2023/08/17 特別企画

外国人の主張「日本人はまじめすぎる。もっと気楽に人生を楽しもう」~アメリカ南部料理店「ソウルフードハウス」~

異文化がおもしろい!世界各国の大使館があり国際色豊かな東京・麻布十番でアメリカ南部料理店を営む「ソウルフードハウス」デヴィッド&ラトーニャ夫妻が、食・音楽・人との関わりで心をフリーに楽しむ大切さを語る。

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みんなが元気になる店

 東京・麻布十番はおもしろい街だ。江戸時代から続く下町文化と流行の最先端が同居している。世界各国の大使館も多く、国際色豊かな街でもある。刺激的でありながら、どこかほっとする落ち着いた雰囲気がある。

 「ソウルフードハウス」は、そんな街のおもしろさを、そのまま店の中にも持ち込んでいる。初対面のアメリカ人、フランス人、メキシコ人、そして日本人が、古くからの友達のようにおしゃべりを楽しみ、笑い合う。異国の文化を知り、新しい発見がある。その中心には、デヴィッド&ラトーニャ夫妻とおいしいアメリカの南部料理。刺激的でありながら、どこかほっとするアットホームな雰囲気が漂う。

  • 家族で楽しめるテーブル席
  • 近くの客同士が仲良くなっていくシーンも多い

 妻・ラトーニャ氏は「お客さんはみんな家族」と言う。「リラックスして、みんな仲良くなって楽しんでほしい。このあたりは高級レストランが多くて、小さい子どもと一緒に入れる店は少ない。でもうちは大丈夫。家族みんなで楽しめる。しかもお客さん同士もすぐに友達になっちゃう。自分の実家で過ごすように、ゆったりと自由気ままに過ごしてほしい」と語るのは主人のデヴィッド氏。

 初めての客も、デヴィッド氏とラトーニャ氏の底抜けにフレンドリーな接客に、緊張していた気持ちはすぐほぐれ、自然に打ち解けていく。そして客同士も仲良くなっていく。笑顔が伝播していく。

 「コロナ禍の時は、日本にビジネスで来ている外国人は、なかなか自分の国に戻れなかった。そんなときにうちに来ると、家に帰ったように落ち着けると言ってくれるお客さんがたくさんいた。アメリカ人じゃないのに。これはうれしかったですね」とラトーニャ氏。「日本人のお客さんも、寂しくなったらうちに来るといい。きっと元気になりますよ。だってみんな家族なんだから」。

驚きの味がやみつきになる

 「日本に来て間もないころ、大好きな南部料理が食べられず、ホームシックにかかったことがありました。心配した母が1週間東京に来てくれて、日本の食材を使って南部料理を次から次へと作ってくれました。日本のスーパーにある食材が、アメリカ南部の味に変身していくのです。舌の記憶さえあれば、世界中のどの国にいてもその国の食材で思い出の味が再現できると言うことは、当時の私にとっては目からうろこでした」。

 アメリカ南部料理は、フライドチキンをはじめ日本でも食べられるものもあるが、その多くはジャパニーズスタイルにアレンジされていて、自分が食べたい南部料理とは少し違った。母親のおかげで、日本でも完璧な南部料理を作れると知ったことは、店をやろうという決意につながっていく。

 世界の料理を学べるニキズキッチンの講師でもあったラトーニャ氏。生徒たちから先生の料理を食べられるレストランをぜひ作ってほしいと言われていたことも背中を押した。夫であるデヴィッド氏も南部出身。一緒に店を始めることにした。

 南部料理はアメリカ料理の中でも少しユニークだ。日本人にとっては初体験になる味も多い。「ソウルフードハウス」の名物メニューでもあるチキン&ワッフルは、甘いワッフルの上にフライドチキンをのせ、そこにメープルシロップをかけて食べる。日本人には驚きの組み合わせだが、これが意外なほど合う。やみつきになる味なのだ。「初めて食べた日本人がおいしい、好きと言ってくれるのはとてもうれしい。なまずのフライも評判がいいですよ」とデヴィッド氏。

スタッフと会話がしやすい、キッチン前のカウンター席

人生は楽しむためにある

 「昔、お正月に新しい財布を買ったら、中に5円玉が入っていてびっくりしたことがあります。これからもご縁があるようにという思いがこもっていると聞いて、うれしく思いました。人と人のつながりを大切にする日本人の考え方は、とても好きです」とデヴィッド氏。「でもちょっとまじめすぎる。もっとラフに気楽に過ごせばいいのにと思うことも多いです」。

 「そうね、スケジュール通りにきっちり動きたがるでしょ。突然思い立って、いいワインが手に入ったから一緒に飲もう、これからそっち行っていい?と電話すると、アメリカ人なら予定になくても笑ってウェルカムって言ってくれるけど、日本人はそうならないことが結構ある。予定にない行動には戸惑ってしまうようで」とラトーニャ氏も同意する。

 「もっと心をフリーにしよう。遠慮する必要はないから」とデヴィッド氏。「まあ、これは日本人のいいところでもあるんだけど、もっとずうずうしく楽しんじゃえばいいのにと思う。うちの店は、メニューになくてもあの料理食べたいと言ってくれればできる限り作ります。この間は、肉が大好きな人とヴィーガンのカップルが来て、私たちが一緒に食事できて、しかも二人とも大満足できた店は初めてだと感激していました」。

 「ここはアメリカ料理の店だけど、アメリカをテーマにしているわけじゃないし、みんな自由。ライブやイベントをすることも多いですし、楽しんだもの勝ちです」と語るラトーニャ氏はゴスペルシンガーでもある。デヴィッド氏はドラムプレーヤーだ。

 アメリカ南部はジャズ発祥の地で、ロックスター、エルビス・プレスリーの出身地でもある。音楽もまた南部人のソウルには欠かせない。料理と音楽と、そしてそれらがつないだ客という家族たち。二人は、人生を楽しむことの達人だ。だから「ソウルフードハウス」は、幸せにあふれているのだ。

取材協力:「Soul Food House(ソウルフードハウス)」
https://soulfoodhouse.com/
東京都港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番ビル6F 
03-6722-6244

※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」86号より転載

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