2020/05/19 特集

コロナ危機に立ち向かう世界の飲食店~それぞれの戦い方~(3ページ目)

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アメリカ・ハワイでは、テイクアウトメニューのSNS発信が効果を発揮!

 観光を基幹産業としているアメリカ・ハワイもまた、コロナ禍によって経済的に多大な影響を受けている。3月中旬にはホノルル市郡政府の命令で感染リスクの高いバーやナイトクラブは休業することになり、飲食店内での飲食も禁止されている。

 そんな中でも健闘しているのが、ハワイのショッピング街であるアラモアナ地区にある人気レストラン「MWレストラン(MW restaurant)」だ。普段はハワイの伝統料理に日本や韓国、西洋料理のモダンなエッセンスを加えた「ハワイ・リージョナル・キュイジーヌ」を提供しているが、イートインが禁止になってからは、店の駐車場で料理を手渡すスタイルのテイクアウト、およびデリバリーで営業を継続している。

 テイクアウトメニューには、数種類のスペシャルメニューと単品メニュー、サイドディッシュ、デザートなどを用意。「ステーキ・ナイト」「パエリヤ・ナイト」「ドンブリ(丼)・デー」など、2~3日ごとにメニューのテーマを変えて、常連客が飽きないように工夫している。これまでで特に人気が高かったのが、「シアード・アヒ」(18ドル=約1,926円)。ハワイ近海で獲れた新鮮なアヒ(マグロ)に和風スパイスをまぶして軽く焼いたタタキ風の料理だ。

「シアード・アヒ」。どのメニューでも6ドル(約642円)を追加すれば「サラダとケーキのセット」を付けることができる

 「プレートランチ」がテーマの日に提供された「アヒ・ポケ・ボウル」15ドル(約1,605円)。角切りにしたマグロに、ゴマ油やしょうゆ、塩、ネギなどで味付けして混ぜたハワイの伝統料理「アヒ・ポケ」と、ふりかけご飯をセットにしている。

「アヒ・ポケ・ボウル」。「アヒ・ポケ」とご飯は別の容器に入れて販売している

 「スペシャルメニュー」の内容は、ホームページやInstagramで告知。特にInstagramは、約1万2,000人のフォロワーがいるため訴求力が高く、来店のきっかけになっている。

「スペシャルメニュー」のテーマが変わる際は、Instagramで告知。毎回、数百もの「いいね!」がつくという

 オーナーシェフであるウェイド・ウエオカ氏と妻でパティシエのミシェル氏は、「大変なときですから、恩返しの意味も込めてお客様に安価でおいしい料理を提供したいと考えています。予想以上に好評なので、いずれ通常営業に戻ってもテイクアウトは継続する予定です。不測の事態に陥っても柔軟に対応していくことで新たな武器が生まれることを学びました」と、前向きに語る。テーマ性を持たせて多彩なメニューを用意してSNSで発信し、多くのファンに支えられている同店。ホノルルでは6月5日から飲食店での店内飲食が解禁になる予定。店内での営業再開の準備を進めつつ、コロナ禍以前の日常が戻ってくる日を待っている。

MWレストラン(MW restaurant)【アメリカ・ハワイ】
1538 Kapi‘olani Boulevard Suite 107, Honolulu, HI 96814
https://mwrestaurant.com/

早まるディナータイムに合わせて、テイクアウト対応時間を変更

 ちょっとした“気付き”が状況を好転させるきっかけになることもある。アメリカ・コロラド州の州都、デンバーで創業35周年を誇る「スシデン(Sushi-Den)」がその好例だ。デンバーでは、3月24日から「自宅待機命令」が出され、飲食店はテイクアウトとデリバリーのみ、営業が許されている。こうした状況に対応しきれずに休業や閉店を余儀なくされる店も多い中、「スシデン(Sushi-Den)」は、寿司などのテイクアウトをメインに逆境をものともせずに繁盛している。その要因の1つに、来店客のニーズを踏まえた営業時間の変更がある。「当初はランチタイムも営業していたのですが、ほとんどお客様が来なかったので早々にディナーのみの営業に切り替えました。また、周辺に住む方のほとんどが在宅勤務になってオフィスへの通勤がなくなったせいか、ディナータイムが普段より早まっているように感じたんです。そこで、これまで店内営業の開始時間は17時でしたが、テイクアウトの販売は16時からにしました。すると、そこから徐々に売上が伸びていったんです」と、エグゼクティブシェフの木崎稔博氏は語る。さらに、閉店時間を、日~木曜日は20時30分、金・土曜日は21時30分と1時間半ずつ早め、人件費などのコストを抑えている(最終の注文受付は閉店の30分前)。

テイクアウトメニューは「ちらし寿司」(28ドル=約3,000円)をはじめとする寿司が中心。ほかに、前菜やサラダ、ラーメン、天ぷら、ステーキなどもそろえている

 注文は、ホームページや電話で受け付けており、5日前から予約が可能。商品が用意できたら注文した人にメールを送って受け取りに来てもらう。これによって、待ち時間を短くし、感染のリスクを軽減している。

距離を空けて列を作る来店客。6フィート(約183cm)を空けるよう店からお願いしている

 アルバイトの多くは休職にせざるを得なかったが、正社員40名はそのまま残って働いている。また、休職中のアルバイトには、週1回だけランチタイムに無料で弁当を提供している。

カウンターでは寿司職人をはじめ、多くのスタッフが忙しく手を動かしている

 「テイクアウトで寿司をオーダーする方が多いため、寿司職人が足りないほど忙しいです。長く店を使っていただいている常連のお客様に、おいしい料理を楽しんでいただけるのが何よりうれしいですね」と、木崎氏は笑顔を見せる。

 「ディナーの時間が早くなっている」といった小さな発見を活かし、周辺住民のニーズに柔軟に対応することで、厳しい状況の中でも活路を見出している。

スシデン(Sushi-Den)【アメリカ・デンバー】
1487 South Pearl Street,
Denver, CO, 80210
https://www.sushiden.net/about/

※アメリカの通貨レート1ドル=約107円/「MW restaurant」の情報は5/1取材時のもの、「Sushi-Den」の情報は4/22取材時のものです。

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