2018/08/28 特集

外食企業がカギを握る! 6次産業化への道(4ページ目)

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【CASE 2】
株式会社ビースマイルプロジェクトによる6次産業化の現場をリポート

1次
飼料から手がけ、約1万8,000頭の牛を肥育

カミチクグループは、九州内に約60カ所の直営・預託農場を所有し、約1万8,000頭の牛を飼っている。各農場や牧場では、九州の契約農家が作った飼料用イネや飼料用米などを密封貯蔵して発酵させた、自社生産の飼料を使用。「牛肉に口どけのいい脂がのるかどうかは、牛の血統とエサで決まるので、飼料からこだわって作りました。また、世界的な食糧不足から飼料の獲得競争も激しさを増しており、いつまでも輸入品に頼るのはリスクがあると考え、国産原料を使っています」(上村氏)。

さらに、自社で育てた優秀な種牛(雄牛)の精子を使って人工授精ができる「家畜人工授精所」を所有するなど、高い繁殖技術も同グループの強み。ほかにも、牛乳をとるための乳牛に、和牛の受精卵を移植して出産させることで、1頭の牛から牛乳と和牛を生産できる仕組み(「乳肉一貫体制」)を取り、生産効率の向上に努めている。

子牛への授乳は、初乳のみ母牛から直接授乳。それ以降は、スタッフが栄養価のバランスがとりやすい粉ミルクを与えている
直営の鹿児島・伊佐農場の牛舎では、約540頭の子牛を飼育。母牛も含めて全体で約1,800頭を保有している

2次
工場で肉の切り分けや加工品の製造も

農場から出荷された牛は、同グループが鹿児島の食肉センター内に所有している加工場へ。同センターには食肉処理施設もあり、牛をと畜した後、すぐに枝肉や部分肉、スライス肉などに切り分け、パック詰めまで行っている。加工場は、ISO22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)を取得しており、信頼性とトレーサビリティーの両面で万全の体制。肉が一貫して衛生区域外に出ることがないため、新鮮で衛生的な状態で処理・加工できるのも大きな強みとなっている。また、鹿児島市にある本社にも加工場を併設。ここでは、自社の牛肉などを活用したコロッケやハンバーグ、シチューなどを製造。「“揚げる”“焼く”“煮る”といった最後の調理工程以外は、加工場で行い、飲食店での作業負担を極限まで減らしたい」(上村氏)と考えている。

本社にある加工場でのコロッケの加工。衣をつけて、揚げる直前の状態にして冷凍で保存し、発送する
食肉のスライスには、プロのカット技術が光る。飲食店や小売店の要望にも柔軟に対応

3次
自社の牛を半頭買いし、価値を伝えて提供

自社ブランド牛「薩摩牛 4%の奇跡」を提供する焼肉店「薩摩 牛の蔵」。加工場から1店舗ごとに半頭単位で購入しており、部位ごとにカットされた塊肉が週2回の頻度で納品され、半頭分を2~3週間で使い切ることが多い。渋谷店では、仕入れた牛肉を入口の冷蔵ショーケースに並べており、アピール効果は抜群。メニューブックでも生産者の情報を紹介している。「生産から加工まで、自社の一貫体制で手がけた牛肉を、最高の状態でお客様に提供するのが飲食店の役目。私自身も鹿児島の農場に行ったことがあるので、自信を持ってお客様に説明できます」と、副店長・今井勇気氏は笑顔を見せる。

肉はサシがきれいに入り発色がよいため、見た目も美しい。一番人気の「牛の蔵盛」は、焼く前に写真を撮影する人も多い。そのほか、コロッケ、ユッケ、キムチなどのサイドメニューも自社の工場で加工したもの。来店客の声を生産者にフィードバックしたり、厨房での調理をスムーズにするために加工場と連携をとるなど、6次産業化による風通しのよさも存分に活かされている。

一番人気は、「薩摩牛 4%の奇跡」のロースなどを盛り合わせた「牛の蔵盛」(2,592円)
国産和牛を使った「厳選和牛コロッケ」(497円)は、ファミリーなどに大人気
薩摩 牛の蔵 渋谷店
東京都渋谷区宇田川町31-1 HULIC&New SHIBUYA5F
https://r.gnavi.co.jp/3agewy3v0000/東京・渋谷の繁華街のビル5階に2017年6月オープン。シックな空間で、30代を中心に接待や記念日の利用を獲得。平均客単価は7,000~7,500円。

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