記憶に残る「定番」
【静岡・浜松】居酒屋ダイニングてんくう 浜松モール街店
JR浜松駅から徒歩5分、中心市街地の一角に店舗を構える「居酒屋ダイニング てんくう 浜松モール街店」は、個室中心の落ち着いた空間と、インパクトのある創作料理で人気を集める居酒屋だ。
同店の人気を牽引する二枚看板が「てんくう大橋出し巻き玉子」(734円)と「鶏のから揚げフル振るシェイク」(842円)。「てんくう大橋出し巻き玉子」は、橋に見立てた陶器の皿に、出し巻き玉子を豪快に盛り付けたもので、「見た目のインパクトからお客様の9割がオーダーする一番人気のメニューです」と、同店を運営する有限会社こころの中部エリアマネージャー・藤田拓也氏は語る。また、玉子の中に混ぜる具材は、モッツァレラチーズなど4種類から選べる。
2番人気の「鶏のから揚げフル振るシェイク」は、特注した陶器の壺に鶏のから揚げを入れ、客の前で特製の甘辛ダレなどを加えてシェイクして提供する。壺を振るという演出が印象的で、「若いグループのお客様を中心に、とても喜んでいただいてます」と藤田氏は話す。
また、常連客から好評なメニューが「いか肝溶岩焼き 絶品リゾット付き」(842円)。保温性の高い溶岩皿を使い、グツグツと煮え立つ汁が食欲をそそる。味はイカの肝焼きに近く、日本酒などとの相性もよい。食べた後には、煮汁を使ってリゾットを提供。シメの一品として絶大な支持を得ている。
これらのメニュー開発について、代表取締役社長の渡邉一博氏は、「人間の五感でもっとも印象を残すのが視覚と言われています。そこで当店では、ビジュアルに訴求する商品開発にこだわりました」と話す。また、食材の仕入れから調理方法、提供時間までを分析して、工程の効率化にも努めているという。例えば、メニューの開発過程では、仕込みや直前の調理、最後の仕上げといった各工程の作業時間を割り出し、トータルで調理に何分かかるかを算出。独自に設定した基準時間をクリアした料理のみをメニューとして採用するなど、オペレーションの負担を考慮して商品化を進めている。
もちろん、料理の味にこだわるのは大前提。と同時に、来店客が感じる見た目のインパクトを追求し、数値管理による徹底した効率化も図ることで、無駄なコストを抑えつつ高い満足度を感じてもらえるメニューを実現している。こういった取り組みが、客の心をしっかりとつかんでいる要因と言えるだろう。
SPECIAL INTERVIEWIT業界での経験を活かして“外食の知的集団”を目指しています
私と副社長は、ともに理系出身でIT業界で長く勤めた後に、飲食業界に足を踏み入れました。最初の店は2007年に浜松市内でオープンしたお好み焼き店で、2009年2月には2店舗目として大箱の総合居酒屋「てんくう 浜松有楽街店」を開店。この「てんくう」が成功したことで、地方都市では総合居酒屋がビジネスになると感じ、同業態で出店を重ねてきました。今年8月には8号店となる「てんくう富士駅前店」をオープン予定で、直近4期連続で増収増益を続けています。
当社の店舗運営の特徴は、徹底した数値管理を実践している点にあります。前職で培ったITのノウハウを積極的に活かしたいと考え、飲食店経営の傍らでシステムを自社開発し、売上管理や人材育成などに活用。目指すは“外食の知的集団”です。
一方で、「てんくう」は浜松市でのドミナント戦略で店舗展開しています。浜松市は、政令指定都市で人口が多く、県民所得も高いですが、その割に市街地の地価が安い。そこに可能性を見出しました。また地方都市では、個室やおしゃれな空間が喜ばれ、料理も最新トレンドをどんどん取り入れるより、オーソドックスなものが好まれる。こうした特性から、総合居酒屋にチャンスがあると考えました。ただ、同業態での店舗展開はスケールメリットはありますが、陳腐化にもつながりやすいため、「てんくう」は30店舗を上限にして、別業態の店を展開予定です。
最近、強く意識しているのはインバウンド(訪日外国人)対策ですね。静岡県は、東京と大阪の中間点にあたり、利便性の高い静岡空港を利用する外国人観光客が、浜松市内で宿泊するケースも増えています。今後は、外国人が喜ぶご当地食材を使った料理などの開発を進めて、積極的にインバウンドを取り込んでいきたいと考えています。