2019/07/16 特集

人材が定着する“いい店”になるために 評価制度を見直そう(3ページ目)

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【STEP2】評価項目を決める

定量と定性の2つの指標を基本の6項目に整理する

役職ごとに項目を作成。定性評価はシンプルに!

 業務の棚卸しに続いては、評価項目を決める。三ツ井氏は、「飲食店の評価項目には、大きく『定量評価』と『定性評価』があります」と解説する。

 定量評価とは、売上高、原価率、人件費率、営業利益額などの数値評価で、店舗ごとに毎月算出する。定性評価とは、理念/行動指針、個人スキル、Q(クオリティ)、S(サービス)、C(クレンリネス)などの非数値項目を指す。定量評価が店に紐づくのに対し、定性評価は個人に紐づいて評価する。

 ここで注意したいのが、「定性評価のボリュームを大きくしすぎないこと」(三ツ井氏)。売上高などの定量評価は、数的なデータで評価できるが、定性評価は人間が1つ1つ判断していくので手間と時間がかかり、項目が多すぎると面倒になり、運用が滞りがちになる。だからと言って、定量だけで個人評価をするのは難しい。そこで三ツ井氏は、飲食店が運用しやすく、店舗・個人の両方の評価が盛り込める評価項目として、①売上高、②原価率、③人件費率、④理念/行動指針、⑤個人スキル、⑥QSCの6項目を挙げる。

飲食店の評価制度で重要な6項目
❶売上高
❷原価率
❸人件費率
❹理念/行動指針
❺個人スキル
❻QSC

 では、①〜⑥の項目について、それぞれ具体的に見ていこう

 まず、①売上高、②原価率、③人件費率。この3つは、目標(予算)に対する店舗実績の達成率を算出する。売上高の場合、半期の目標が3000万円で実績が3300万円なら、実績÷目標で達成率は110%となる。売上高の目標は特別な事情がなければ、前年比103%程度が1つの目安。根拠もなく大きな目標を掲げると、ただのスローガンになってしまうので注意したい。原価率と人件費率も考え方は同じだが、実績の数値が小さい方が評価は高くなる(予算を抑えられた)ので、売上高とは数式が逆になる。つまり、原価率の予算が30%、実績28%の場合、予算÷実績で達成率は107%となる。

 「営業利益額」を評価項目に組み込む企業もあるが、三ツ井氏は「営業利益は予算化するのが難しいため、初期の定量項目は店長の3大管理項目である売上、原価、人件費に絞り込んだ方が運用しやすい」とアドバイスする。

 ④理念/行動指針は、理念を具体的な行動に落とし込み、できている=1点、できていない=0点などと点数化できるように作成する。

 ⑤の個人スキルは、STEP1の棚卸しで明文化した業務を、評価項目として整理する。ホール担当の社員の場合、前ページで決めたホール業務に、基本事項と店舗マネジメントの項目を加え、カテゴリーごとに細かく作成する。キッチンも同様だ。また、店舗マネジメントの項目は店長などの役職と一般社員とは内容が異なるので、それぞれの仕事を評価項目に入れていく。

 ⑥のQSCについては、「経営面はもちろん、評価項目としてもこれが一番重要」と三ツ井氏。QSCが低ければ来店客の満足度は低くなり、販促などを行っても不満足を拡大するだけで、逆効果だからだ。それを避けるため、「あるべき店の姿」を明確化したQSCのチェック項目を作成する。Qは、看板商品やオーダー率の高いメニューを中心に、ポーション、盛り付け、味、温度、提供スピードなどを項目に設定。Sは、入店してから退店するまでの接客サービスを。Cは、店内外の清掃・衛生状態について項目化する。

 一方、アルバイトの場合は売上高や人件費率に対する責任はないので、定量評価の項目を外し、理念/行動指針、個人スキルなどをベースにアレンジして作成する。そこに、シフトへの貢献度を追加してもいいだろう。

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