2026/10/20 特集

福岡“戦国焼鳥”の先駆け「家康」の繁盛ノウハウ。コンセプトに基づく店作りと仕込み集約術

福岡の“戦国焼鳥”の先駆け「戦国焼鳥家康」。激戦区・久留米で40年以上愛される久留米店の強みと経営ノウハウに迫る。入店に合わせて太鼓を鳴らす独自スタイルや、豚バラ・レモンを合わせた酢ダレといった福岡焼き鳥文化の伝統を守りつつ、セントラルキッチンでの仕込み集約により省力化とスピード提供を実現。伝統の味とスタイルを全10店舗で継承しながら、新たなリニューアル・店舗展開へ挑む取り組みを紹介する。

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久留米へ進出し40年超。街に根づいた福岡発“戦国焼鳥”

西鉄久留米駅から徒歩2分。久留米一番街の入り口近くに立つ瓦屋根の2階建てで、40年以上前から営業を続ける

鶏に限らず、豚や牛、馬まで串にする独自の「久留米焼きとり」が息づく福岡県久留米市。日本屈指の焼鳥店密集地帯として、全国的にも知られるこの地で、40年以上前から店を構えるのが「戦国焼鳥家康 久留米店」だ。

「戦国焼鳥家康」は1962年に大島 静喜(しずき)氏が福岡市で創業。戦国武将の名を屋号や商品名、店内演出に取り入れており、その後、似たようなお店が増えたことで“戦国焼鳥”と言われる福岡独自の焼き鳥文化を代表する存在となった。店舗展開を進めるなか、大島氏は「焼鳥の街・久留米で勝負しよう」と、西鉄久留米駅近くの繁華街に出店。現在の客単価は約3,000円、月商は400〜500万円。50歳以上の常連男性を中心に、会社員や団体客にも利用される。2016年にはM&Aにより、株式会社アラートホールディングス(福岡県久留米市)が事業を承継。今回は、承継後に経営に加わり、2024年に代表取締役社長に就任した瀬戸島 久司(せとじま ひさし)氏と、M&A以前から現場を知り、現在は久留米店の店長を務めながら全10店舗を統括する瀧下 光(たきした ひかる)氏に話を伺った。

調理場をカウンターが囲む1階。奥にはテーブル席も並ぶ。早い時間から1人で立ち寄る常連の姿も多い
和風の落ち着いた空間が心地よい2階の座敷。最大45人まで利用でき、会社の宴会や団体の利用が中心だ
【店舗Data】 
戦国焼鳥家康 久留米店
業態:焼き鳥居酒屋
座席:90席(テーブル、カウンター、座敷席)
客単価:昼3,000円
客層:50代〜70代が中心、男女比は7:3
住  所:福岡県久留米市東町34-46
アクセス:西鉄久留米駅より徒歩約2分
営業時間:17:00~23:30
定休日 :水曜日
https://yakitori-ieyasu.co.jp/

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目次
創業時から受け継ぐ“戦国焼鳥”の世界観
福岡の焼き鳥文化を象徴する豚バラと酢ダレ
仕込みを集約し、店舗は仕上げに専念

創業時から受け継ぐ“戦国焼鳥”の世界観

太鼓は入店時にも退店時にも必ず叩く。ドドンッと響く音で客を迎え、送り出すのも、「家康」ならではの演出だ

客が店に入ると、ドドンッと太鼓の音が響く。入り口には営業中ではなく「合戦中」の文字。黒を基調とした店内には家紋や戦国武将の名が掲げられ、“戦国焼鳥”の世界観が広がる。黒は創業者・大島氏の好みで、特注のテーブルなど当時からの設えを今も残す。

このコンセプトのルーツは、大島氏が「家康」創業以前に福岡市東区箱崎で営んでいた喫茶バーにある。ブランデーに歴史上の人物“ナポレオン”の名が付くことに注目し、常連客の大学教授に尋ねると、一定の手続きを経れば著名人の名も使えると知った。そこでインパクトを残すため、店名に戦国武将の名を取り入れることにした。かつては串焼きの素材ごとに武将名を付け、肝は「家康」、貝柱は「武田信玄」、白もつは「光秀」と呼んでいた。現在は素材名での提供だが、当時の呼び名は店内の掲示に今も残っている。

