2019/07/16 特集

人材が定着する“いい店”になるために 評価制度を見直そう(6ページ目)

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【株式会社DADA】QSCを重視した制度を構築し、店とスタッフの成長を実感

等級(役職)ごとに業務の達成度を評価するシートや、店舗ごとに評価項目の達成数値を書き込むシートなど。一覧にすることで見やすく、活用しやすい
株式会社DADA
所在地/愛知県刈谷市桜町4丁目5番地シルクビル3F
創業/2005年3月
資本金/1,000万円
経営店舗数/直営5店舗、FC2店舗

専門家の支援を受けながら自社に合う評価制度を構築

 愛知県内で居酒屋業態などを展開する株式会社DADA。その経営理念は「HAPPY&SMILE」。代表取締役の和田裕作氏は「楽しい職場づくりには本気の姿勢が大切」と語り、行動指針(下囲み)にその想いを込めている。

株式会社DADAの行動指針
❶いつも心に経営理念
❷約束、期限を守り信用を築こう
❸全ての予定の5分前行動をしよう
❹いらないものを捨てよう
❺正しい位置に整えよう
❻きれいな状態を維持しよう
❼清潔感ある身だしなみにしよう
❽相手が聞こえる大きな声で挨拶をしよう
❾相手が聞こえる大きな声で返事をしよう
そして全ての項目以上に重要なのが継続すること

 この理念・行動指針を追求する一環として、和田氏が評価制度の導入を決めたのは創業から約10年後、5店舗に増え、社員数も2桁になった頃。「会社の規模と今後の成長を見据えた人材の採用・育成を考えると、組織の整備が不可欠でした」と振り返る。

 当初は、書籍などを参考に独学で評価制度を作成。だが、運用は予想以上に難しく、立ち消えになってしまった。「運用できなかった要因の1つは、内容が正しいのかどうか、確信が持てなかったこと」(和田氏)。理念は点数化が難しく、評価と昇給の連動の仕方についても頭を悩ませた。そこで、前述のスリーウエルマネジメント・三ツ井氏に相談。サポートを受け、あらためて評価制度構築に着手した。

 まず、店の仕事を洗い出し、評価項目を整理。約半年かけて制度を作り、運用を開始した。基本的な評価項目は①売上高、②原価率、③人件費率、④営業利益額、⑤QSC、⑥MS、⑦等級要件、⑧行動指針。①~⑥は「店舗項目」で店舗に対する評価、⑦⑧は「個人項目」で、スタッフ個々人への評価だ。このうち、①売上高、②原価率、③人件費率、④営業利益額は各目標(予算)に対する達成率(P6参照)を算出。QSCは月に1回点数化し、合わせて覆面調査も月1回、外部業者に委託して実施。⑦の等級要件では、ホールやキッチンの営業スキルのほか、マネジメントスキル、採用・教育活動などを評価する。⑧の行動指針は本人と上司がそれぞれ、「完璧にできている=2点」「ある程度できている=1点」「まだできていない=0点」でチェック。食い違う場合は話し合って確定する。

 「もっとも重視している項目はQSCです」と和田氏。自ら月に1回、事前告知をしたうえで全5店を訪れる。チェックするのは約60項目°Q(クオリティ)では、人気料理を中心に、味はもちろん、見た目や提供スピード、生ビールの泡もチェックする。また、点数とは別に写真とコメントを添えたシートを作成。良い点・悪い点の両方をフィードバックし、レベルアップを図る。S(サービス)、C(クレンリネス)も同様だが、厨房については営業時間前に臨店し、冷蔵庫内も点検。1店に1~2時間ほどかけて点検している。

 こうして8項目それぞれを毎月集計するとともに、半年に1度、平均数値を出してランク判定を行う。このとき、8項目の評価ウエイトは、一律ならば各12・5%だが、項目と役職によって配分を変えるところがポイントだ。

 例えば、重視しているQSCのウエイトは全社員が30%と、8項目の中でいちばん比重が重い。「経営者としては、営業利益額の比重を重くしたいところですが、QSCの点数が伸びれば、売上や利益も伸びるはずと考えました」と和田氏。一方、営業利益額は副店長以上が15%、一般社員・準社員は10%に設定。これは、営業利益への責任の度合いを反映した配分となっている。

 これらを集計し、「ランク判定基準」に則って、各人の人事評価をSS・A・B・C・Dの5段階で判定。ランクに応じて、賃金設定の範囲内で給与額を算出する。この結果を半年に1回、和田氏が社員と面談し、フィードバック。評価と給与の関係が明らかなことから、「面談後には働く姿勢に変化がある」(和田氏)という。必ず次の目標を決めて共有し、成長を促すことも忘れない。

評価ウエイトは、役職ごと、評価項目ごとに配分を変え、重視する項目の比重を重くする。また、ランク判定基準を決め、ランクによって給与額が変わる仕組み

 同時に重要なのが、店長会議だ。評価の基準を店長同士ですり合わせることで、判定の公平性が担保されるとともに、評価制度を通じて店ごとの弱点や課題が見えてくる。「求める基準(標準)が明確になるので、自店に何が必要か見えてくる」と和田氏。「課題に取り組むことで、店の最低レベルが底上げされている実感があります」。

店長会議や社員ミーティグを活発に行い、真剣に学び合う社風を育てる。「サークルではなく部活。 本気で勝ちにいくからこそ楽しいと思える職場づくりを目指しています」(和田氏)

 現在は、アルバイトにも評価制度を導入。個人スキルと行動指針を中心に約50項目で評価し、★(星)の数でランク付けする。★が増えると時給がアップする仕組みで、スキルとモチベーションアップに貢献。定着率も高く、社員のほとんどがアルバイトからの登用だという。また、社員の採用面接でも評価制度を開示しており、今後は、採用活動と教育カリキュラムとしても評価制度を活用することにしている。

アルバイトは個人スキルを中心に評価し、★1~6でランク分け。アプリで自分の似顔絵を作成し、★の数とともに名札に付けてアピールする

 新たな評価制度で「売上が上がり、店が明るくなった」と和田氏。QSCの評価と売上が比例することにも自信を深めている。9月には優秀なスタッフを表彰するイベント(アワード)を準備中。さらに、事業拡大を展望した「5カ年計画」も作成。社員がキャリアビジョンを描ける企業を目指す。

毎年3月、学生アルバイトの卒業を祝い、「DADA卒業式」を開催。そのほか、年末に向けた決起会、バーベキュー、フットサル大会など社内イベントで親睦を深めている
咲串 おかげ屋 名駅本店
愛知県名古屋市中村区名駅3-18-23
https://r.gnavi.co.jp/n615205/
名古屋駅東口から徒歩3分の立地に2011年3月オープン。古民家を改装した一軒家居酒屋で、串揚げとおでんを中心に、充実した一品料理で人気を集めている。シメにぴったりの「カレーうどん」も名物の1つ。
大衆炉端なめだるま
愛知県刈谷市相生町2-9 3F
2018年6月にオープンした炉端焼の店。刈谷駅から徒歩すぐの好立地で、目の前で焼き上げる「藁焼きかつおタタキ」や「野菜巻き串」などが看板。カウンター席は炉端焼ならではのライブ感が楽しめる。
代表取締役 和田 裕作 氏
1978年、愛知県生まれ。10代から8年間、料亭で和食の料理人として修業。2005年に寿司居酒屋をオープンし、独立。現在、愛知県内で店舗を展開中。

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