鶏バター
燗酒とナチュラルワインを看板に掲げ、お酒に合うノンジャンルの料理を提供している「お燗とvinめし くいぜ」。開業当初から定番メニューとして人気を誇るのが「鶏バター」です。鶏むね肉1枚をたっぷりのバターでアロゼ(フライパンで焼きながら、スプーンで油を上からかけ続ける技法)しながら焼き上げたボリューム感満載の料理ですが、お酒と合わせて楽しんでいると、いつの間にかペロリと完食。
今回は、愛知県在住のフードライター・露久保 瑞恵さんが、「鶏バター」誕生の背景と、そのおいしさの秘密に迫ります。
https://www.facebook.com/mie.tsuyukubo
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お燗とvinめし くいぜ(名古屋・新栄)
お燗とvinめし くいぜ
業態:ダイニングバー
席数:席(カウンター8席、テーブル1卓)
客単価:4,000~10,000円
客層:20〜60代 男女比:6:4
アクセス:地下鉄新栄駅、車道駅、JR千種駅から徒歩5分
営業時間:月〜金曜日16:00〜21:00、土曜日14:00〜23:00
定休日:無し
https://www.instagram.com/vin_meshi.quize/
https://r.gnavi.co.jp/jsegbsz80000/map/
目次
・ワンオペ用にレシピ開発した「鶏バター」
・決め手はシャワーのように浴びせかける焦がしバター
・酒と料理のポテンシャルを引き出す食べ合わせを提案
ワンオペ用にレシピ開発した「鶏バター」
2017年に名古屋・新栄でオープンした「お燗とvinめし くいぜ」(以下、「くいぜ」)。地下鉄の新栄駅と車道駅、JR千種駅のどの駅からも徒歩5分程度とアクセス至便で、ゼロ次会から〆呑みまで、さまざまな使い方で親しまれています。
店主の小澤 篤史さんは学生時代からうまいものを求めて日本全国を行脚し、大規模病院の管理栄養士として活躍後、独立開業したという異色の経歴の持ち主です。
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小澤さんが愛してやまない酒蔵の純米酒たち。どれも燗酒にして味わいが映えるものばかり -
「お酒を楽しむ場」という確固たるポリシーを持ち、飲み物に関するルールを設けて営業している
「くいぜ」の壁面には、佳店からインスピレーションを受けてレシピ開発したメニューが掲げられ、中でも素材の組み合わせで命名された「鶏バター」は、開業以来根強いファンを持つ定番メニューです。
独立開業を意識し始めてから、各地で感動した料理を、持ち前の探究心と理系脳で解析したという小澤さん。おいしさを追求するのはもちろん、最小限の調理器具とワンオペで提供できるレシピに落とし込むことも忘れなかったそうです。
決め手はシャワーのように浴びせかける焦がしバター
「鶏バター」は複数のイタリア料理店で賞味した料理をベースとし、メインディッシュ的な存在感を演出するため、鶏むね肉を丸ごと1枚調理。料理にかかりきってお客様との対話がおろそかにならないよう、工程もシンプルさを追求しました。
「鶏バター」の材料は、250〜300gの鶏むね肉1枚とバター50g、そして塩適宜。粉や香辛料などは一切使いません。小型のフライパンにバターを入れて火にかけて溶かし、冷蔵庫から出した鶏むね肉を投入して塩を振り、あとはひたすらシャワーのようにバターを回しかけて火入れするという、シンプルを極めたレシピです。
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焦がしバターをシャワーのように浴びせかけるのが決め手。お客様との会話を楽しみつつ、絶えずスプーンを持つ手を動かし仕上げていく -
フライパンを傾け、はしばみ色をしたバターの中で休ませて中心部まで均一に火を通す
焼き工程は10〜15分。途中で鶏肉の弾力を確認しながら火入れ具合をチェックし、焦がしバターの中で10分程度休ませ、中心部まで均一な肉質に整えて提供します。
こうして仕上げた「鶏バター」は、低温調理した鶏ハムとも通常のソテーとも異なり、ジューシーな肉汁をたたえコンフィのような仕上がりです。はしばみ色の焦がしバターを絡めて頬張ると、塩によって引き立てられた肉のうま味とバターの香味が渾然一体となり、ふくよかな味わいに。料理に合わせて提供してもらったオレンジワインともピタリと合いましたが、すかさず頼んだ純米酒の熱燗と合わせたところ、ため息が漏れる好相性。食べ合わせを楽しんでいるうちに、ペロリと平らげてしまいました。
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酒と料理のポテンシャルを引き出す食べ合わせを提案
「自分が飲みたもいの、食べたいものを集結させた店」というコンセプトで「くいぜ」を開業した小澤さん。地元のお客様はもちろん、熱狂的な燗酒ファンが日本全国から足を運び、カウンターメインの小さな店は、常に舌鼓の音と酒談義に満たされています。
お酒に詳しくなくても、小澤さんに尋ねれば、イメージに合うお酒や、意外性のある食べ合わせなどを提案してくれるため、燗酒やナチュラルワインデビューを「くいぜ」で果たす方も多いといいます。
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「ごぼうの酒粕煮」(480円)。さまざまな酒蔵から酒粕を取り寄せて使用。「今日の酒粕はどこの蔵のもの?」と尋ね、同じ蔵の酒を食べ合わせるのも一興だ -
「トリッパのトマト煮込み」(レギュラー2,500円/ハーフ1,500円)。写真はハーフサイズ。「内臓が苦手な人が気になる程度に、内蔵らしさを残しています」と小澤さん
例えば、酒肴として不動の地位を築いている「ごぼうの酒粕煮」は”燗酒どろぼう”というサブタイトルがぴったりな一品。「くいぜ」で取り扱っている純米酒の酒蔵から酒粕を譲り受け、贅沢(ぜいたく)に使用しているため、燗酒と料理のこの上ない調和を楽しめます。
日替わりメニューに分類されながらも、準定番メニューになりつつある「トリッパのトマト煮込み」もリピート率が高いメニュー。丁寧に下処理しつつ、内臓らしさが楽しめる味と歯応えのバランスが絶妙です。ロゼワインとの相性抜群でした。
その他にも、ドイツ国家認定食肉加工マイスターの認証を受けている名古屋の名店「アキタハム」のシャルキュトリーや、国内外の郷土料理からオリジナル料理までそろい、酒好きの心をとらえて離しません。
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ワインはグラス1,100〜1,400円、ボトルは5,000円台半ばから用意。すべて小澤さんが飲み、うまいと感じたもののみ取り扱っている -
日本酒は純米酒のみ取り扱い、1合900〜1,200円。お酒のポテンシャルを最大限に引き出す温度帯で提供してくれる
お酒に関しても、自分が好きな造り手の酒を楽しむのはもちろん、世間で高い評価を受けている酒をすすんで試飲するなど、探究に余念がありません。「飲んだこともないのに批評するのは、プロとして無責任。自分の言葉に説得力を持たせるため、そして新しいお酒との出合いを求めて、試飲会には積極的に参加しています」と小澤さん。開業から10年を迎えて円熟みを帯びながら、攻めの姿勢は健在なようです。
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