厳選食材と確かな調理で、法事・慶事、インバウンドで予約獲得!
飲食店がしのぎを削る鎌倉に、土・日曜日・祝日の予約は2024年1月の段階で8月までほぼ埋まっており、1年後の予約を取る人もいるほどの繁盛店がある。創作和食料理の「鎌倉叶夢かむ」だ。
神奈川県鎌倉市十二所963-2
https://r.gnavi.co.jp/gmp8a6cu0000/
目次
・【POINT1】食材に妥協なし。魚は朝シメ、活けシメが基本。黒毛和牛は半頭買い
・【POINT2】器も料理の一部。料理が映える有田焼の器をそろえる
・【POINT3】「このクオリティーでこの価格」と感じさせるコストパフォーマンス
店は鎌倉の中心街から約3km離れた静かな住宅街にあり、恵まれた立地とはいえない。営業はランチタイム主体で、完全予約制の夜は予約が入った時のみ営業。このような環境にもかかわらず、 1日の最大客数350人、最大売上は230万円を記録している。
店主の西野泰治(やすはる)氏は、料理人として社会人のスタートを切ったが、一時は飲食業を離れ、一般企業で営業職を経験。持ち前のバイタリティーでトップセールスマンに上り詰め、破格の収入を得た。その収入で国内外の著名な飲食店を食べ歩く中で、料理、空間、サービス、金額の全てで満足できる店は意外に少ないことを知る。紆余曲折の末、自分が納得できる和食店を立ち上げることを決断した。
物件を探す中で見つけたのが現店舗だ。飲食店が短期で撤退する物件で、「外観も内装もきれいなのに薄暗い印象で負のオーラが漂っていましたが、数多くの名店を見てきた経験から、ここならいけると確信しました」という西野氏は、2億円を投じて全面改装に踏み切る。また、「食器も料理の一部」という考えのもと、有田焼に着目。既製品に加え特注品もオーダーし、1億円をつぎ込んだ。そして、料理は厳選した食材を使用し、見た目も意識して盛り付ける。
「私が目指したのは、食材、料理、空間、サービス、価格のすべてが調和したオンリーワンの飲食店。それを実現すれば、この立地でもお客様に来ていただける」と西野氏は話す。
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【POINT1】食材に妥協なし。魚は朝シメ、活けシメが基本。黒毛和牛は半頭買い
西野氏が食材で最もこだわるのが魚介類だ。豊洲の信頼できる仲買人から仕入れた魚介を、共同配送便で横浜中央卸売市場に届けてもらって引き取るほか、提携の漁師から朝どれの鮮魚を仕入れることも。また、店舗とは別の場所に生け簀(す)を設けている。そして、朝シメ、活けシメを基本に、鮮度が高い食材を提供する。取材当日も全国各地からの魚介のほか、生け簀から上げて西野氏が活けシメしたハマチやカンパチなど、鮮度の高い魚介が並んでいた。
また牛肉は、宮崎の黒毛和牛を半頭分で買い、マイナス60度のストッカーで保存。「こうすることで、シャトーブリアンなどの稀少部位もリーズナブルな価格で提供できます」(西野氏)。
【POINT2】器も料理の一部。料理が映える有田焼の器をそろえる
食器は、有田焼で統一。鎌倉は、女性や外国人の観光客も多いエリア。女性は食器を含めて料理を楽しみ、有田焼は海外でも知名度が高い。また、焼きがしっかりしていて割れにくく、飲食店には使い勝手が良いという理由からで、現地で特注した器もある。
【POINT3】「このクオリティーでこの価格」と感じさせるコストパフォーマンス
メニューは定食、そば、御膳、予約のコースや懐石料理など多彩だ。定食は仕入れの関係で日によりメニューが変わり、価格も仕入れ値に合わせて変動する。また、小鉢を選んだり、プラス料金でご飯を卵かけご飯にしたりするなどカスタマイズも可能だ。
一方、コース料理や懐石料理は、決めているメニュー以外は予算に合わせて作るため価格の変動はない。
ランチでは、多彩な料理が楽しめる「鎌倉御膳」と、新鮮なアジを使った「特選地あじづくし定食」が人気メニュー。店で打つ蕎麦も好評だ。
「価格だけを見ると高いと感じるかもしれませんが、このクオリティーならリーズナブルと感じる価格設定にしています」と西野氏は話す。
これを可能にしている要因の一つが、家族経営に徹していること。通常は西野氏、西野氏の夫人、娘の3人で対応し、客数が多い日は、西野氏の母、義母、もう一人の娘、息子がヘルプに入る。
家族経営に転じたのは、オープン6年を経た頃で、それまでは決して順風満帆という経営状況ではなかった。「従業員を雇用していると彼らの生活にかかわるので、私の都合で休みや営業時間を変えることが難しい。家族経営ならそれができ、急に休まれるリスクもない」という理由からだ。結果として人件費を抑えられ、その分を価格に反映できるようになった。
客層は、平日は女性が8割で遠方からの来店も多い。一方、土・日曜日・祝日は近くに霊園が複数あり、寺も多いことから、法事の需要が圧倒的だ。「法事は初七日、一周忌、三回忌、七回忌というサイクルがあり、継続してご利用くださります。墓の掃除にいらした際に立ち寄ってくださることもあります」(西野氏)。ちょうど家族経営に変えた2019年ごろから法事利用のリピーターが継続して来店するようになり、今では週末の予約は半年後まで埋まっており、1年後の予約を取って帰る人もいるという。
また、インバウンドのツアー客の団体利用も増えており、中国のほかウズベキスタンやタイからの客も多く、平日利用で客単価が高いため、売上に貢献している。
最後に、特筆したいのが予約キャンセルの規約だ。簡単にキャンセルできると考えてほしくないことから、予約時に確定予約としており、仮に予約が半年先でも1年先でもキャンセル料が発生する。しかし、「ただキャンセル料を払ってもらうのではなく、店の味を知ってもらいたい」という思いがあり、キャンセル料を払ってもらうかわりに、3,000円以上の仕出し弁当を予約人数分だけ購入してもらうことにしている(予約日に弁当を受け取りに来店できない場合は一律3,000円✕人数のキャンセル料、予約日3日前を過ぎると予約したコース全額のキャンセル料が発生)。このキャンセルポリシーを伝えた上で予約をしてもらうため、キャンセル率はかなり低く、また諸事情でキャンセルした人も仕出し弁当で店の味を楽しめるので、店と客がいい関係性を継続できる仕組みになっている。
西野氏は、時間があれば食べ歩きをして日々研鑽を積んでいる。今後も顧客ニーズやトレンドを意識しながら、さらなるクオリティーアップに努めていく考えだ。
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