2018/07/24 特集

飲食店も本気で取り組むべき時代に! 今すぐ始める働き方改革(3ページ目)

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【Special Interview】制度導入の効果は? 地域限定社員に聞く地域限定社員になり、仕事と子育てを両立!。固定給と休日保証が魅力で、やりがいもアップ

株式会社アトムが運営するステーキ業態の「ステーキ宮」。その東海店で、「地域限定社員」として約3年勤務する神谷知子さんに、実際に働いてみて感じることをインタビュー。また、上司であり、ともに社員として働く西口茂樹店長にも合わせて話を聞いた。

ステーキ宮 東海店
愛知県東海市加木屋町石田58-1
「おいしい、たのしい」を合言葉に、安心・安全なステーキと自家製ハンバーグを、創業の味「宮のタレ」で楽しめるステーキ専門店。最寄りの名鉄河和線高横須賀駅から徒歩約20分の国道155号線沿いに立地。11:00~15:30(ランチ)、17:00~22:30(ディナー)で営業する。

転職を考えていた矢先、地域限定社員制度を知る

――「ステーキ宮 東海店」で働き始めたきっかけから、地域限定社員になるまでの経緯を教えてください。

地域限定社員になって3年。「人間関係にも恵まれ、毎日楽しく働いています」と語る神谷さん。中学2年生を筆頭に3人の子育て真っ最中だ
高校時代に飲食店でアルバイトをしていましたが、その後は一般企業の事務職を経て結婚し、3人の子どもを育ててきました。5年前、3人目の子どもが1歳を過ぎたころ、「ステーキ宮東海店」がオープニングスタッフを募集しているのを知り、そろそろ働いてもいいかなと考えて応募し、一番下の子を保育園に預けて働き始めました。

この店は家から車で約20分。子育てがあり、長い時間働くことや土・日曜日両方の出勤は無理だったので、パートナー(パート勤務)になりました。周囲の飲食店と比べて時給は高い方なので、その点では満足していましたね。

3年前、一番下の子どもが保育園の年中になり、少し手が離れたのをきっかけに、もう少ししっかり働きたいと思うようになりました。3人の子を1人で育てなくてはいけなくなったので、パートの収入では少し足りないと思いましたし、何より自分が望む働き方ができなかったのです。

週5日働いてもっと収入を得たいと思っても、シフトの都合で週4日しか働けないことがあります。そうなると収入は減りますし、何より家計が不安定なことが困ります。正社員として安定した収入が得られる仕事に転職したいと考え、求職活動を始めていました。

そんなとき、当時の上司から、「地域限定社員という制度があるのでやってみないか」と誘われたんです。「私に社員が務まるのかなあ」という不安はありましたが、上司から「責任感があるから大丈夫、できるよ」と言ってもらい、安心しましたし、できなかったらパートに戻ればいいと気楽に考えて、応募してみることにしました。

安定した収入が得られ、社員としての責任と自覚も

――地域限定社員制度は、どんなところが魅力だったのでしょうか?

私は「M8」(※前ページ「地域限定社員」の働き方パターン参照)なのですが、もっとも惹かれたのは、パートのときのようにシフトの都合で就労時間を削られる心配がなく、1日8時間働いて、きちんと固定給をいただけること。それと、月9日の休みが取れることでした。固定給なので収入が安定しますし、当然、給与も時給換算より多くいただけます。残業はしなくてもよいのですが、所定外の残業には残業代がつきます。半期に1回の賞与(最大10万円)も、パートナーにはないものなのでとてもうれしいですね。

月9日の休日が保証されるのも、本当にありがたいこと。子どもがいるので、土・日曜日のどちらかは休みたいですし、事前に休みを申請しておけば、平日の授業参観など、学校行事にもきちんと参加できます。就業時間は9~18時までが基本ですが、希望すれば、正午からの8時間勤務なども可能。午前中に家庭の用事を済ませて出勤できるので、とても便利です。

店によって違うかもしれませんが、シフトの調整によっては、夕方から出勤することもあります。それも含めて、自分が希望する働き方が可能で、子育てと仕事が無理なく両立できることは、本当に感謝しています。

――具体的に1日のタイムスケジュールを教えてください。

毎日、朝は6時から6時半の間に起床し、7時40分には子どもたちを学校に送り出します。その後、家事をこなし、子どもたちの夕食の支度をして、8時15分頃に家を出ます。お店には8時45分頃に到着し、開店作業を行います。終業の定時は18時なので、何もなければ帰宅しますが、とても忙しい時間帯なので、落ち着くまで残業することも。また、スタッフが急に休んだりなどして人手が足りなければ、もう少し遅くまで働くこともありますね。

――地域限定社員になって、仕事はどう変わったのでしょうか?

