2020/05/19 特集

コロナ危機に立ち向かう世界の飲食店~それぞれの戦い方~(2ページ目)

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外出自粛の中、アメリカ・サンフランシスコの居酒屋の弁当が人気に

 一方、アメリカのサンフランシスコでも、新型コロナウイルス感染症の対策措置として、3月中旬に出された外出禁止令に伴い、飲食店はテイクアウトかデリバリーでの営業を強いられてきた。

 ミッション地区に2014年11月オープンした和食居酒屋「リンタロウ(Rintaro)」も、外出禁止令を受けてテイクアウトの営業に切り替えた店の1つ。店主のシルヴァン・ミシマ・ブラケット氏が、かつて和食のケータリング業を営んでいた経験を生かし、店内メニューをアレンジした和風弁当を販売している。

 食材の流通が不安定になっているため、仕入れ状況に応じて弁当の内容は日替わり。地元農家から仕入れた旨味の濃い鶏肉を炭火で焼いて仕上げた「焼き鳥弁当」(35ドル=約3,780円)など、毎日6〜7種類を用意している。

ご飯の上にねぎまなどの焼鳥を敷き詰めた「焼き鳥弁当」。かわいらしいイラストの入ったパッケージも、「沈みがちな心を弾ませてくれる」と来店客に喜ばれている

 また、「かきあげうどん弁当」(20ドル=約2,160円)には、手打ちの自家製麺を使用。熱々のスープ、ゆでたての麺、揚げたてのかきあげをそれぞれ別容器に入れて販売し、客が自分で仕上げるスタイルが好評だ。

「かきあげうどん」。麺の容器には半熟玉子やホウレンソウ、ネギが入っている

 さらに、「ちらし寿司弁当」(30ドル=約3,240円)も用意。マグロや地元産のオヒョウ(大型のカレイの一種)などを使い、彩りも美しく仕上げている。

「ちらし寿司弁当」。コロナ禍で苦しい状況に陥っている地元のわさび農家をサポートしたいという想いから、弁当とは別に「生のわさび100g」(写真右上)を25ドル(約2,700円)で販売しており、追加で購入する人も多い

 その日のメニューは、1万人以上のフォロワーを抱える店のInstagramで毎日14時に告知し、電話で14時から20時まで注文を受け付けている。感染のリスクを最小限にとどめるため、商品の受け渡しは、店の中庭で行っており、受注数も制限して、多数の来店客が一度に集まらないように工夫している。3月末からは、50ドル(約5,400円)以上の注文で、店から約5キロ以内のエリアに限り、デリバリーも開始。配達料として10ドル(=約1,080円)を上乗せすることで、一度は解雇せざるを得なかったホールスタッフ数人を配達人として雇い戻すこともできたという。

 当初は電話注文のみだったが、4月後半からオンラインでの受注も開始。また、サンフランシスコの食料品店に、1週間に1回ほどの頻度で特別メニュー1品を卸し始めたという。「赤字ではありますが、とにかく今できることに集中して、お客様に喜んでもらいながら営業再開まで乗り切りたい」と、ブラケット氏は、下を向くことなく最善を尽くしていこうと考えている。

リンタロウ(Rintaro)【アメリカ・サンフランシスコ】
82 14th Street, San Francisco
https://izakayarintaro.com

困っている人に役立つ「よろず屋」に変身

 テイクアウトで苦境を乗り越えようとする店もあれば、一時的に業種を変えた店もある。同じくサンフランシスコ・ミッション地区の中心部に店を構える創作アメリカ料理店「プレイリー(Prairie)」もその1つだ。2018年10月のオープン以来、斬新なメニューで人気を集めてきたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大幅に売上が減少。店主のアンソニー・ストロング氏は、3月からレストランを一時休業し、「ジェネラル・ストア」(よろず屋)を開くことを決意する。というのも、サンフランシスコのスーパーマーケットでは、3月に入って以降、保存できる食材、生鮮食品、トイレットペーパーなどの日用品が極端に品薄になっており、飲食店が通常の仕入れルートで入手できる商品を適正な価格で売れば、困っている近隣の人たちの役に立てると考えたのだ。

 一番人気は、「フェットチーニ」(2.65ドル=約394円)などのパスタ(乾麺)。価格は、利益を上げることよりも近隣の人の生活を守ることを優先し、スーパーマーケットよりも少し安く設定している。

 また、日替わりの調理済みミールキット(料理のセット)も人気だ。例えば、2人前の食事をセットにした「ディナーキット#2」(62ドル=約6,696円)には、パン、サラダ、焼きキャベツ、ラムチョップのグリル、デザートが入っており、家に持ち帰って15分ほどかけて温め直すだけで本格的なディナーが楽しめると好評だ。

店の人気メニューが家庭で味わえる「ディナーキット#2」。こんがり焼いたパンには、サワークリームとブッラータチーズのディップが添えてある

 また、特例措置として飲食店によるアルコールの販売も許可されているため、カクテルも日替わりで2〜3種類を販売。アマーロ(イタリア産の薬草系リキュール)とバーボンを使った店の名物カクテル「ブラック・マンハッタン」(2杯分、24ドル=約2,592円)などの人気が高い。

「ブラック・マンハッタン」。テイクアウト時は専用の密封プラスティック容器で販売している

 さらに、ユニークな取り組みとして、パスタやタマネギなど、保存のきく食品を詰め合わせた「レストラン関係者への寄付キット」(62ドル=約6,696円)も用意。これを、自店や他店を問わず、失職して困っている飲食店の元スタッフに、無料で提供して喜ばれている。

「レストラン関係者への寄付キット」。失職して生活に困窮している人たちのために無償で提供している

 よろず屋として営業するにあたり、特設サイトもオープン。サイトで事前に商品を選んで決済まで済ませておける仕組みを作り、来店時の滞在時間を短くすることで、感染のリスクを抑えようと考えている。「幸い、売れゆきは好調。ただ、利益のためというよりは、少しでも人の役に立つことをしたいという気持ちが大きいです」とストロング氏は笑顔を見せる。最近は、5~6種類だったミールキットを13種類ほどに、2~3種類だったカクテルも7種類ほどに増やした。今後もニーズを汲み取った臨機応変な取り組みで荒波を乗り切っていこうと考えている。

プレイリー(Prairie)【アメリカ・サンフランシスコ】
3431 19th Street, San Francisco
http://prairiesf.com

写真提供:Rintaro、Prairie
※アメリカの通貨レート 1ドル=約108円
※「リンタロー」の情報は4/2取材時のもの、「プレイリー」の情報は3/26取材時のものです。

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