居酒屋甲子園2024優勝「アホウどり」の、学生を魅了するメニュー開発&接客術

2024年の居酒屋甲子園で優勝した、学生が週2で通える焼鳥屋「アホウどり」。コロナ禍を機にターゲットを学生に絞り、メニューや接客を磨いてきた。それが功を奏し、スタッフが能動的にアイデアを出すようになり、売上だけでなく人材採用にも好影響をもたらしている。

URLコピー

コンセプトは“学生が週2で通える焼鳥屋”

  • 京都大学の学生寮から近い「聖護院店」。ファサードで店のコンセプト「学生が週2で通える焼鳥屋」を発信
  • 1階(写真)と2階に計47席。入り口近くに調理場とカウンター席があり、調理する様子や店のにぎわいが外から感じられるような構造

“学生が週2で通える焼鳥屋”をコンセプトに掲げる「京都炭火焼鳥 アホウどり 聖護院店」。客単価2,100円で来店客の半数以上がリピーターの居酒屋だ。2024年の「居酒屋甲子園」では日本一の栄冠に輝いており、高い接客・サービス力がリピーター獲得の大きな要因となっている。

京都炭火焼鳥 アホウどり 聖護院店
京都府京都市左京区聖護院山王町16-28
https://r.gnavi.co.jp/7r1ww8s30000/
https://www.instagram.com/ahoshougoin/
京阪本線・神宮丸太町駅から徒歩8分の場所に2018年オープン。“学生が週2で通える焼鳥屋”をコンセプトに学生やインバウンド客を獲得。安くてボリュームがあり、特別な食体験ができるメニューをラインナップ。京都に3店舗(聖護院店京大前店北野白梅町店)を展開。

目次
人生のドン底を救ってくれた友人のために店を作りたい
【POINT1】コロナ禍を機に学生に喜ばれるメニューを強化
【POINT2】友達が増える、スタッフにファンが付く接客の極意
【POINT3】常連客がアルバイトに、アルバイトが社員に、の好循環

▼ぐるなび公式アカウント▼
【LINE】ぐるなび通信デジタル
【X】   ぐるなび - 飲食店様のお役立ち情報

よろしければ、ぜひ友達追加/フォローをお願いします!

人生のドン底を救ってくれた友人のために店を作りたい

現在、京都市内に「アホウどり」を3店舗展開する株式会社アホウプロジェクト。代表の泉川 武士 氏は兵庫県西宮市出身。大学卒業後、食べ放題が人気を呼んでいる焼き肉店に就職し、店舗での通常業務のほか新人研修なども担当するなど充実した日々を送っていた。

「アホウどり」出店のきっかけは、泉川氏の悲劇だ。当時結婚を前提に交際していた恋人との結婚式が決まり、招待状も送り、あとは結婚式の日を待つだけのとなったある日、突然の破談。幸せの絶頂から人生のどん底へ突き落された泉川氏を救ってくれたのは友人だった。

「友人たちが『泉川武士 結婚式・告別式』というアホな会を開いてくれました。すごく気持ちが楽になって、もう感謝しかないと。当時僕は3階建て250人ほど入れる大箱店の店長でした。日本一をめざして一生懸命やっていましたが、この経験からコイツらのためにも、小さくてもいいから家族みたいに楽しく話をできるような、アホになれるお店を作ろうと思うようになったんです」と泉川氏は振り返る。

  • 学生がメインターゲットだが、観光地ということもあり外国人客も多い。来店した外国人には1階の壁にメッセージを書いてもらうよう促しており、英語、ハングル、イタリア語などさまざまな言語で店の感想が書かれている
  • 「トイレがキレイ過ぎたらおもしろい」という発想から、2階にあるトイレは金ピカ。店名どおりの“アポ”でユニークな仕掛けが口コミのきっかけに

【ポイント1】コロナ禍を機に学生に喜ばれるメニューを強化

  • 「やきとり盛り」(6本750円・税抜き)。右より、ココロ、はさみ、つくね、ズリ、セセリ、ボンジリ。新鮮な鶏肉を厳選し、炭火で一本一本丁寧に焼き上げる
  • 「グツグツ踊る!ジャンボだし巻」(500円・税抜き)。グツグツと沸騰したジャンボだし巻き。たっぷり熱々あんかけのシズル感が人気

こうして、2018年に「京都炭火焼鳥 アホウどり」をオープン。立地にも恵まれ、オープンしてからわずか2年余りで京都市内に4店舗(2024年12月現在、3店舗)を経営するまでに成長。

しかし、決して経営は順調ではなかった。その原因は、「老若男女が肩を並べて楽しめる店を考えていましたが、お客様からすると、何を売りにしている店なのかよく分からなかったんだと思います」と泉川氏は分析する。

