2012/01/24 特集

目からウロコの飲食店経営 これって常識?非常識?(2ページ目)

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飲食店経営20の疑問 05~10

05 腕のいい料理人は絶対に必要?

いい料理人は簡単には見つからない。偶然に頼らないことが重要

もちろん腕のいい料理人を見つけられれば、それに越したことはないでしょう。しかし、感動を呼ぶほどの腕や発想力を持った人材は簡単には見つからないし、仮に求人をかけたとしても事前に力量を見極めるのは難しい。では、いい料理人がいなければ飲食業は絶対軌道に乗せられないかというと、必ずしもそうとは限りません。むしろ料理経験のない人が繁盛店で一定期間修業し、そのノウハウをもとに開業して成功するケースはよく見られます。あるいは、最初はプロデュース力のあるシェフやコンサルタントと組んで料理人を派遣してもらい、一緒に働きながら吸収するという方法もあるでしょう。技術も力量も定かではない料理人に厨房のすべてを任せるより、その方がリスクが少ない。何より重要なのは偶然に頼らず、料理のコントロールを人任せにしない姿勢です。

06 看板メニューはないとダメ?

お客様から忘れられないためには、やはり〝顔〝となるメニューは必要

お店の顔となる看板メニューには、大きく2つの役割があります。1つは新規のお客様に「おっ、この店はよさそう」と注目してもらう効果。もう1つはたまにしか来ないお客様に「あそこのあれがまた食べたい」と思い出してもらう効果です。競争が激しい昨今、忘れられないためにも、他店にないメニューを1つ持つ努力は大切です。問題はその打ち出し方。いくら独創的な商品でも、それが押し付けに感じられたら逆効果になりかねません。自分しか知らない味を探している、食に関心の高い人たちが注目し、口コミが広まり始めた段階で大々的にアピールするのも一手です。

07 メニューブックには写真を載せるべき?

口コミを誘うために写真なしのメニューブックを活用する発想も

写真があれば、料理のイメージは伝わりやすくなります。ただ重要なのは、それが戦略にフィットしているかどうか。例えば立地条件があまり良くなく、新規のお客様がさほど期待できない場合。思わず口コミしたくなる状況をお店から仕かけなければいけません。質問6とも関連しますが、そこで不可欠なのは、お客様自身に自分で発見したという楽しさを持っていただくこと。その場合、まずは文字だけのメニュー表を用意して、ある程度の起爆期間を設けるという方法もあります。要は、メニューブックを戦略的ツールとして捉える発想が重要なのです。

08 女性客が増えると売上は上がる?

元も子もない事態を避けるべく、お店のコンセプトをよく吟味すべし

商売で成功するコツは女性ニーズを取り込むこと──。これもよく耳にすることです。たしかにファミリー向けのお店については、この法則は当てはまります。ただ、もともと男性客メインの店では注意が必要です。一般に女性のグループ客は、お店での滞留時間が長い割に消費額が低い。例えば、オフィス街の焼鳥店を考えると、男性の常連客がデートなどで女性を伴うケースが増えるのは売上アップに貢献します。ところが、店のコンセプト自体を変えて女性グループを狙いにいくと、肝心の男性客の足が遠のき、しかも総売上高も落ちるという最悪の事態になりかねません。

09 新規客とリピーターの理想的な比率は?

常連客の遺失率を上回る新規客を獲得できているかが重要

新規客とリピーターの比率は、店の立地によっても変わります。例えば有名観光地では、一見のお客様だけ相手に商売が成り立つケースもあるでしょう。典型がイタリアのヴェニス。多くの店が割高で、満足度も高くありませんが、世界中から新しい観光客が訪れるので成り立つわけです。もちろん競争が激しく、少子化が進んだ日本ではそうはいきません。商売をしていれば常連のお客様の逸失というのは必ず出てくるため、常にそれを上回る新規客を獲得する努力が必要です。一般論としては新規客30%に対して、リピーター70%くらいだと、安定した経営が望めるはずです。

10 メルマガ、DMなどプッシュ型販促は不可欠?

リピーター作りには不可欠なツール。信頼関係を築く道具と捉えよう

店舗の選択肢が増え、1店あたりの来店頻度が低くなっている昨今。DM やメルマガなどを駆使してお店側からアプローチをしない限り、待ちの姿勢ではお客様に忘れられてしまいます。重要なのは、最終来店日から間をあけないこと。一般的に3カ月以上期間をあけると、レスポンス率は急速に落ちます。逆に記憶が鮮明なうちに再来店を促せば、リピーター獲得にも効果が期待できます。その際に注意すべきことは、過剰な売り込みをしないこと。情報が大衆化し、誰もが発信者になれる今、必然性のないセールスはかえって逆効果になることがあります。求められるのは一方的でない、相互のコミュニケーションを通じて信頼を得て、より良い関係を築くパブリック・エンゲージメントの発想。DMやメルマガは、お客様とコンタクトを取るための道具と捉えるのが得策でしょう。

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