2023/11/15 コラボ企画

闘う美人女将、赤尾佳子さん。「小料理よしこ」(東京・神田)

料理屋や旅館の女主人のことを女将(おかみ)と呼ぶ。元々は「じょしょう」と読み、その意味は女の将軍であったと言う。現代の女将たちも、芯の強さと意志の強さを持って、日々闘っている。お客様のために、従業員のために、自分のために、そしてより良い明日のために、闘い続けている女将の姿を取材。ご自身の誕生日に席数17の小さな店でなんと100万円を売り上げたという、神田「小料理よしこ」の女将、赤尾佳子さん。

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全てが「裏目」のスタート

幻になったキッチンカー

「最初は、キッチンカーでカレー屋さんをやろうと思っていたんです。スリランカカレーの専門店で1年、スパイス料理研究家の一条もんこ先生の下で1年、修業しました。糸井重里さんが『カレースター』と命名したカレーの研究家でありエヴァンジェリストでもある水野仁輔さんの『カレーの学校』にも通いました。和漢薬膳師の資格も取って、1.5トンの大きなトラックをキッチンカーに改装して、準備万端用意していたんです。そんな時に、私、普通の乗用車でブレーキとアクセルを踏み間違える事故を起こしちゃって、そんな私がこんなに大きなトラックを毎日運転するなんて、とても無理だ、危険だと怖くなってしまって、ここまで準備してもったいなかったのですが、やめることにしました」。

女将の赤尾佳子さん

大真面目に考えて、しっかりと準備したことがかえって裏目に出てしまった。こんな波乱万丈の失敗談を語ってくれたのは、神田の「小料理よしこ」の赤尾佳子さん。おばんざいと本格的なスパイスカレーという少しユニークな組み合わせが評判になり、連日満席が続く人気店の女将だ。

この店の特長は、一風変わったコースメニュー。メニューは基本的に3種類しかない。お客様は、スパイスカレー+1ドリンク2,750 円(税込、以下同)、おばんざいコース5,500円、おばんざい+飲み放題コース9,900円から選ぶことになる。しかも2時間という時間制限があり、それを超えると延長料金が発生する。人気店ならではの苦肉の策なのだが、結果的に回転率を上げることに繋がっている。

少しずついろいろ楽しめるおばんざいコース

おばんざいコースを頼むと、お客様の食べるスピードに合わせ、さまざまなおばんざいが次々と出てくる。少しずつたくさんのおいしい料理が食べられる。酒飲みにはたまらないシステムではないだろうか。おばんざいは17種類を用意しているので、同じものが出てくることはほぼない。そして最後の締めに絶品カレーが登場するというコース。この仕組みもよく考えられていると思う。普通の居酒屋では人気の高いメニューと低いメニューがどうしても出てくるので、食材の減り方、余り方にばらつきが出る。しかし、この方式なら、食材を無駄なく使いきることが可能になる。これから真似をする料理屋も増えるのではないだろうか。

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人気のスパイスカレー

赤尾さんは、銀座の高級店で接客業をした経験がある。アパレル関係の店で接客を担当していたこともある。いわば接客のプロ。きめの細かいていねいな接客も、「小料理よしこ」の人気を押し上げている。接待に使うお客様も多いと言う。その接待されたお客様が、赤尾さんの接客に感動し、今度はご自身の接待時に使ってくれることもあるそうだ。

「お客様には、笑顔で気持ちよく帰ってほしいですからね。だから清掃はもちろんしっかりやりますし、お皿の置き方や所作にも気を遣うようにしています。店内にお花などを飾るのも、お客様に季節を感じて欲しいから。お出迎えとお見送りもきちんとするようにしています。接待に選んでいただいたお客様に恥じないサービスを心がけています」。いわば究極のメニューと接客だ。人気店になる理由もよくわかる。

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闘う女将の真骨頂

このおばんざいとカレーという組み合わせが誕生したのは、偶然の産物だったと言う。きっかけは、赤尾さんのある構想が再び裏目に出てしまって窮地に追い込まれた事件。

キッチンカー事件の後、赤尾さんは神田で小料理屋をやろうと考える。最初はカレー屋さんを計画していたが、飲食店が多く、カレーの激戦区でもある神田で、本格的な飲食業の経験も料理の経験もほぼない自分が、果たしてやっていけるのかと不安になったと言う。

カウンターにおばんざいがずらりと並ぶ

「私は、接客には自信を持っていました。アパレルから始まって、ずっと接客業でしたから。ですから、料理と接客という2枚看板で戦える小料理屋という業態をしようと考えたのです。そんなとき、老舗の日本料理店で修業していたと言うある料理人と出会い、彼の料理と私の接客、そしてカレーで勝負しようと夢が膨らみ始めました。ところが、これが裏目に出ます。厨房の工事が遅れて、オープン3日前にようやく完成したのですが、その日、初めて彼が料理するところを見ました。しかし、なにか所作がおかしいんです。落としたお箸をそのまま使ったり、老舗の日本料理店で修業していたとは思えないような行動もありました。そこで少し調べてみたら、企業などを相手に詐欺を働く常習犯であることがわかったんです」と赤尾さん。

オープン3日前に、期待していた料理人がいなくなるという事態。すでに馴染みのお客様や知人にオープンを告知し、1カ月以上の予約が埋まっている状態だったので、今さらオープン日を伸ばすこともできない。まさに大ピンチ。そこで思いついたのがおばんざい。おばんざいは、京都の家庭料理のこと。懐石料理は無理だが、おばんざいならなんとかできるのでないかと考え、おばんざいコースが生まれた。いわば苦肉の策だったのだ。

スタッフの皆さんと

しかし、その苦肉の策が評判を呼ぶ。おばんざいが、お店に家庭的なやさしさとあたたかさをもたらした。仕事での緊張をほぐしてホッとする時間を過ごすことができる店になった。

「オープンして2カ月くらいは、本当に大変でした。カレーの仕込みをしておばんざいも用意するために、朝6時くらいにはお店に来るのですが、営業が終わってから、片付けて掃除を済ませると、もう明け方になっていたなんてことは、もうしょっちゅうで、眠る時間もありませんでした」。

しかも、災難はこれで終わらない。「お店の配管がきちんとしてなくて、カウンターの内側は水浸しという状態のまま、しばらく仕事していました。お客様には笑顔で接客していましたが、足元は大変なことになっていたわけです。しかも契約時の条件で、この工事は借主がしなくてはならないことになっていて、私が馬鹿だったと反省しつつ、勉強代だと思って工事代を捻出しました」。

これだけ災難が続くと、さすがに心が折れてしまうのではないかと思うが、これも「想定の内だった」と赤尾さんは笑顔で言ってのける。「だって、大変って、大きく変わるって書くんですよ。人生が変化する時には大変なことが起こるんです。それを乗り越えないと、変われないんですよ」。

闘う女将は、心構えから違っていた。超人気店「小料理よしこ」はこうして誕生した。

先日の赤尾さんの誕生日には、この席数17の小さな店で、なんと100万円を売り上げたという。赤尾さんの「大きな変化」という物語は、まだ終わっていない。

取材協力:「小料理よしこ」女将・赤尾佳子さん
東京都千代田区神田多町2-6-1 だいつねビル1階
03-6260-9037
https://r.gnavi.co.jp/cu4c5xna0000/

※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」93号より転載

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