「『アホ』と『炭火焼鳥』を銘打っているものの、めちゃくちゃアホほどこだわった焼き鳥を食べさせてくれる店なのか、それともほんまにアホみたいに愉快なスタッフさんがいるのか、お客様の期待のベクトルはバラバラで、だから扉を開けて入ってからの『アレ?(思っていたの違う)』みたいなお客様は正直多かったです」(泉川氏)。

店舗数は増やしたものの売上は大きく伸びず、スタッフ内の不協和音も聞こえてきた。「そんな時にコロナ禍に突入。不安しかありませんでしたが、京都大学が近くにある聖護院店だけが、常連さんの来店もあって売上が安定していたんです」と泉川氏。

そこで、「『アホウどり』が大事にせなアカンのは、常連さんや!」という本質が見え、ターゲットを学生に絞り、全ての物差しを“学生が週2で通える店”に振り切った。まず、料理は焼き鳥などの鶏料理を中心にして、サラダなどの野菜料理を減らすなど、それまで120~130あった品数を80~90に絞る「選択と集中」を行った。さらに一皿のボリュームを多く、味は濃くと学生に喜ばれるようにブラッシュアップ。メニュー単価のボリュームゾーンを500円に設定したことで、客単価を3,100円から2,100円に下げた。さらに、出店場所も学生街に絞り、聖護院店よりもさらに京都大学に近い「京大前店」を出店するなど、学生にターゲットを絞った店づくりを進めていった。

  • 「大学生限定! オールスター恋するアホ丼」(900円・税抜き)。焼き鳥、串カツ、からあげ、ポテサラ、味玉、赤ウィンナーを桶で提供。まかないから生まれた人気メニュー。大学生限定とあるが、自称大学生なら注文OK!
  • 「やきとり屋さんのポテトサラダ」(300円・税抜き)。卵のとろーりとした味わいに、トビコのプチプチ食感と塩気が加わり、おつまみにもってこいの一品

「客単価を下げても利益を確保できている理由は、飲み放題プランのオーダー率が高いから。どの店舗もオーダー率は高く、特に北野白梅町店では60%が飲み放題を頼みます」(泉川氏)。飲み放題は1,100円、1,400円、1,900円(すべて税抜き)というお得感の高いプランがあり、ハイボール、酎ハイなどをラインナップ。どれもプラス100円で生ビールも飲み放題にできる。生ビールばかりが出ると利益は下がるが、学生メインの「アホウどり」で最もよく出るのが「お茶割」(緑茶ハイ/烏龍ハイ)。お茶割は原価率が低いため、飲み放題の利用が増えれば増えるほど、利益が生まれるという仕組みだ。

飲み放題(3種類)を注文する人が多く、「お茶割」などの比較的利益率の高いドリンクがよく出るため、店全体の利益アップにつながっている
「テキーラ」(500円・税抜き)も場が盛り上がるメニュー。“アホ”と“かしこ”のラインが書かれたテキーラ専用グラスで提供どこまで注ぐかはお客様次第。最初の1杯であれば300円になるお得な「駆けつけテキーラ」も
ぐるなびからの最新情報を受け取るのはLINEが便利!
配信頻度は、週1~2回ほど。ぐるなび通信の新記事や、旬な情報が通知されて便利です!ぜひご登録ください。
「ぐるなび通信デジタル」
ご登録はこちらから

【ポイント2】友達が増える、スタッフにファンが付く接客の極意

さらに泉川氏は、リピートにつなげることが売上の拡大につながると考え、来店客に“食のエンタメ体験”をしてもらうことを重視。このエンタメ体験をきっかけに来店客とスタッフの接点が増えるような仕組みづくりをすることで、ファンを増やしている。

接客のポイントは「一言添え」。必ず提供時にスタッフが一言を添えて商品の魅力を伝えるようにしている。「一言添え」のポイントは3つ。

1つ目は「情報」。全ての商品の提供時には必ず料理の説明を行い、ドリンクを出したら「乾杯どうぞ!」と必ず一言を添えている。

2つ目は「巻き込み」。「『炙りヤンニョムチーズチキン』(500円・税抜き)の提供時には、スタッフが最後にだしを回しかけます。その時、ジュ~と肉汁が飛び散ったら、スタッフの『せーの』の声の後に、お客様に『ナイスジュー』と言っていただくようお願いしています。こうしてグループ全体を巻き込むと、隣のテーブルの人も一緒に『ナイスジュー』と声を出して、いつの間にか友達になっていることも多いです」(泉川氏)。

