2019/07/16 特集

人材が定着する“いい店”になるために 評価制度を見直そう(2ページ目)

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【STEP1】業務の棚卸し

役職ごとに「どんな仕事を、どう行うべきか」を明文化する

全員でミーティングを行い、すり合わせることが重要

 評価制度を作るとき、「まず取り組んでほしいのが、『業務の棚卸し』です」と三ツ井氏。店長、副店長、主任、一般社員など、役職(階級)ごとにどんな仕事があり、それをどのように行うのかを書き出していく作業だ。

 なぜ、この棚卸しが必要なのか。「例えば店長の場合、どんな仕事をどのように行えば店がよくなるのか、わからないまま店長に就いている人が少なくない」と三ツ井氏は言う。大事な仕事が抜けていたり、必要のない仕事をしていたりしても、気がつかない場合がある。「業務の棚卸し」とは、それぞれの立場の人がするべきことを洗い出し、スキルマップ(仕事の一覧表)としてまとめていく作業と言える。

 「最初は役職ごとに各10項目ぐらいでもいいのですが、重要なのは社員全員で意見を出し合い、あるべき姿を明文化すること」(三ツ井氏)。意見を出し合うことで、人によってバラバラだった「(その役職の)あるべき姿」がすり合わされる。すると、確信を持って業務を行うことができるようになる。これをベースに評価を行えば、評価への納得度や信頼感にもつながるのだ。

 また、ホールやキッチンなど営業カテゴリーごとの業務の棚卸しは、以下のように行う。ホールは下の囲みのように、入店(お出迎え)から退店(お見送り)までの接客ストーリーすべてを対象にする。例えば「お出迎え」なら「元気よく、いらっしゃいませと言える」とか、「満席時の対応が適切にできる」などがあるが、実際にまとめていくと、「(うちの店にとって)正しい状態」とは何か、議論になるはずだ。なぜなら元気のいい「いらっしゃいませ」と言われて、イメージする声の大きさや雰囲気は人によって違うからだ。

ホール業務の要件
●お出迎え
●ご案内
●おすすめトーク
●ドリンクオーダーテイク
●ドリンクメイク
●フードオーダーテイク
●フード&ドリンク提供
●中間サービス
●会計(再来店トーク&会員獲得)
●お見送り

 そこで、「うちの店にとっての“いいお出迎え”“元気な声”とは何かについて議論することになります。棚卸しで重要なのが、この過程なのです」と三ツ井氏。議論することで個人によるバラツキがすり合わされ、店にとっての「正解」が確定し、共有が進むからだ。「正解」が共有されると、それをクリアするという目標が生まれ、店のレベルアップにつながる。これをベースに評価を行うことで、納得度も高まる。

 三ツ井氏は「意見を出し合い、それぞれの立場のあるべき姿を作り上げることで、評価制度に魂が入る」と力説する。魂が入らなければ運用はうまくいかないし、継続もままならない。

 一方、キッチン業務の棚卸しについては、「サラダ場」「刺し場」「揚場」「洗い場」などのポジション別に行うことが多いが、メニューのカテゴリー別に行う方法もある。

 そのほか、マネジメントや基本事項についても棚卸しを行う。店舗マネジメントは役職によって内容が違うので、棚卸しも役職ごとに行うとよい。内容的には、アルバイトの採用・育成、日報業務、シフト管理、数値管理、会議資料の作成などがある。基本事項とは社会人としての素養。身だしなみや、時間を守ることなどの項目が多い。

 業務の棚卸しを行うと、今まで店長だけが担ってきた仕事や、アルバイトスタッフには任せられないと思っていた業務の中に、パートやアルバイトでもできること、任せられることが見つかることもある。冒頭でも紹介したように、働き方改革で社員の労働時間は短縮される傾向が顕著。店長も一般社員も今までの仕事量をこなし切れなくなっているのが現実だ。業務の棚卸しによって、店長や社員の仕事をパートやアルバイトに割り振ることができれば、長時間労働の解消にも貢献できる。これも、「業務の棚卸し」のメリットの1つと言えるだろう。

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