産地直送とビジネス街ドミナント戦略で年商11億円
2009年に大阪で均一・格安のブランド「居酒屋 ま王 石橋店」で創業した株式会社N・I(代表取締役 河村 則夫 氏)。2015年には次なる成長の軸として、産地直送という高級食材特化型の居酒屋「北海道海鮮 にほんいち」(以下、にほんいち)を始動した。大阪・西中島を皮切りに、福島(2016年)、本町(2017年)と主要オフィス街へ矢継ぎ早に出店。「大阪で北海道の鮮魚が食べられる」という差別化で、ビジネス層の需要をつかんできた。
グループ全体の売上高は、前期の9億円から11億円規模へと拡大する見通しだ(2026年8月期)。この2億円の売上増を大きく牽引(けんいん)したのが、「本町店」の成長である。
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2~8人で利用できる個室・半個室を用意。写真左の可動式扉の開閉で、個室の大きさを柔軟に変更できる -
大広間は、大宴会の貸し切り、または個室指定ではない客に対応。全席が寛げる掘りごたつ式
中でも「にほんいち 本町店」は、2025年大阪・関西万博を契機に、インバウンドや家族連れ、若い世代の観光客へと従来から客層が拡大したことで売上が急増した。激変する環境下を経て、いかにコンセプトを守り、拡張を続けるのか。これからの戦略と課題について、営業推進部長の清水 湧太 氏に話を聞いた。
北海道海鮮 にほんいち 本町店
業態:海鮮居酒屋
席数:180席(個室・大部屋、掘りごたつ席・座敷席)
客単価平均:通常4,000円、宴会5,000円
客層:30~50代、平日はビジネス層、週末は家族連れや観光客、インバウンドも増加、男女比6:4
アクセス:大阪メトロ御堂筋線本町駅1番出口徒歩1分
営業時間:17:00~24:00
定休日 :無し(施設に準ずる)
https://r.gnavi.co.jp/4p3g4b4u0000/
https://ni-290.co.jp/
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「北海道海鮮 にほんいち」繁盛のポイント
目次
1.【食材】生産者の思いごと産地直送!
2.【3つの驚き】鮮度・エンタメ・コスパ
3.【体験】産地で直接触れることが人を育てる
4.【ドミナント】本町エリアを拠点とした店舗展開
1.【食材】生産者の思いごと産地直送!
食に敏感な関西人の気質を「北海道食材」というキラーコンテンツでつかんできた「にほんいち」。その躍進を支えるのは、自ら仕入れを行う社長・河村 則夫 氏の圧倒的な行動力だ。北海道をはじめ全国の漁港へ自ら足を運び、魅力的な食材に出合えば生産者と直談判を重ねてきた。
地道に築いた信頼関係によって、中間業者を通さない独自の産直ルートを確立。「抜群の鮮度」と「驚きのコストパフォーマンス」を両立させている。今や釧路市厚岸(あっけし)町のカキや、魚介以外にも九州の馬刺しなど、”全国の珠玉の食材”へと網を広げ、新店舗の展開にも生かしている。
仕入れにおいて、鮮度やコスト以上に大切にしているものがある。それは「食材の裏側にあるストーリー」だ。社長が現地で実際に肌で感じた生産者のこだわりや思いを社内で熱く共有。料理人がそれを生かす調理を施し、ホールスタッフがその物語ごと、料理の魅力を客に伝える。この「思いのバトンリレー」こそがN・Iの強みであり、食材の価値を高めている。
2. 【3つの驚き】鮮度・エンタメ・コスパ
この「思いのバトンリレー」の精神は、提供するメニューに息づいている。
まずは、創業時からの”破格の2大名物”だ。客からストップがかかるまでカニの身を盛り続ける「かにぶっかけだし巻き玉子」は、宴会の席に欠かせない、SNSでも話題のエンターテインメント感満載の一品。
また、8種の鮮魚を858円で提供する「漁師町の刺身盛り」は、本場の鮮度とコストパフォーマンスが魅力だ。これら超高原価率の看板メニューでまずは客の心をつかみ、他のメニューとの組み合わせで経営のバランスを取る仕組みである。
