2019/07/16 特集

人材が定着する“いい店”になるために 評価制度を見直そう(7ページ目)

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【株式会社SFO】評価項目で追うべき課題を示し、社員のキャリアアップを促進

店長を評価する「店舗チェック表」。290点満点で、月2回マネージャーが臨店し、店長と一緒にチェックする。内容はQSCがベース。店長はこれを意識して店づくりを行う
株式会社SFO
所在地/大阪府大阪市北区芝田2-9-17 マエダビル4階
創業/2011年3月
資本金/1,000万円
経営店舗数/6店舗

QSCをベースにした具体的な項目でチェック

 2011年、大阪で起業した株式会社SFO代表取締役社長の平良翔太氏は、現在、宴会獲得を狙った大箱の居酒屋を中心に6店舗を運営。「お客さまの期待値を超えるサービスの提供」という理念と10カ条(下囲み)を掲げ、店づくりを進めている。そんななか、経営店舗が4店舗になった頃から、「成長を目指す組織として、足りないものがあると感じるようになった」と語る。その1つが評価制度。それまで社員の給与は平良氏の一存で決めていたが、この仕組みに限界を感じたという。

株式会社SFOの10カ条
➊お客様を一番に考える おもてなしの心。
❷若くても力があれば然るべきポジションを。
❸調和を大切にする。
❹自ら仕事を創出する。
❺できないことができた時の楽しさを味わおう。
❻未来を見据え常にアンテナを張る。
❼何に対しても、もっともっとの精神で!
❽良質なカルチャー、モラルあるチーム!
❾どんなときでもチームの成功を。
❿スケールメリットとスケールデメリットを 意識して常に変化していく。

 そこで、外部のコンサルタントに依頼し、まずは評価制度のベースを導入。「その後、評価項目などをマネージャーや店長と話しながらカスタマイズしました」と平良氏。現在の評価制度の基本になるのはQSCで、店長が評価項目を意識して仕事をすればQSCが上がり、その結果、売上も上がるような内容に作り込んだ。もちろん、給与とも連動した仕組みになっている。

 だが、評価制度を導入した当初、古くからの社員の一部はこれまでと違い、アバウトさを排除した新しい評価方法を窮屈に感じ、退職してしまった。それでも平良氏は「会社の発展のためには、絶対に転換が必要」と前に進むことを決断した。

 評価方法の中心は「店舗チェック表」だ。これは店長に対する評価の基になるもので、“あるべき店の姿”を徹底的に明文化。店内フロアやトイレはもちろん、厨房は食器洗浄機やコンロ、製氷機の清掃具合にまで至る。これらを「できている」「できていない」で判定し、満点なら290点。これを月2回、マネージャーが日時を事前に知らせたうえで臨店し、店長とともにチェックする。項目に落とし込んだ“あるべき姿”について、しっかり共通認識ができているので、「マネージャーと店長の評価が食い違うこともない」(平良氏)。

 この点数をもとに3カ月に1度、昇給・降給を決定。3カ月の平均得点を算出し、例えば達成率が95%(276点)以上なら、昇給額の100%を基本給に加え、次の3カ月の給与額が決まる。「何点取れば自分の給料がどのくらい増えるのか、わかりやすくしました。これを店長が追いかけるようになることがポイント」と平良氏。狙い通り、自然と店長たちのモチベーションと点数が上がり、それに伴って店舗の売上も上がっている。

 そのほか特徴的なのは、店舗の売上高をあえて評価に組み込んでいないこと。「売上は外的要因に左右されることもありますし、『店舗チェック表』でQSCを上げていけば、自然と売上も上がるはず、という考えからです。ただし、F(材料費)、L(人件費)や水道光熱費、覆面調査の結果などは店長に意識してほしいので、合格基準を設けています」と平良氏。店舗チェック表の点数が一定以上で、FLなどの数値が合格基準に達していれば、昇給以外にインセンティブを加えている。

 一方、店長以外の社員は「スキルアップ表」で評価する。QSCに基づく営業スキル項目の点検で、本人と店長が「できる・できない」でチェックし、こちらも昇給と連動する。両者の評価が一致するよう、「○秒以内に~できる」など具体的にしている点は「店舗チェック表」と同様だ。平良氏は、「大事なのは他者の評価。飲食店がお客様に評価されるのと同じように、“外からの評価”がすべてですから」と説明する。

一般社員が対象の「スキルアップ表」。チェック項目は約90。「着席後30秒以内にファーストオーダーの対応をしている」など、内容は具体的

 評価制度の構築から約2年。運用のポイントは、「全員が評価制度の項目を意識するようになること、そのために制度の意義を繰り返し伝えること」と平良氏。実際、月2回の社員ミーティングなどで、制度の浸透を図っている。今後はアルバイト用の評価制度も作成し、スキルの向上と時給を連動させる予定だ。「100人以上いるアルバイトがQSCを追いかけるようになれば、店のレベルアップにつながるはず」(平良氏)と期待を寄せる。

社員とのミーティングでは様々な議題について話し合うが、評価制度の意義を繰り返し伝え、意識の浸透と効果的な運用に努めている

 また、ホームページでは「今後2年間で200%の成長を目指す」という具体的なビジョンや、スタッフの声などを掲載。人材の採用と定着を意識し、入社後のキャリアをサポートする体制も紹介する。「様々なキャリアを描ける会社になるには、売上・店舗数を増やし、同時にマネージャーというポストも増やしていきたい」と平良氏。さらに、「能力と意欲のある人には、社内独立という選択肢も用意したい」と語る。

先輩スタッフが後輩をていねいに指導する社風に加え、研修制度など個人のキャリアアップを支えるサポート体制が整っている
ホームページには、「向こう2年間で200%の成長率」とビジョンを提示。また、採用面接では評価制度とともに会社の未来像をアピール

 現在、社員の定着率は高く、今後もこの方向性を貫く。「今は会社が成長するための過渡期。この変化を必ず成功に結びつけたい」と、平良氏は意気込む。

うたげ -UTAGE- 高槻店
大阪府高槻市城北町2-11-1 山木ビル4F
2014年、大阪・阪急高槻市駅至近にオープン。大小の個室とコストパフォーマンスの高さが売りで、肉寿司やローストビーフなどをリーズナブルに提供するとともに、お得な食べ飲み放題プランを用意している。
御膳 -Gozen- 梅田店
大阪府大阪市北区堂山町7-7 角庄ビル6F
2017年、大阪・梅田駅近くの繁華街の一画にオープン。2~130名までの様々な広さと多彩なデザインの個室を備える。また、最大6時間の食べ飲み放題が好評で、ビジネス層の宴会や女子会などの利用が多い。
代表取締役 平良 翔太 氏
1983年、大阪府生まれ。大学までプロ野球選手を目指すも断念。営業職で資金を作り、2011年、大阪・道頓堀に出店し、独立。現在、6店舗を展開する。

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