2020/05/19 特集

コロナ危機に立ち向かう世界の飲食店~それぞれの戦い方~

新型コロナウイルス感染症の影響で、世界各国の飲食店が休業に追い込まれたり、営業体制の見直しを余儀なくされている。そんな中で、厳しい状況に負けず活路を見出そうと奮闘する6カ国9店舗の取り組みを紹介する。

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オーストラリア・ブリスベンのカフェが多彩なテイクアウトメニューや食材を販売!

 オーストラリアでは、2020年3月末から飲食店での店内飲食が禁止となり、テイクアウトかデリバリーでの営業を強いられることになった。5月15日23時59分からは、政府方針に従い店内での飲食が再開されるなど、徐々に光明が見え始めているものの、まだまだ予断を許さない状況だ。

飲食店の前に立てられた看板には、「持ち帰りのみで営業」の文字。感染症拡大に伴い、街中には同様の看板を掲げる店が増えた

 東海岸の大都市・ブリスベンの中心部から南へ約20キロのエリアに2016年2月オープンした「エクストラクションアルチザンコーヒー(Extraction Artisan Coffee)」は、3月末からテイクアウトのみの営業に切り替え、Facebookで営業形態の変更を告知した。さらに、店長のジャッキー・クワチ氏が除菌シートとスプレーでテーブルを拭いて、「店内を衛生的に保っている」とアピールする動画もアップ。動画の最後は、オーナーの一人であるアレックス・ミロセヴィッチ氏のツルツルに剃った頭まで磨いてしまうというオチもつけ、ネガティブにならず、前向きに明るく乗り越えようというメッセージを込めた。

左から共同オーナーのミロセヴィッチ氏とヘザー・スコット氏、チーフバリスタのサラ・ジン氏。「こんなときだからこそユーモアを忘れたくないです」と口をそろえる

 テイクアウト用に用意したフードメニューは約10種類(その他、コーヒーやケーキ、マフィン類など軽食は通常通り販売)。来店客のニーズや売上の状況などを見ながらメニューを入れ替えていった。

 テイクアウトメニューの中で、人気料理の1つが「ベジ・フリッター」(17ドル=約1,122円)。トウモロコシ入りのパンを軽く揚げたものに、キャベツや赤ピーマン、ニンジンのスライスをのせ、マヨネーズをかけたもの。シンプルだが、フリッターのホクホク感、刻み野菜のシャキシャキ感、マヨネーズのまろやかさと酸味がお互いを高め合う。

「ベジ・フリッター」はシンプルながらも奥深い一品。フリッターの中のトウモロコシの甘みと歯ごたえがいいアクセントになっている

 同じく、「チェバピ・メルト」(13ドル=約858円)も好評。「チェバピ」とは、ミロセヴィッチ氏の出身地・セルビアなど東欧に古くから伝わるハンバーグ風の挽き肉料理。このチェバピを、ビーツのザワークラウトと赤ピーマン、トマト、アーモンド、ガーリックで作ったロマネスコソースとともに、ターキッシュブレッドでサンドした。テイクアウト用に食べ歩きしやすい商品も必要だと考えて、新たに取り入れたメニューだ。

「チェバピ・メルト」。肉汁たっぷりのチェバピの甘みや塩気、ザワークラウトのナチュラルな酸味、濃厚ソースのまろやかさが見事に溶け合っている

 このほか、「ブルーベリーパンケーキ」(17ドル=約1,122円)はパンケーキにブルーベリー、ゴールデンシロップ(褐色の糖蜜)、綿あめ、アイシングシュガー、ホイップしたリコッタ(フレッシュチーズの一種)をトッピング。材料を見るとかなり甘そうだが、しつこさはまったく感じず、ブルーベリーの酸っぱさと、リコッタのまろやかな塩気がうまくバランスを取っている。パンケーキの定番であるホイップクリームではなく、型崩れしにくいリコッタを使っているのは、テイクアウトを意識してのものだ。

「ブルーベリーパンケーキ」。オーストラリアでは甘いものだけで朝食を済ませる人も多いため、朝食としても人気

 ほかにも、「ザ・テイク・ホーム・エクストラクション・バンドル」(35ドル=約2.310円)という、いわば「持ち帰り用食材セット」も販売。店で使っている食材をセットにして提供するもので、内容は手作りベーコン4枚、手作りソーセージ6本、放し飼いのニワトリが産んだ生卵6個、特製パン、バター、ジャム、牛乳などだ。さらに、スコーンやブラウニー、生クリーム入りのアップルパイなどのスイーツをセットにした「スイート・トリート・ハンバー」(25ドル=約1,650円)も販売。自分たちが持っている食材で、喜んでもらえるものは何かを考えながら、様々な商品の販売を試みたという。

「持ち帰り用食材セット」。混雑していて品薄気味のスーパーマーケットに行かなくても、飲食店が選りすぐった食材を手に入れられるというのが売りだ

 来店客の多くは地元の住民と周囲の商業施設などで働く人たち。「気持ちが沈みがちだからこそ、私たちがお客様にお礼をする番」とクワチ氏は語る。ブリスベンでは、店内での飲食が5月15日から解禁されたが、政令によって一度に店内に入れる客数は現在10名まで。そして、6月12日からは20名まで、7月10日からは入場者数の制限が廃止される予定だ。「エクストラクションアルチザンコーヒー」は約100席の大箱で、当面はテイクアウト中心で営業する予定。当然、通常営業のような売上は期待できない。「ただ、こんなときだからこそ、利益を上げることだけを追求しようとは考えていません。テイクアウトでも、お客様においしい料理やドリンクを提供することで、幸せになってもらう。それも飲食店ができる大切な仕事です」と語るクワチ氏。その目は、新型コロナが収束した後の、明るい未来を見つめている。

エクストラクションアルチザンコーヒー(Extraction Artisan Coffee)【オーストラリア・ブリスベン】
7/3375 Pacific Highway, Slacks Creek, Queensland
http://extractionartisancoffee.com.au/

※オーストラリアの通貨レート 1ドル=約66円/「エクストラクションアルチザンコーヒー」の情報は3/28取材時のものです。

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