更新日:2024.10.23
金沢伝統の味「細巻き寿司」作りを体験できるレストラン
JR金沢駅から徒歩約15分、金沢観光に欠かせない近江町市場のすぐそばに立つデザイナーズビル「かなざわはこまち」。ビル内には、センスの光る工芸品や物販店、飲食店が集まっており、観光客を中心に一年を通じてにぎわう商業施設である。
「COIL(コイル)」は2018年11月に、同ビルの2階にオープン。金沢で親しまれてきた伝統の味「細巻き寿司」を、客自らがテーブルで作る体験型が売りだ。
運営母体の株式会社SU-BEEはプロデュース業で実績を持ち、異なる2つの「モノ」を巧みに融合することを得意としている。そのノウハウを、飲食店の店舗「COIL」のプロデュースでも発揮。茶の湯や和菓子、アートが発展している金沢の地の利をフル活用した「伝統×モダン」がキーワードの食体験は、ターゲットに据えていた”欧米インバウンド”に加えて、”学生や20代の若者”の集客にも成功している。
石川県金沢市袋町1-1 かなざわはこまち2F
https://r.gnavi.co.jp/8t25vpj80000/
目次
・【POINT1】体験メニューを、万人受けするスタイルにプロデュース
・【POINT2】”金沢の伝統食×和モダン”のインパクト
・【POINT3】インバウンドと若い層の関心が一致
白が基調の店内にはテーブル席と畳の座敷席を設け、器は地元の九谷焼を使用。酢飯を敷き詰めて準備した細巻き寿司用の海苔を特注の岡持ち(おかもち)で運ぶなど、こだわった小物と演出に最も反応したのは国内の若者だった。「想定外でした。開店から半年ほど足踏み状態の店に勢いが出たのは、彼らのSNS投稿がきっかけです」と、PR兼マーケティング担当の宮本 侑佳 氏 は振り返る。
寿司のほか、急須を使った煎茶、玉露、金沢棒茶など8種の茶を自分でいれる飲み放題メニュー「利き茶スタンド」(単品880円、料理とセットの場合+670円)も来店の呼び水に。なかでも食事とお茶のセット「寿司ネタ6皿+天ぷらセット+ワンティー+ワンスープ」(2,780円)が一番の売れ筋商品だ。
急須が並ぶフォトジェニックな店内での食事は観光の目的になり、来店する約9割が観光客。現在はその半数がインバウンドである。客の大半は一見だが、約50席がすぐに満席になる日も。ニッチな業態も功を奏し、最高月商は1,300万円にのぼる。
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【POINT1】体験メニューを、万人受けするスタイルにプロデュース
メニューは細巻き寿司と天ぷらのセットが中心(寿司ネタ5皿1,980円、6皿2,180円、8皿2,580円)。寿司ネタの数やオプション「利き茶スタンドセット(+670円)」「酢飯追加(1枚+220円)」の有無などで、価格にバリエーションを持たせている。
寿司ネタは好きな具材を選ぶことができるため、同じ具材を2皿選んだりベジタリアン向きの具材だけをチョイスしたりなど、自由自在だ。ブリやタコ、アボカド、ローストビーフなど常時50種類で、ネタによって追加料金(50~100円)を設けることで、金沢名物のノドグロや「輪島ふぐ」など地元ならではの高級魚もラインアップ。最近「うなぎの白焼き」や「金時草の酢漬け」などの新メニューも加えた。
自作できる細巻き寿司は4本。酢飯を敷き詰めた海苔を、手元に1枚と岡持ちの中に3枚あらかじめセットして提供することで、「すぐにお客様が寿司作りに取りかかれるようにしています」と宮本氏は話す。誰もが自由に、自分の好きなネタで寿司を作る楽しさに没頭できるよう、工夫をこらしている。
おまかせメニューを希望される方には、店が厳選した寿司ネタ8皿をセットした「プレミアムディッシュ」を用意(2日前までに要予約)。のどぐろのスープ椀と、好きなお茶一杯、ほうじ茶アイス、天ぷら盛り合わせが付く。
【POINT2】”金沢の伝統食×和モダン”のインパクト
「COIL」は、寿司をギャラリーのような空間で提供するというギャップで強いインパクトを与え、細巻き寿司だけでなく、ひしゃくで湯を注ぐなど複数の実体験ができる楽しさで、満足度を高めた。写真を撮りたくなる箇所がそこかしこにあり、結果、客の自発的なSNS投稿につながっているという。
さらに、株式会社SU-BEEは「COIL」のオープン後に2つの飲食店ブランド「TILE」「barrier」も展開。歴史ある観光地であり、アートが発展している金沢の地の利をフル活用し、いずれも従来の飲食店とは一線を画す斬新さで他店との差別化に成功している。
高い満足度は、世界最大の旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー」が優れた施設に贈る「トラベラーズチョイスアワード2022」を受賞したことでも証明済み。将来的には、自社ブランドの3店舗で金沢の1~3位受賞を叶えたいという展望もある。
【POINT3】インバウンドと若い層の関心が一致
訪日外国人客獲得のために考案したメニューや仕かけが若い世代にも好評を博し、デートや女子会、記念日利用など、さまざまなシーンで利用される流れに。「若い人の中には、急須でお茶をいれた経験がない方も。彼らにとって伝統的な日本文化は、外国人と同じ視点で新鮮に映っているようです」(宮本氏)。
訪日外国人客に向けては、石川県や金沢市の自治体の協力も得ながら団体客を獲得している。さらに、近隣ホテルにパンフレットを設置いただくなど個人で来日した観光客へのアプローチも行っている。
寿司は海外でもすっかりポピュラーとなった日本食。今後の目標は、海外でのFC展開。料理だけにとどまらず、茶、酒、器も一緒にした金沢のカルチャーをまるごと世界に向けて発信できるような活動も視野に入れている。
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