「思うように客足が伸びない」「でも打つ手が浮かばない」――。そんなときは、店と周辺環境を見つめ直し、冷静に分析してみると、狙うべき新しい客層や販促方法が見えてくる。より“強い店”になるための調査・分析方法やピンポイントの補強の仕方を、コンサルタントの石田義昭氏に聞いた。
商圏を知る!
自分の店がある町は、どんな人がいて、どんな特徴があるのか。感覚ではなく、実際の調査結果をもとに、具体的に把握することが大切だ。
伸び悩んでいるときこそ、周辺環境の調査と分析を!
自分の店に何らかの対策を講じる必要を感じたとき、何から手をつけたらよいのだろうか。「まず、自分の店の立地と商圏を正確にとらえ直すこと」と石田氏は指摘する。「自分の店の立地を、大ざっぱに『オフィス街』とか『住宅街』などととらえ、わかったつもりになっているのはよくあること。しかし、実際に細かく調査してみると、実は予想以上にファミリーが多いなど、思っていたのとは違う層が多くいることは少なくありません。また、町は衰退と再生を繰り返すもので、商業施設などが建設されれば、一気に人の流れが変わりますから、知らず知らずのうちに、住民や通行人の属性が変化していることもあるのです」(石田氏)。したがって、立地や商圏のリサーチは、出店するときだけでなく、時機に応じて繰り返し行う必要があるのだ。
では、立地・商圏の具体的な観察・調査はどのように行えばいいのか。「まず、店を基点にして半径300~400mの円を描きます。これは、徒歩で無理なく往復できる範囲です。郊外の場合は、車で5分ほどの距離を半径とします。これが第一次商圏であり、ここを徒歩や車で回ってみて、徹底的に観察してみましょう。どんな店があるのか、どんなタイプの家が多いのかなどを見て、どういう人々がいるのかを調べます」(石田氏)。
さらに石田氏は、「それぞれの商圏の“核”を把握することが重要」だと言う。乗降客の多い駅があれば、そこは“駅核商圏”。集客力のある商業施設があれば、“大型店舗核商圏”。人々の多くは、その“核”を中心に動いているのだ。
次に見るのが人々の“動線”。「どんな人が何時頃、どの道を通っているのかを調べることも大事。年齢層、性別はもちろんですが、服装や持ち物などもできるだけ細かく観察します。同じように車の流れ(車両動線)も調査します。すると、人々がどんな目的で、どのように動いているのかがつかめてきます」と、石田氏は解説する。
併せて、店の前を通る人を調査しよう。郊外にある店の場合は、店舗前の道路の車両通行量の調査も必要だ。「平日の1日と、金曜日、それと土・日曜日のどちらか1日に、店の営業開始時間の1時間前から閉店時間までを対象として、人や車の数を調査します。性別、年齢別(見た目)などで集計をとるといいでしょう」(石田氏)。
実際に自分で調べる以外に、より客観的に立地・商圏を知る方法として、行政による調査結果を活用することも挙げられる。駅の乗降者数、住民の年齢構成、商店の数、人や車の通行量などの調査を、ほとんどの行政は定期的に行っており、役所などで閲覧が可能だ。人口の推移や、年齢構成の変化もわかり、将来像の予想も立てやすい。
また一方で、「店の前を通る人と同じ目線になって、あらためて自分の店を見直してみるといいいでしょう」と話す石田氏。自分の店がどう映っているのか、入りたい店になっているのかを検証するのだ。そのなかで、「店の外観をチェックするうえで大切なのは、視認性と視界性」と語る。視認性とは、目的意識を持って見ている人に見えること。視界性とは、意識していなくても目に飛び込んでくること。「自店にこの2つの要素があるか、あるいはどちらかがあるかを確認しましょう。店頭の看板なども、ずっと同じ場所、色、形では風景の一部になってしまい、視認性、視界性ともに失われてしまいます。2カ月に1度は位置を替えるなど、商圏の中での存在感を維持することが重要です」(石田氏)。
商圏調査のポイント
【核】を見つける
自分の店の第1次商圏(徒歩なら半径300~400m、車なら約5分で走れる距離を半径とした範囲)のなかで、人が集まる“核”となっている場所を見つける。駅であれば「駅核商圏」、商業施設であれば「大型店舗核商圏」。その“核”を中心に、どういう人の流れがあるかを知ることが、商圏の特徴を把握するうえで重要な手がかりになる。
動線を見る
商圏内にいる人々が、何時頃、どの道を通って、どこに向かうのかを調べる。性別、年齢別ばかりでなく、服装や持ち物の特徴なども観察することで、商圏の人々の階層や属性、行動パターンが見えてくる。それによって、同じ住宅街でも若いファミリーが多いのか、年配者が多いのかなどがわかり、経営戦略に活かすことができる。