店内に掲示されている木札。肝が「家康」、貝柱が「武田信玄」など、素材ごとに戦国武将の名前をつけていた時代の名残だ
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福岡の焼き鳥文化を象徴する豚バラと酢ダレ

  • 一番人気の「焼鳥10本セット」(1980円)。豚バラ、とり皮、とりみ、砂ずり、はつなど、定番の串がそろう。焼き鳥を注文すると、キャベツとオリジナルの酢だれが付いてくる
  • 「トマトベーコン」(320円)や「しそ豚巻」(350円)など、巻物串は全5種。女性にも評判だ

福岡の焼き鳥店で、席に着いてまず頼むのは「生ビールと豚バラ」。焼き鳥なのに鶏ではなく豚から入ることを、地元客は不思議に思わない。ほどなく運ばれてくる皿盛りのキャベツを酢ダレにつけ、つまみながら串の焼き上がりを待つ。このスタイルの源流の一つとされるのが「家康」だ。「創業者の大島さんから、当時は豚バラが安かったと聞いています」と瀬戸島氏。手頃に仕入れられる豚バラを串にしたのは、創業者のセンスだったという。

もう一つの名物が酢ダレ。「家康」では酢にレモンを合わせた「レモンダレ」として出す。レモンは丸ごと使い、風味を飛ばさないよう提供の直前に調味料と合わせる。品書きには巻物串や焼鳥10本セットのほか、焼き豚足、明太たまご、もつ鍋など、福岡らしい品が並ぶ。豚バラ、キャベツ、レモンダレという創業期から続く味とスタイルは、いまや福岡の焼き鳥文化として定着している。

  • 炭火で焼く「焼き豚足」(430円)。セントラルキッチンでボイルしたものを店で焼き上げ、レモンダレで味わう
  • 福岡らしさを打ち出す「明太たまご」(480円)。明太子をのせた卵焼きで、現在は全店のグランドメニューに加わっている
  • 約10年前に久留米店から導入した「もつ鍋」(1人前1,280円、注文は2人前から)。好評を受けて各店へ展開された
  • 左から「サッポロ黒ラベル 中ジョッキ」(600円)、「レモンサワー」(520円)、「デュワーズハイボール」(550円)

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仕込みを集約し、店舗は仕上げに専念

仕込み済みの串を、注文を受けてから1本ずつ備長炭で焼き上げる。オープンキッチンならではの臨場感も魅力

福岡市城南区、地下鉄茶山駅近くの本社には、全店分の仕込みを担う調理場(セントラル工場)を併設。鶏や豚はブロックで仕入れ、カットから串刺しまでを一貫して行うほか、レモンダレや豚足の下処理もここで行う。仕込んだ食材は、各店のマネージャーや店長が毎日専用車で受け取り、店舗では最終工程に集中。仕込みを1カ所に集約することで全店のクオリティーをそろえ、提供の早さにもつなげている。

また、店舗では本格的な調理設備を極力持たずに済み、仕込みや調理の負担も抑えられる。これは創業者・大島氏の時代から続く「店は仕上げに徹する」という考え方によるもの。一方、串刺しは今も手作業で、輸入品や冷凍串は一切使わない。串に挟む生野菜は手づくりの証。「白もつ」と「とり皮」のように焼くと見分けにくい串は、野菜を変えて区別する。

今後は、休業中の天神店をはじめ、博多駅前店、祇園店の3店舗から既存店のリニューアルを進める。黒基調の外観など「家康」らしさは残しつつ、内装はナチュラルに刷新。メニューも定番を軸に海鮮や馬刺しなどの調理メニューを増やし、焼鳥専門店から焼鳥居酒屋へと幅を広げる。「店舗数は増やしたいですね。今は福岡市中心部に店舗が集中しているので、その周辺にも広げていければ」と瀬戸島氏。長年培ってきた「家康」らしさを受け継ぎ、新たな展開を見据えている。

株式会社戦国焼鳥家康 代表取締役社長 瀬戸島 久司 氏(右)、営業統括マネージャー 瀧下 光 氏(左)/瀬戸島氏はカフェ経営などを経て、2021年からアラートホールディングスの飲食事業へ参画。2024年、戦国焼鳥家康の社長に就任。瀧下氏は、異業種から約18年前にアルバイトとして入社後、社員に。現在は久留米店に勤務しながら、全店舗を統括する

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