「炙りヤンニョムチーズチキン」(500円・税抜き)。甘辛ダレで和えた唐揚げヤンニョムチキンの上にチーズトッピング。和だしを回しかける際に「ナイスジュー!」と掛け声をかけて盛り上がる

3つ目は「アシスト」。例えば「恐怖の!ロシアンたこ焼き」(5個500円~・税抜き)には、「1つだけ当たり(デスソース入り)が入ってますので、誰が当たりを引くか楽しんでください」とメニューの楽しみ方、食べ方を説明するようにしている。

さらに、スタッフには一人ひとり「アホウネーム」という個性的なニックネームを付いているが、これが会話のフックとなりスタッフにファンが付くことも少なくない。「スタッフとお客様が仲良くなることでリピーター率は50%以上。ヘビーユーザーの獲得につながったのは、おいしい、安いというコスパの部分だけではないと思います。スタッフや隣の常連さんとの交流を意図的に生むことで、『アホウドリに行くと楽しい!』『友達ができる!』という唯一無二の体験を提供してきた結果だと感じています」と泉川氏は笑顔を見せる。

全ての商品は提供する際に必ず説明などの一言を添える。写真のスタッフ「大ジョッキ」(ニックネーム)さんも、常連客から社員になった一人

繁盛店づくりのサポートは「ぐるなび」におまかせください!
▼詳細はこちらから
0円から始める集客アップ。ぐるなび掲載・ネット予約【ぐるなび掲載のご案内】

【ポイント3】常連客がアルバイトに、アルバイトが社員に、の好循環

スタッフの家族を招待する「アホ参観日」。家族にスタッフや店が感謝を伝える場になっている。「このイベントをすることで、ご両親が息子さんや娘さんの就職先の一つとして『アホウどり』を考えてくれるようになった、というケースもあります」(泉川氏)

アルバイトにファンが付くとともに、労働環境の整備などによって「働きたい店」だけではなく「働きやすい店」にもなっており、友人や後輩などを紹介するリファラル採用も多い。また、会社としてのイベントを強化することで、アルバイトが社員になる流れも生まれた。その一つがスタッフの家族を店に招く「アホ参観日」だ。「コロナ禍で真っ先に打撃を受けたこともあり、飲食業界は就職先としてあまりよくないイメージをお持ちの親御さんも多いようです。そこで当社の経営方針発表も併せて行うことで、理解、納得して、お子さんを応援してくれるようになると考えました」(泉川氏)。

学生をファンにして常連客にし、常連客の中から「アホウどり」で働きたいという人がアルバイトになり、やがて社員に。こうした流れによって、意識やコミットメントが高い人材の確保に成功。スタッフが自発的にメニューや接客のアイデアを出してQSCの質が自然と上がっていく状況に。「近所のおばちゃんのようにおせっかいをする『ご近所』という接客スタイルも、アルバイトスタッフからの発案です」と話す泉川氏。今では全店舗で「ご近所接客」を採用。やらされ仕事ではなく、自分で考えて行動する当事者意識が強いスタッフがそろっているからこそ、結果として会社の成長につながっている。

Instagramはスタッフが配信。日替わりの投稿担当者を書いたインスタカレンダーを店内に貼っているが、こうした取り組みもスタッフが自主的に行っているもの

聖護院店の最高月商は400万円で、平均月商350万円を維持。姉妹店である北野白梅町店(16.5坪)は最高月商500万円を記録した。

既存の聖護院店、京大前店、北野白梅町店に加え、2025年には新たに今出川店を出店予定。京都の有名大学をしっかり押さえて「学生街×アホウドリ」を強化していく。「中長期的な目標としては、“学生街にはアホウドリ”と思われるよう、大阪の学生街も視野に入れて店舗数を伸ばしていきたいです」(泉川氏)と、さらなる成長を目指している。

代表取締役 泉川 武士 氏
兵庫県西宮市出身。焼肉店に5年勤務したあと、28歳で焼き鳥店のFC店として独立。30歳の時にオリジナル1号店「炭火焼鳥アホウどり」を出店。現在京都市内に3店舗を展開。

Googleビジネスプロフィールの運用代行サービスは、ぐるなびで!

ぐるなびによるGoogleビジネスプロフィール(GBP)を活用したMEO対策・クチコミ対応を含む、飲食店に特化した集客支援・運用代行サービスを紹介します。


▼詳細はこちらから
【ぐるなび】飲食店向けGoogleビジネスプロフィール(GBP)集客支援・運用代行サービス

飲食店の集客や販促は「ぐるなび」におまかせください!
資料請求・お問い合わせはお気軽にどうぞ

「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。
「ぐるなび」の掲載は無料で始められ、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています!