2012/01/24 特集

目からウロコの飲食店経営 これって常識?非常識?(4ページ目)

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飲食店経営20の疑問 16~20

16 ワイン居酒屋ブームは2012年も続く?

エリアによって顕著な差が出てくる。注目は「和酒バル」に移行する気配

この10年で、ワインは随分日本人の生活スタイルに溶け込みました。とはいえ、都市部と地方で浸透度にかなり差があるのも事実。2011年に脚光を浴びたワイン居酒屋業態は、東京近郊や名古屋、京阪神エリアではまだ伸びる余地はありますが、それ以外のエリアでは厳しいかもしれません。メディアの関心は、日本酒とスペイン料理を組み合わせた「和酒バル」に移る気配も。ただし、ブームではなく本気でワイン好きの客層を開拓する業態なら、話は別。どんなお酒でも、美味しさを理解させるには経験が必要。腰を据えてお客様を育てる気持ちがあれば、地方でもチャンスはあるはずです。

17 テイクアウトは売上アップにつながる?

飲食業と物販業は違うビジネス。2つの店を経営する心構えが必要

持ち帰って食べる中食ニーズの高まりを受けて、テイクアウト部門に力を入れる飲食店も多くなっています。同じメニューを店内・店外の両方で売れれば、儲けも倍になる。こう考える人がいても不思議はありません。ただ実際、飲食と物販では商品設計も儲け方もまったく別もの。テイクアウトでは味はもちろん、ショーケースの見せ方や包装なども含めたブランディングが極めて重要です。「店で出している料理をパックして並べておけばいい」という安易な発想では難しいという現実も知っておくべきでしょう。また、テイクアウトがうまくいかないために、焦って本業とは関係ないメニューを始めてしまう店も見られますが、これも本末転倒。肝心の店内メニューがおろそかになり、客足が落ちてしまうケースもあります。本気で売上アップにつなげるためには、同時に2つの店を経営するくらいの覚悟が必要です。

18 今後の鍵を握るのは高齢者マーケット?

高齢者ニーズを取るには相当な戦略と覚悟が必要。むしろ注目は子供市場

少子高齢化が進むこれからの時代、高齢者の顧客をどう取り込むかは、たしかに重要です。ただしニーズが多いマーケットは、それだけ競争も激しい。しかも人はリタイアすると、無駄なお金を使わなくなるものです。高齢者マーケットの例として、よく同窓会が挙げられますが、足の強くないお年寄りに集まってもらうには、立地もよくなければいけません。本気で高齢者ニーズを取りたいなら、例えば送迎バスなどを含めて設備を整えるなど、かなりの戦略が必要。むしろ少子化が進むと、人は自分よりも子供や孫に、よりお金を使うことが予想されます。そこには、新たなビジネスチャンスが生まれるはずです。

19 今の時代、飲食業にいい人材は集まりにくい?

いい人材を確保するにはオーナーがお店の理念を明確に示すことが大切

良い人材の確保は、飲食店にとって永遠のテーマ。最近ではオーナーさんから「ゆとり世代の若者たちは仕事が続かない」という悩みをよく聞きます。実際は、集客力のある店とそうでない店の差が大きくなっているのと同じで、スタッフのレベルも二極化しているのが現実。慢性的な人材不足に悩む店も多い一方で、やる気のある若者を確実に集めている店も少なくありません。その差はどこから来るのか。確実なのは若い世代ほど、実は仕事にやりがいを求めているということです。少子化が進み、国内市場が急速に縮小していくなか、従来のような結果至上主義は、限界に来つつある。今後の飲食業には「生産地との連携」「食文化の保存」など、何らかの社会的役割を果たしつつ、利益を上げていく姿勢が求められます。店としても存在意義を明確にできれば、優れた人材は自然に集まるはずです。

20 低価格競争は2012年以降も続く?

円高とTPP により強まる低価格競争。一方でよりサービス重視の傾向も

デフレが続くなか、ここ数年は飲食業界でも、激しい低価格競争が続いてきました。2012年、この傾向はより強まりそうです。平均所得が下がり、失業率も悪化している昨今、まず激安メニューへのニーズが増えています。また折からの円高に加え、TPP(環太平洋経済連携協定)参加で輸入関税が下がれば、外国産の安い食材も一気に入ってくるはず。今年あたり、機械化による「牛丼1杯150円」の無人店舗を構想するチェーン店も出てくるかもしれません。その一方で、食材費の低下をプライスではなくサービスに充てる店も増えるでしょう。十分なスタッフを配置して接触回数を増やし、満足度を上げる発想です。徹底した低価格化か、顧客との関係構築か。どちらの路線を選ぶにせよ、中途半端ではなく、とことんやり切る姿勢が、成功への1つの鍵になりそうです。

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