2020/05/19 特集

コロナ危機に立ち向かう世界の飲食店~それぞれの戦い方~(5ページ目)

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厳しい外出制限の中、ペルー・リマで“半調理”のパンが人気!

 コロナの影響で、3月16日にロックダウン(都市封鎖)が宣言されたペルーの首都リマ。飲食店はテイクアウトやデリバリーも含めて営業はほぼ全面的に禁止されてきた(5月から、生産省の許可を得た飲食店はテイクアウトおよびデリバリーでの営業が許可された)。一方で、食料品や医薬品などの生活必需品に限り、生産省の許可を得れば飲食店でも販売することができる。ペルー人の朝食に欠かせないパンも生活必需品として認められているため、飲食店での販売が可能だ。

 こうした状況の中、リマのスルキージョ区に店を構えるベーカリーカフェ「ラ・プティ・フランス(La p'tite France)」は、ロックダウン後から新たに「プレ・コシード(半調理)」のパンをデリバリーで販売して人気を呼んでいる。これは、店の工房で生地作りから焼き上げの途中まで(全工程の約75%)を行い、最後の仕上げは各家庭で行ってもらうというもの。「プレ・コシード」で販売しているのは、9種類のハードタイプのパン(1.5~15ソレス=約47.7円~477円)。どれも冷蔵で2日間、冷凍なら3カ月保存が可能であり、かつ3個買うと1個が無料になるため、まとめ買いする人がほとんど。食べる際には、冷蔵や冷凍で保管していた場合は常温に戻し、210~220度のオーブンで焼き上げるだけだ。

約75%まで焼き上げた状態で宅配。バゲット(上)なら7~10分、シアバッタ(下)なら3~5分で、外はパリパリ、中はモチモチに仕上がる

 「当初は焼きたてのパンを配達したいと考えていたのですが、配達スタッフの数が限られている上に、夜間は完全な外出禁止になるため、お客様の希望時間によっては、できたてのパンを届けることができない状況でした。そこで、家庭で焼き上げてもらうことで、お客様の好きなタイミングでできたてのパンを食べられると考えたんです」と語るのは、オーナーのシモン・バチェル氏。

完成の直前まで店で焼き上げているので、仕上げを家庭用オーブンを使っても店で焼き上げたものと遜色のない仕上がりに

 ハードタイプのパン以外は半調理で販売することが難しいため、完成品を販売。特に「クロワッサン」(5ソレス=約159円)や「レーズンパン」(7ソレス=約222円)、4種類の「カップケーキ」(各7ソレス=約222円)などが人気だ。

バターの香り豊かな「クロワッサン」(写真左上)など、ハードタイプのパン以外は完成品を販売している

 注文は店の宅配専用サイトで受け付けており、配達員と客の接触を最小限に抑えるために、支払いはクレジットカードなどでの事前決済のみにしている。

 焼きたてを味わえるとあって、半調理のパンの売上は上々。当初、近隣の4つの区(約5キロ圏内)のみだった配達エリアも、13の区(約13キロ圏内)まで拡大した。外食が禁止されるなど、食生活にも制約が多い状況下で、「店で焼き上げたパンに限りなく近いものを、家で好きな時に食べられる」ということが、様々なストレスを抱える人々の生活の中にささやかな喜びと彩りを与えている。

ラ・プティット・フランス(La p'tite France)【ペルー・リマ】
Calle Gonzáles Prada 599, Surquillo, Lima
https://tienda.ptitefrance.com/

収束に向かう台湾でフードコートの透明な仕切りが話題に

 一方、台湾では政府によるマスクの管理販売や、感染者と濃厚接触した人の追跡システムといった独自の対策が功を奏して、外出自粛や飲食店の営業規制を行うことなく、いち早くコロナの封じ込めに成功したと言われている。そんな中、複数の店舗と不特定多数の人が集まるフードコートでの対策が注目を集めている。

 台湾最大の都市・台北の巨大複合施設「Qスクエア」地下3階にあるフードコート(約30店舗、約800席)では、透明のアクリル板を使って4人掛けのテーブルを十字型に仕切っている。これにより、互いの顔が見えて声も聞こえるが、咳やくしゃみ、会話などによる飛沫感染のリスクを避けるのが狙いだ。

4人掛けのテーブルは、卓上の空間がアクリル板で仕切られている

 さらに、一部のアクリル板にはサングラスやヒゲなどのイラストが貼ってあり、向かいに座った人がサングラスをかけていたり、ヒゲをたくわえているように見えるユニークな仕掛けも施した。これにより、多くの客が一緒に来た人とアクリル板越しの顔を撮影し合うようになり、インスタ映えスポットとしてSNSなどで話題になっている。

一部のアクリル板にはヒゲやサングラスのイラストが貼ってあり、友人や家族などとデコレーションされた顔を撮影し合う人も多い(画像:Qスクエア提供)

 「感染症の影響で、緊張を強いられる日々が続いています。だから、食事をするときくらいはお客様に少しでも楽しい気分になっていただきたいと、イラストを追加しました」と、QスクエアのPR担当者・林品宜氏は想いを語る。

「Hello」など、吹き出しのセリフ付きのものも

 海外からの旅行者が激減した影響で集客は落ちているものの、ランチタイムは席の6割が埋まるなど、まずまずの賑わいを見せている。グループ客はもちろん、1人での来店も多いが、アクリル板での仕切りが安心感につながり、4人掛けのテーブル席が一人客で埋まることも少なくない。食事中の会話を楽しんでもらいつつ、飛沫感染を防止し、遊び心のあるイラストで来店客に笑顔になってもらう。ちょっとした工夫だが、店内営業を再開する店が増えてきた日本の飲食店にとっても、まだまだ油断できないコロナ対策としてヒントになるだろう。

京站時 尚廣場 美食廣場(Qスクエア フードコート)【台湾・台北】
台湾台北市大同區承德路一段1號 B3

※ペルーの通貨レート 1ソル=約31.8円/「ラ・プティット・フランス」の情報は2020年4月26日取材時のものです。
※台湾の通貨レート 1ドル=約3.6円/「Qスクエア フードコート」の情報は2020年4月28日取材時のものです。

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