私はキッチン担当なのですが、パートナー時代の厨房業務に加えて、開店・閉店作業やレジ締めなども行っています。その点は正社員と同じです。

一番の変化は、指示を出したり、教えたりする側になったことでしょうか。パートナーのときは、正社員の方が必ず店舗に1人はいたので、私は指示された仕事をしていればよかったんです。ただ、今は正社員が西口店長1人なので、店長がいないときは、私ともう1人の地域限定社員(S7)の方が、店の責任者となります。

例えば、アルバイトがルールに外れるような髪型をしていたら、迷わず注意します。言われなければ、その子のためにも、店のためにもよくありませんから。でも、パートナーのときは気になっても言わなかったですね。

会社からは、「店のために頑張ってほしい」と言われているので、忙しいときは残業をすることもあります。店をしっかり運営することは、社員である自分にも責任があることだと思っています。その点も、パートナーのときとは考え方が違いますね。今はシフトも組みますし、新人スタッフのトレーニングなども行っています。

良好な人間関係が継続の力。正社員への登用もある

――これまで、この店舗で働き続けられたのはなぜでしょうか?

現在の働き方は自分に合っていると思いますし、社員として任されていることに、やりがいも感じています。

人間関係に恵まれたことも、続けられている理由として大きいですね。オープニングからずっと一緒に働いているパートナーさんは、私が地域限定社員になったからといって関係は変わりませんし、プライベートでも仲良くしています。そういう人たちと働けるのは楽しいですし、ずっとこの店にいたいと思います。彼女たちが店や会社について話すときは、社員として聞くこともあります。「上の人に伝えておくね」と言ったり、自分でも考えてみたり。店がよくなって、私たちが働きやすくなり、お客様にも喜ばれることはやっていきたいです。

上司にも恵まれました。何でも相談に乗ってもらい、安心して働けます。こうした人間関係があり、柔軟な働き方を認めてもらえているので、働き続けられるのだと感じています。

――今後は、さらに正社員を目指すこともあるのでしょうか。

実は、「正社員にならないか」と誘われています。でも、一番下の子が小学校に入ったばかりなので、まだ早いかな。将来的には正社員もあるかもしれませんが、子育てが一段落し、気持ちに余裕ができたときに、あらためて考えたいと思っています。

店長兼スーパーバイザーの西口氏(左)と地域限定社員の神谷氏は、シフトを調整し合い、働きやすい職場環境実現のために力を合わせている

店長に聞く 地域限定社員のメリットとは

「地域限定社員は会社とパートナーのクッションにもなっています」

東海店店長 西口氏
2017年12月より「ステーキ宮 東海店」に配属。現在、スーパーバイザーとして3店舗を統括するとともに、東海店店長として奮闘する西口氏

地域限定社員制度ができて、私たち正社員の労働環境は劇的に変わりました。以前は、開店・閉店の作業は正社員がやらなければいけなかったので、社員が1人しかいない店では、オープンから閉店まで勤務せざるを得ないことがありました。現在は、地域限定社員が正社員の仕事を分担してくれるので、確実に労働時間の短縮につながりました。これは本当に大きいです。

現在、「ステーキ宮 東海店」には、正社員は私1人で、神谷さんともう1人の地域限定社員が働いています。私は東海店の店長であるとともに、スーパーバイザーとして同エリアの高浜店、阿あぐい久比店も担当しており、東海店に常駐することができません。神谷さんたちは私がいないときに、責任者として店を守ってくれています。彼女たちがいるからこそ、私は安心して他店を回ることができるのです。スーパーバイザーの役割を果たすことができるのは、地域限定社員がいるおかげと言っても過言ではありませんね。

もう1つ、地域限定社員の大きなメリットとして、シフトが組みやすくなったことがあります。神谷さんは「1日8時間実働」、もう1人の地域限定社員は「1日7時間実働」。2人は労働時間に差はありますが、決まった時間は必ず出勤します。時給で働くパートナーは働き方がまちまちなので、彼らだけでは必要な人員確保の見通しが立ちにくいのです。地域限定社員の安定した働きがあることで、シフトの調整が格段に楽になっています。

店の人員が安定すれば、サービスの向上につながります。事実、売上は上がっていますし、クレームもほとんどありません。この点でも、地域限定社員制度はとても有効です。

さらに、神谷さんはこの店で長く働き、赴任して日が浅い私よりスタッフと親しく、経験とコミュニケーション力があります。会社からの伝達事項など、私ではパートナーに伝えにくいことでも、神谷さんは自分の言葉で上手に伝えてくれます。会社とパートナーの間のクッションとなり、快適な職場作りに一役買ってくれているのです。

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