださるお客様が多いですね」と語るオーナーの広瀬 羊右さん

オーナーの広瀬 羊右(ようすけ)さんは、「何かしら作る仕事をしたい」「いいコミュニティーがほしい」と音楽関係の学校を経てアパレル業界に就職。“作り手”という仕事の模索の一つとして、楽コーポレーションが運営する飲食店でアルバイトをしていました。楽コーポレーション創業者の宇野 隆史さんは、数々の伝説的なヒット業態を生んできたことと、「社員はすべて独立させる方針」で知られ、同社から巣立ち店を持った飲食店経営者は数えきれないほど。そんな先輩たちの姿を見た広瀬さんは「飲食業界には夢がある」と感じて、飲食業の道に進む決意をしました。

料理に使うだしは名西酒蔵の主人である後藤 一平さんが徳島から取り寄せていたいりこだし。「いろいろ試して、いりこが一番しっくりきました」(広瀬さん)

楽コーポレーションで5年間経験を積んだ後、大好きで通っていた徳島料理が人気の居酒屋「名西酒蔵」(三軒茶屋)で4年間修業。さらに幅広い料理を学ぶために「まるしげ夢葉家」(赤坂)、「ひとひら」(学芸大学)へ。「ひとひら」では店長兼料理長を務め、やりがいもあり待遇にも不満はなかったのですが、「自分だけでなく、一緒に働く仲間の給料も上げたい」と考え、独立を決意しました。楽コーポレーション時代からさまざまな街の店で働いた広瀬さんが、最も合うと感じたエリアが学芸大学。そこで迷うことなく、この街での出店を決めたといいます。

「里芋まんじゅう唐揚げ」(1個363円)は100種類以上あるメニューの中でもトップクラスの人気。いりこのだしと薄口醤油で煮て一晩漬けた里芋をなめらかにマッシュし、片栗粉をまぶして揚げる。衣はハケで余分な片栗粉を払い落として薄付きにしているため、揚げ物なのに非常に軽く、挽きたての胡椒の香りが食欲をそそり、何個でも食べられそう
  • 季節のメニューより「活鱧(ハモ)の葛打ち 梅だし 冷やし椀(焼茄子、冬瓜、オクラ)」(1,408円)。湯引きしたハモを、透き通った冷たい梅だしと夏野菜のぬめりが引き立てる。ハモは表面だけ湯引きして半生に仕上げている
  • 「活穴子炙り棒寿司 山椒佃煮添え」(1,628円)は、自家製のすし酢で作った酢飯に、旬のアナゴを自家製のツメをつけながら炙って棒寿司にした一品。わさびの手前に添えてあるのは、山椒を土佐醤油で煮込んだ自家製山椒の佃煮

メニュー数を多くしたのは、「まるしげ夢葉家」のメニューの多さを見て「かっこいい」と思ったから。「メニュー数が少ないお店はどうしても、一品に対する期待値がすごく高くなりますよね。僕はもっとリラックスした状態でそれほど期待せずに注文してほしいし、それでおいしかったらお客様はすごくうれしいと思うんです」(広瀬さん)。

楽コーポレーションからの受け継いだ「横須賀ハイボール」(418円/写真左)は、電気ブランとトリスウイスキーという昔から愛されている庶民的なウイスキー2種を混ぜて作ってハイボールでファンが多い。「ソルティースパイシークラマトトマト割」(1,078円/同右)は、ハマグリとスパイスの効いたトマトジュース「クラマト」と焼酎、タバスコ、ウスターソース、レモンのカクテル。セロリの葉とパクチーの葉を乾燥させて塩と混ぜた自家製ハーブソルトのスノースタイルで提供

最近、居酒屋料理をアップグレードして割烹料理に近づける業態の和食店が増えています。でも広瀬さんは、「どちらかというと素朴な、ザ・居酒屋という料理の方が好きなので、凝った料理にはそんなに心が惹かれないんです。何度も繰り返し食べたくなる料理というのは、調味料が素材の味を超えない、シンプルな料理だと思うので」と語ります。

  • おしながきは全て広瀬さんの手書き。毛筆による手書きメニューは楽コーポレーションで受け継がれている伝統で、必死に練習をして書けるようになったとのこと
  • 日本酒や焼酎の品ぞろえも豊富。瓶が店奥の壁一面に並ぶ

控えめな味わいだからこそ、じわじわと食欲をかき立てて、繰り返し味わいたくなる……「干支屋」の料理のそんな魅力が、このおばんざい盛りに凝縮されているような気がします。

「干支屋」とは、十二支を繰り返す「干支」のように繰り返し来店してもらえる店を目指して命名したそうですが、まさにその名のとおり。「おばんざい盛り」から始まる特別な時間が恋しくて、季節の移り変わりを感じるたびに、この店に足を運びたくなります。

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