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ウニ・カニ・イクラが贅沢にのる「北海こぼれ巻きずし」(1,958円) -
客席でイクラを豪快に盛り付ける。テレビで紹介され、SNSでも話題に
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肉厚で塩味が強すぎず、ふっくらジューシーに仕上がった「自家製真ホッケ一夜干し」(1,628円) -
じゃがバター味の北海道の食材だけで作った「にほんいちコロッケ」(549円)
一方、ホッケがそのまま産地から届くため、さばく工程から全て店内で行う「ホッケの一夜干し」や北海道のじゃがいもにバター効かせたクリーミーな「にほんいちコロッケ」、当日入荷の鮮魚を使う日替わりメニューは、「おいしい北海道食材」の本領発揮といえる。味にこだわるビジネス層へ深く訴求し、確実なリピーター獲得へとつなげている。
こうした宴会に強いメニューと席数を持つ「にほんいち」において、リピートの大きなフックになっているのが、ぐるなびの「幹事プログラム」の活用だ。
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3.【体験】産地で直接触れることが人を育てる
リピーターを魅了する仕掛けの根底には、N・Iならではの人材教育がある。「一番大切にしていることは体験です」と清水氏は語る。
その徹底ぶりを象徴するのが、産地へのフットワークの軽さだ。「社長から『産地へ行くけど、一緒に行かない?』と誘っていただき、私やその食材に係るスタッフも一緒に現地へ飛び立つことも珍しくありません」と清水氏は笑顔で語る。仕入れ先の漁師の船に乗せてもらったり、畑や酒蔵などへ赴いたりと、リアルに肌で学ぶ。また、スタッフのみならず家族も参加で、自社ブランド日本酒の酒米の田植えも実施したという。
店舗で扱う食材に直接触れて知ることで、自然と食材への感謝や誇りが生まれ、魅力の伝え方を主体的に考えるようになる。それが顧客に喜んでもらうアイデアへとつながり、仕事のやりがいや店舗利益にも結びつくのだ。つまり「産地直送」の体験は、組織づくりのコンセプトでもある。
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レギュラードリンクメニュー。ビールやハイボール、チューハイ、ワインなど多彩なラインナップ -
こだわりの地酒が並ぶ日本酒メニュー。毎月の仕入れによって銘柄が変わる
さらに、全店のコストや売上はオープンに数値化され、成果を出したスタッフの給与へダイレクトに反映される「利益還元」を実践。これが社員の大きなモチベーションとなっている。
4.【ドミナント】本町エリアを拠点とした店舗展開
直近では、2025年6月に「すし酒場 にほんいち 本町店」、2026年2月に「牡蠣と海鮮 にほんいち 堺筋本町店」をオープンするなど、本町エリアへの出店を増やしている。
現在、同エリアには「北海道海鮮 にほんいち 本町店」をはじめ、「純国産馬刺しと朝引き鶏 にほんいち」「居酒屋 まんまん」「大衆馬肉酒場 馬王」といった系列店が集中的に集積。エリア内での知名度向上や系列店同士での2軒目ハシゴ利用を促せるのはもちろん、産地からの発送拠点を1カ所に集約し、店舗間で食材を融通し合えるドミナント戦略のメリットは大きい。今後の展開について清水氏は、「本町エリアでさらにもう1店舗の出店を計画中です」と語る。
清水氏が最近改めて感じているのは、「食材や料理」の力以上に「人の心」の力だ。社長への信頼やスタッフ間の結束力、学びをベースに、現場の一人一人が熱意を持って食材の背景を伝え、おもてなしを行う。この姿勢こそが、顧客の心を動かす原動力になっているという。さらなる飛躍の鍵を握る、株式会社N・Iの「人財づくり」の取り組みから今後も目が離せない。
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