2020/05/15 特集

資金調達して難局を乗り越える! 新型コロナウイルス感染症拡大に関する融資・助成金を受けるには(5ページ目)

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Credo社会保険労務士事務所 代表 浅井 純子 氏(特定社会保険労務士/キャリアコンサルタント)
大学卒業後、外資系製薬会社にてMR職に従事。在職中に社労士の資格を取得。いくつかの社労士事務所を経て、2019年8月にCredo社会保険労務士事務所を設立。人の悩み、労務トラブルから会社を守る土台作りや労務相談、助成金の活用を得意とする。

「雇用調整助成金」はアルバイトスタッフも助成の対象

 休業や営業時間短縮で、スタッフを休ませた場合の給与補償に悩む店舗も多いだろう。そんなときに使えるのが、厚生労働省の「雇用調整助成金」。政府は利用要件を緩和しており、利用を促している。

 「雇用調整助成金」は、業績の悪化によって従業員を休業させた事業主が従業員に「休業手当」を支給したとき、その一部を助成するものだ。社会保険労務士の浅井純子氏は、「新型コロナウイルスによる影響で、雇用状況が急速に悪化したため、政府が『特例措置』を拡大しています」と解説。その特例の1つが、これまで対象外だったアルバイトやパートなどの雇用保険未加入者も対象となる「緊急雇用安定助成金」を2020年4月より開始したこと。支給額の計算方法は異なるものの、「雇用調整助成金」と同等の助成が望めるので、パート・アルバイトが多い飲食店には朗報と言える。

 そのほか、主な特例措置や要件については、下記の通り。

「雇用調整助成金」の特例措置の主な内容。助成率をはじめ、利用要件を大きく広げている

 「生産指標」(売上や客数減少幅など)の緩和、教育訓練加算の増額、解雇などを行わない場合の助成率の引き上げなどが特例措置となっている。また、従来は休業開始前に「計画届」の提出が必要だったが、今回はすでに休業している事業所(飲食店)が多く、事後提出も可能になった。特に5月1日付の特例措置は、飲食業にとって歓迎すべき要件緩和が多く、制度利用への期待が高まる。ただし、浅井氏は「申請書類の省略などで申請のハードルは下がりましたが、助成金は融資と違って返済義務がないので、もともと審査が厳しい。審査の基準も緩和されたとの発表は今のところないので、申請すれば必ず受給できるとまでは言えません」と話す。

 審査が通りにくい理由の1つに、手続きに必要な書類の厳密さがある。もともと、支給開始までに「計画申請→交付決定→支給申請→支給決定」と、申請は「計画申請」と「支給申請」の2段階あり、申請時には雇用契約書、就業規則、生産性低下の証明、出勤簿や賃金台帳などの提出が求められる。小規模な飲食店では、雇用契約書や就業規則(10人以上の雇用で必要)を作っていないケースも少なくない。「手続きをする中で、本来、必要な手続きがされていなかったことが明らかになったり、申請に必要な書類とその内容が複雑であるため、不備を指摘されて支給決定が遅れたり、不支給になることもあります」と浅井氏。

 加えて、「要件緩和の1つとして申請フォーマットが自由になったため、逆に審査する側が理解するのに時間がかかることも予想される」と浅井氏は指摘する。特に、飲食店の複雑な勤務シフトは、審査をする側に伝わりにくい。「まずは、申請に必要な書類をそろえることが大前提ですが、審査に要する時間を最小限にすることが支給決定を早めることにつながりますので、シフト表や出勤簿には休業させた日に『休業』とわかるように記載すること、業界用語や略語を避け、誰が見てもわかりやすい書類を作ることもポイントです。もちろん、助成金に強い社会保険労務士に委託してもよいでしょう。社労士に支払った報酬の一部を助成する補助金を創設した市区町村もあります」(浅井氏)。なお、申請書類は5年間の保管が義務付けられており、受給後、立ち入り検査が行われるケースも。後になって申請した書類の内容に関する虚偽などが発覚した場合、ペナルティが課せられるので、気をつけたい。

 こうしてみると、雇用調整助成金は簡単に受給できるものではないように見えるが、浅井氏は「この機会に、スタッフと雇用契約を交わす、就業規則の整備するなどを行えば間に合いますし、会計書類も適切にして雇用環境を強固にすることは、むしろメリット」と語る。なぜなら、「助成金の基本は法令遵守。そのほかの助成金や補助金も主な事業所要件は似ているため、今回初めて助成金を申請する事業主も、今後、様々な助成金や補助金を活用しやすくなる」(浅井氏)からだ。

 スタッフをいま失えば、事態収束後に新たに募集をしたり、一からスタッフを育成することになる。であれば、雇用調整助成金でスタッフの雇用を守り、信頼関係や組織を強化できれば、今後につながるはず。チャレンジするメリットは小さくない。

 そのほか、小学校の休校に伴い、保護者である労働者に給与全額支給の特別休暇を取得させた場合に使える「小学校休業等対応助成金」もある。こちらは100%助成されるため、対象となるスタッフがいる場合は活用するとよいだろう。

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